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Z世代が聴く名盤 #9 AKB48「0と1の間 (Complete Singles)」

ここ数年で「Z世代」という単語をよく聞くようになった。「団塊世代」「氷河期世代」「ゆとり世代」等に続く新たな世代の区分である。
なんでも世間様はこの世代を「自分達とは全く違う感性を持った若者」と見ているようで、そんな歳の若者が起こした迷惑行為やトラブルを見つけては叩く報道や、そんな歳の若者を集めては「昔はこうだった」と昭和や平成の映像やらを持ち出して色々説明して反応を見てみる企画が最近増えてきており、「最近の若いのは何を考えているのやら」という空気をなんとな~く感じる事が多くなってきた。

そこまで我々の考えていることが気になるなら発信していこうじゃないか、ということでこのシリーズを始めることにした。当記事はZ世代にあたる筆者が世代よりも上のアーティストが出した名盤を聴いて、感想を書いていくただそれだけの記事である。

筆者は2003年生まれで、ニュースなどで取り沙汰される「Z世代」よりやや年上だが、WikipediaによればZ世代とは概ね1995~2010年生まれの若者を指すとのことなので、そのちょうど真ん中あたりに生まれた自分はバリバリZ世代を名乗れる。


作品情報

AKB48、3枚目のベストアルバム。ブレイク前にレーベルをDefSTAR Recordsからキングレコードに移したので権利上の都合なのかDefSTAR Records時代より前の音源は配信ではカットされている。

前置き

AKB48の全盛期はちょうど自分の小学生時代と重なっており(2010~15年)、もっと下の世代よりは知っている曲は多いはず…なのだが、正直それ以上に悪名高き握手券商法でCDの売り上げを水増ししてインターネットで袋叩きにあっていた印象の方が強く、音楽的なイメージは皆無に等しい。さっき世代よりも上のアーティストが出した名盤を聴くとか書いてたのにめちゃくちゃ直撃世代じゃねーかとか突っ込んではいけない

小さい頃からそういったバッシングをリアルに目の当たりにして育ってきたので当然イメージはよろしくなく、自分の場合はAKB48だけでなくアイドルそのものに抵抗を感じてしまうほどの嫌悪感が生じ、偏見の解消には途方もない時間を必要としたし、今でも治りきってはいない。

あれから8年ほど月日が流れ、YouTubeや家族友人後輩の勧めのままに色んなアーティストの音楽に触れるにつれてアイドルに対する抵抗も徐々に消えていってはいたが、アイドルを嫌うことになった元凶たるAKBの曲は結局の所ちゃんと聴いたことがなく、少し前に出したモー娘のベスト盤の感想の評判がそこそこ良かったこの機会に乗じて挑戦してみよう、と思った訳である。

AKB48はこれまで2枚のベスト盤を出していたが、どちらも本格的に売れる前のものであり、ブレイク後のベストは今のところこれが唯一。この時点までのシングルを並べたComplete Singles盤とオリコン1位を獲得したシングルを並べたNo.1 Singles盤とミリオンセールスを記録したシングルを並べたMillion Singles盤の3種類が発売されているが、一番曲数が少ないMillion Singles盤では代表曲の「ヘビーローテーション」などが抜け落ちてしまい、次に曲数が少ないNo.1 Singles盤でも1位を獲れなかった「会いたかった」が入っていない。よって、AKB48の代表曲を網羅したい場合はComplete Singles盤を聴くしかない。CD3枚分の大ボリュームだけど、こればっかりはしょうがない。これしかないのだから。

感想

まず今作で取り上げたいのはやはりAKBらしさが確立される前の手探り感があるDISC-1の収録曲群。元から知ってる曲は「会いたかった」しかなかったけど、その他も王道な桜ソングやイメージと真逆の社会派ソング、ある意味衝撃的な安っぽさの昭和歌謡に48というより46が歌いそうな曲…と方向性が見事にバラけていて予測がつかずに面白かった

DISC-2では4曲目に代表曲「ヘビーローテーション」が登場し、そこからは圧巻のヒットコレクションが展開する。やっぱりあれだけお茶の間へと浸透していっただけあって単純にメロディが強い曲が多く並んでいる印象。この曲達にも先人と同じように懐メロとして再評価される時が来るのだろうか…

DISC-3の時期にはピークを越してしまい、「恋するフォーチュンクッキー」の登場や、「鈴懸(中略)のようなもの」で「負けないで」を筆頭に1990年代のヒット曲を数多く手掛けた織田哲郎を起用する等のトピックはあるものの基本的に安定感が先行する曲が並ぶ。実際この頃はタイトルは見たことあるけど聞いた事はない…って曲がやたら多かったのを覚えている。

全盛期は「音楽がちゃんとしてない」とか散々叩かれてたけど、こうやって改めて聴き直すと曲の質は最低水準を満たしていると思う(好みかどうかは別にして)。何だかんだファン以外の耳に届く曲も多かったし、その分野で手は抜いてないんじゃないかなぁ、と。全体通してもあの頃にイメージしていたほどちゃちなクオリティの曲は「スカート、ひらり」くらいしかなかった

代表曲らしい代表曲はこの直後に出た朝ドラ主題歌の「365日の紙飛行機」を最後に途絶え、個人的にもその辺りを最後に彼女らの新曲を耳にすることはなくなってしまったが、果たしてこの状況を巻き返すことはできるのか…あまり期待はせずに待っておこう。

一番好きな曲:桜の花びらたち
一番「…」な曲:10年桜

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