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農業技術 ワインブドウ 根域制限高畝ポット栽培

イタリア品種のワイン葡萄、赤ネッビオーロ、バルベーラ、ピノネロ
白ガルガーネガ、コルテーゼ、マルヴァジア、シャルドネ
を今春植栽しました。

写真のようなユニークな植え方をしているのはおそらく世界中で私だけではないかと思います。今回はこのやり方となぜこのやり方を選択したのかについて説明したいと思います。

日本のワインブドウ栽培における問題点


ヨーロッパなどのワイン産池と日本を比べた時、最も大きな違いは雨量です。
ヨーロッパの年間降水量は800mm以下が多く、日本では1000mm以上あります。

この違いがブドウの生育にどういった影響をもたらすかというと、
・病気のリスク
・樹勢のコントロール
・裂果や果汁の濃度低下
大きくこの3点に関係します。

病気のリスク

ブドウはカビ系の病気に冒されやすいので、湿気が低いほど病気のリスクが減ります。ヨーロッパでワイン産業が歴史的に発展した理由としては、雨の少ない気候がブドウ栽培に適するということが挙げられます。一方日本は雨が多いので、雨対策、病気対策が必要です。ビニルの雨よけを設置するなど物理的に雨がブドウの房や、樹に当たらないようにする対策がとられています。その上で薬剤防除を徹底的に行うことが必須と考えられています。

樹勢のコントロール

ブドウは水分が多いと水分を根から吸収する(水分を吸うと同時に栄養素も吸収)ことで樹の生育が旺盛になります。日本は雨が多いので地表面に水分が多く存在します。そうすると根は水分がある方へ伸びるので地表面に多く存在することになります。一方で雨が少ない地域の場合、根は水を求めて地中深くに伸びていきます。地中深くには表土層にはない、岩石など鉱物のミネラル分が多く含まれており、それを吸うことによりブドウの味にも影響があると考えられています。

水分を多く吸って育った樹は生育が旺盛(強樹勢)になりますが、栄養成長と言われる自分の体を大きくする方向に動きます。一方で葡萄の収穫物は果実です。自分の子孫を残そうと果実を作ることを生殖成長と言います。この栄養成長と生殖成長は反比例の関係で、強樹勢の葡萄はあまり良い実をつけません。糖度が上がらなかったり、着色が悪かったりするわけです。なので良い葡萄を取りたければ樹勢を弱く生殖成長にバランスを取る必要があります。

裂果、果汁の濃度低下

果実ができたとしても、収穫期に雨が降ると、その水分を吸った結果、果粒に水分がたまり、果皮が破裂してしまうことがあります。そうするとそこからカビが生えたり、虫が寄ってきたりして、周囲の果実まで損害を被ります。また裂果を起こさなくても、果実の水分比率が多くなることで、糖度やエキス分が薄まってしまいます。薄い果汁でワインを作るともちろん香りや味わいも薄くなるわけです。

水分ストレスをかける 根域制限高畝栽培


日本の雨が多い気候に関しては自然のことなのでどうすることもできません。栽培管理でできることはできるだけ水を吸わせないことです。これを水分ストレスをかけると言います。

今回私が選択した植栽方法は主にこの水分ストレスをかけるために考えたやり方です。

根域制限と高畝の状態を円柱状の資材を使うことで成立させています。
ちなみにこの資材は防草シートを幅50cm、長さ100cmにカットし円柱にしていますので直径約30cm、高さ50cmの円柱が出来上がります。


直径30cmのオーガで地面に穴を掘るとちょうど良いサイズになります。
穴の深さは40cm程度。円柱の半分ちょいくらいを地中に入れ、円柱の中に土を詰めていきます。地表と同じくらいの高さまで土を詰めたらそこから苗を植えるイメージです。


根は円柱があるので横に伸びることができず下方向のみに伸びることができます。また地表より高い位置にあるため高畝状態になり、地表よりも乾燥状態に置かれることになります。こうすることで通常の植え方よりも強い水分ストレスをかけることが可能になります。

この栽培方法に期待することは他に
・黒い素材を使うことで地温の確保が可能になる
 このことにより根の発達や果実の成熟を早めることができる
・雑草の管理
 最低限円柱の中だけ雑草を取っていれば、苗が雑草に負けるという状況にはならない。
・害虫の物理的障壁
 地際から侵入してくる害虫が、円柱の段差のために苗に近づくリスクが減る

水分ストレスの他にこういった効果も期待していますが、実際どうなのかは今後の検証ということになります。

理論的にはかなりいい線いってると思うんですけどねー。



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