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『思い、思われ、ふり、ふられ』

ティーンムービーの最高傑作だと思いました。
咲坂美緒さん原作の映画の中で一番好きだし、三木孝浩監督作品の中でも『ソラニン』『僕は明日、昨日の君とデートする』を超えて一番好きになった。

よかったなと思ったところを、観終わった直後の興奮のままに羅列しておきます。


関係性の描写

由奈(福本莉子) → 理央(北村匠海) → 朱里(浜辺美波) → 和臣(赤楚衛二)
の”全員、片思い”の状態からスタート。基本的には、この関係性が変化していくさまを見守っていくことになります。

原作はコミック12巻で完結しており(僕は未読です)、最終巻のあらすじを見る限り映画のストーリーは全巻を網羅しているようですが、12巻分を詰め込んでいるのに、関係性の変化の描写に無理がないのは素晴らしい。展開が急とか、切り替えが早い!といった違和感がない。
終盤、まさかの5人目、6人目が登場して、それはさすがにノイズじゃないか?と思ったのですが、それぞれ爽やかに仕事して軽やかに去っていきました。

ストイックなストーリー展開

青春モノにありがちな、とにかくイベント盛り沢山の展開ではなく、大きいイベントは夏祭りと文化祭だけ。ほとんどが、何気ない日々で繰り広げられる4人の会話だけ。なのに、中だるみしない。すごいバランス感覚。

演技で説明できていることもモノローグで重ねるシーンが多くて気になったけど、丁寧ではあった。

大人すぎる浜辺美波

浜辺美波さんって2000年生まれの二十歳なんですね。
今作の役どころは、明らかに高校生離れした大人っぽい感性の持ち主。
仕草も表情も、社会人3年目ぐらいの感じで、もう『君の膵臓をたべたい』の天真爛漫なイメージをいい意味で裏切ってくれました。

大切な人になること

もちろん恋愛も大切な要素ですが、この作品の主題は、それぞれの人生の選択であるように思います。人生における選択を迫られる中で、誰かに肯定されるたり、誰かの性格や姿勢に憧れたりすることが、自分の生き方にポジティブに影響していく。そういう影響の与え合いの中で、他者の存在がかけがえのない大切なものになっていく。言葉で書くと陳腐だけど、そんな関係性の構築が、劇中で美しく描かれています。

人生

まずは言葉にして口に出すというこのシンプルな行動が一番難しい。それぞれの経験を抱えた4人が、お互いに背中を押し合っていくさまは、まさに人が人間として生きていくための営みのように思えます。そして、最後は1人で、それぞれに、自分の手で未来を掴み取っていく。選ぶ時は1人だけど、選ぶための勇気はみんなで出す。

今のティーンは、こんな青春をモデルにできるのか。いいな。

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