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三十にして、波長を知る。

最近ある人との婚活を通して、ようやく「波長」ということの意味を知った。周りと比べると相当、遅い。孔子の論語っぽく書いて遅いのを隠そうとしたが、すこぶるダサい。

ただ私だって当然、言葉の意味ぐらい知っている。むしろ、大学院の研究でレーザ計測をしていたので、波動光学については専門的立場だ。波とは、波長とは何なのか、孔子よりも断然詳しい。

波の定義は「干渉を起こすこと」である。干渉とは、強めあったり、打ち消し合ったりすることを意味する。元々は物理用語だが、現代では人間関係における相性の良さを表す表現として使用されている。

二人で好きなものを共有して、感動の始まり、ピーク、終わりの感覚が一致すると「〇〇君まじ運命過ぎる♡♡♡、だいしゅきーーー!」となる。これは波の固有振動数ωと同じ周期的な外乱fを加えることで、波が大きくなり続ける現象=「共振」と言う。カップルはこうして出来上がる。




彼は2つ歳上で、大学の友達が紹介してくれた。顔合わせは3人で飲みに行った。事前にも聞いていたが、彼のスペックは驚異的だった。

  1. ITベンチャー勤務

  2. 慶應出身

  3. 趣味は写真撮影。DMで依頼を受け全国を飛び回る。

  4. スポーツ観戦好き。相撲:家族が〇〇部屋の後援会員。野球:同じくなんか会員。

  5. 実家は23区の高級住宅街。三世帯住宅の3階建て一軒家。親戚が二世帯分、上の階にすんでいる。一階あたり5LDK。(どんな家だよ)

  6. イケメン高身長。見た目も若い。

  7. 上記を鼻にかけず、会話は至って普通。


何だこのレアポケモンは……
なぜ誰にも捕まってないのだ。マスターボールがあれば速攻投げるレベルだ。まじで玉の輿すぎる。タマタマ、いやナッシーか。

飲み会は大いに盛り上がり、3次会まで行った。解散間際にLINEを交換すると、帰りの電車で早速彼から連絡が来た。「せっかくなのでまた会いませんか」とのこと。社交辞令かなんて考え無くて良い、ストレートな文面。素敵だと感じた。


2回目はふたりで晩御飯。2時間ほど話し込んだ。とにかく彼は誠実だった。結婚願望があるということもきちんと言葉にしていて、将来は子供にいっぱい習い事をさせてあげたいのだと言っていた。「え、もう子作りですか?子作りな感じの話しちゃいます??もうほんと、はんぱない!!はんぱないのぉ!!!!」という最高のフィナーレで解散。


3回目は映画を見に行った。今回はお出かけしましょうということで半日デートをした。お昼に集まって映画見て、その後カフェで感想やら考察やらを語り合い、しゃれおつディナー。なんとまぁ理想的な展開で、傍から見たら「こりゃ完全カップルやん」であった。

その日の夜は彼が実家の用事があり、早めの解散となった。今日も楽しかったですね、と別れの言葉を交わした後、帰りの電車の中で前回同様に彼からLINEが来た。「さっき言い忘れましたがあの映画の原作が…」とまた何通かやり取りが続いた。



ただ、彼と会うのはそれが最後となった。




後日、紹介してくれた同級生や友達から「いやいや話の流れとしておかしいじゃん、二人ともヘタレかよ」と、散々に詰められた。

だけど、そうじゃない。その時はうまく説明できなかったが、私達は何かを察して、それ以降、連絡を取ることもなく自然消滅した。次会うのであれば、それは付き合うことを意味するというのを、お互いが理解していたからこそ、会うのをやめた。
 
相手が理想のスペックであると、言葉にせずともお互いが理解していた(彼は私の社会人経験を重んじてくれていた。良くも悪くも外見は評価対象外)。パッと見のステータスだけ見れば互いにかなりの好条件で、結婚したら一般家庭よりもだいぶ裕福になるのは間違いなかった。

じゃあ何がだめだったのか。
それは簡単だ、







話しててつまんなかった。






いや、お前、、そんなことでありえんやろって思う人に言いたい。「それ、私が思ってるから」と。


どうしようもなかった。あんな高スペックを手放すほど、つまらなかったのだから。見て見ぬ振りをしていたが、三回目で爆発した。どうしても彼との会話が今後成立するとは思えなくなってしまった。

夢に見たヴァージンロードは波にかき消さた。




さて、この話、私が残念な男性に会ったというわけではない。だって私の同級生は彼と話すのは楽しいと思っていたから。初対面の時も、その後の同級生の話からも、決して彼は全然話下手とか、自慢ばっかり言う人でもなく、冗談も言う砕けた人柄であり、周囲と良好な関係を築いていた。

ということは、そう、つまり、私が思っていることと同じく、彼も私との会話がなぜだかひどく盛り上がらないつまらないものだと思っていて、その点において私達の考えは完全に一致し、会うのをやめた。


波長なんて迷信だと思っていたけど、
確かに存在した。

なんで今この話題を出すのかな
え、そこ広げる?
まだ終わってないけど…
いやいや質問してよ


こんなことをずーっと考えないといけない状態。二人の波は完全に打ち消し合っていた。仕事柄、たくさんの人と話すことが多いので、対人関係(少なくとも人との会話を成立させる)において自信はあったのだが、これが波長というやつか…と面食らった。

人と会ってこんなに疲れたのはいつぶりだろうか…家路に着き、もうしばらく婚活は良いかな、とぼんやり考えながら眠りについた。




最後に。

波長とかいうもので結婚相手を選ぶというのは、かなり贅沢な考え方であるということを言っておきたい。

経済的、精神的に自立をしていて、相手に依存せずとも生きていける人間だからこその選択基準である。

中には、相手を年収で選ばざるを得ない方もいるだろう。それが不幸とか決めつけるわけではないが、少なくとも私達は結婚しないといけない絶対的な理由がないからこそ、こういうぼやっとした物差しで判断することに悩み、多大なエネルギーを消費している。


ほんとうは、そういう道草もいいじゃん、って思えればいいのだけど。私はどうやらそこまで「大人」じゃないみたいだ。




<次回>
気になるあの子の好みは波動解析で丸わかり!?
やってみよう!初めてのフーリエ変換!!!






嘘です。


おしまい



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