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水樹奈々は紛れもなく"伝説"だった。


8月6日、7日に開催された「NANA MIZUKI LIVE HOME 2022」さいたまスーパーアリーナ公演初日、2日目に参加してきた。

今夏のツアーは全国5ヶ所10公演を予定している。神戸、茨城、さいたま、仙台、そしてファイナルの名古屋という”旅程”だ。
すでに、神戸→茨城と2日ずつライブは開催されているので、さいたまでツアーは折り返しを迎えたことになる。

(それぞれの公演のふり返りは以下を参照のこと)

さて、本来であれば本テキストは上にあげたような「ツイートまとめ」の前書きとして執筆されたものである。しかし、前書きとしては少々長くなってしまったので、”シングルカット”したしだいだ。

もっといえば、本テキストは「前書き」としてはあまりに長く、そしてあまりにネガティブな内容を含むために、隔離せざるをえなかった。切り捨てられたと言い換えてもよい。

僕はさいたまスーパーアリーナで衝撃的な光景を目にした

ふだんならば余裕でさいたまスーパーアリーナを満席にする水樹奈々。
しかし、今回は2日とも400レベル・500レベル(めちゃくちゃ高い位置にあるスタンド席)の座席を封鎖したうえで、それでも200レベル、300レベルに空席が見られた。

そのことに大変な衝撃を受けた。
率直に、「ショックだった」と申し上げてよい。

そして、エンターテイメント業界を襲うコロナ禍からは、決して水樹奈々も無関係ではいられない──と、考えてみれば当然のことを、いまさらながら強く実感したわけだ。

なぜそこまで戸惑ってしまったのか。

──コロナだからしかたないんじゃね?
おっしゃるとおりである。

音楽業界は一部の国民的アーティストを除いて、ほぼ青息吐息と申し上げてよい。
以前は入手困難だったアーティストのライブチケットも、比較的手に入りやすくなっている。

だから水樹奈々もしかたないのだ。しかたがないのだ。
そんなことはもとよりわかっている

だから、この驚きと戸惑いには、僕のなかの「水樹奈々観」が深く関係している。

そのことを少しまわり道をしつつ、説明してみる。

僕は2010年春から水樹奈々のライブに通っている。高校2年生の初参加からもうかれこれ10年以上になるが、一部単発イベントを除いて、ほぼすべてのシリーズに1公演以上は参加している
オタク向けな書き方をすれば、「NANA MIZUKI LIVE~」シリーズにはすべて参加している。

私見ではあるが、コンテンツ「水樹奈々」最大の魅力は、無限にスケールを拡大していく”成長物語”にある。いや、「あった」というべきかもしれない。

そもそも、声優アーティスト・水樹奈々の物語は、最初は”オリコン圏外”からはじまった。

しかし、本人のたゆまぬ努力数々の運命的な出会いを通じて、いつの間にか水樹奈々は、武道館を、横浜アリーナを、さいたまアリーナを、西武ドーム(現:ベルーナドーム)を満杯にするに至った。そして、2009年にオリジナルアルバムで、2011年にCDシングルで、それぞれオリコン1位を獲得した。

そんな水樹奈々の物語は、

2009年の紅白歌合戦出場
2011年の東京ドーム2daysライブ
2016年の阪神甲子園球場でのライブ実現(水樹奈々は熱烈な阪神ファンである)

あたりで幾度かの頂点を迎えた。
当時の僕の感慨でいえば、

・「西武ドームでライブしたしもうここが頂点やろ」→東京ドーム
・「東京ドームでライブやったしもうここが頂点やろ」→阪神甲子園球場

という風に、「もうここが頂点」と思ったときに、かならず水樹奈々はさらなる頂きを見せてくれた。人間は望みさえすれば、どこまでも高く、高く──昇っていけるのだと教えてくれた。

その前後にも水樹奈々はQVCマリンフィールド(現:ZOZOマリンスタジアム)、横浜スタジアムなどさまざまなドームクラス、スタジアムクラスの会場を”攻略”していく。

当たりまえであるが、いずれも「声優アーティスト初」だ。誰もやったことがないことを彼女は成し遂げたのである。

ことほどさように、水樹奈々には「声優アーティスト初」という看板が似合う存在になっていった。どこかのスポーツ新聞が本人のインタビュー記事の見出しに「生ける伝説」とつけたが、それはまったくオーバーな表現ではない。ここはオタクの、いや信者の妄言として言い切らせていただく。そう。

水樹奈々は紛れもなく"伝説"だった
だった──。

そしてデビュー20周年となる2020年。
自身最大規模となる全国ツアー「LIVE RUNNER」のファイナル公演にて、キャリア初となるナゴヤドームでのライブが予定されていた。今後も「水樹奈々の物語」は、無限にエンドロールを延長させつつ突き進んでいくと信じていた。もっと頂上はあると教えてくれると確信していた。

しかしそこに、新型コロナウィルスが直撃した──。

「LIVE RUNNER」はあえなく全公演中止を余儀なくされ、ほぼ毎年のように全国ツアーを開催していた水樹奈々は2年半の”沈黙”を強いられた(そんななかで水樹奈々自身の結婚・出産が唯一、おめでたいできごとである)。

そして、2022年──
コロナウィルスの脅威はいまだに衰えないものの、ほかのアーティストたちのあとを追うように、チーム水樹はリスタートを果たした。

まずは、2022年1月に開催された「NANA MIZUKI LIVE RUNNER 2020 → 2022」。

水樹奈々はひさしぶりに生で元気な歌声を披露した。2日間行われたその両日に僕も居合わせたが、そのときの感慨は並々ならぬものだったことをよく覚えている。

そしてその際に、水樹奈々は夏の全国ツアー「LIVE HOME 2022」の開催を発表した(当時は名称未発表)。
水樹奈々といえばやはり夏の全国ツアーである。その意味でこう思った。

俺たちの水樹奈々が、俺たちの”夏”がやっと帰ってきた──

わくわくしているうちに、あっという間に季節は夏。
連日の猛暑とコロナ禍をくぐり抜けて、ついに僕たちはツアーの開幕日である7月16日を迎えた。大袈裟でなく、「無事にこの日を迎えた」と開演まえから泣きそうになった。

最後の全国ツアー「LIVE EXPRESS 2019」のファイナルより、気づけば1035日が経過していた。

以降は前述したようにツアーは神戸→茨城と推移していったが、先日のさいたまスーパーアリーナ公演で事件は起きた。

あの水樹奈々が──東京ドームだろうが横浜スタジアムだろうが甲子園だろうが”攻略”してきた水樹奈々が、さいたまスーパーアリーナを満席にできなかった

ふだんならば客席があるところに、デカいライトが置かれている光景を見たときの寂寥感たるや、筆舌に尽くしがたい。

ここまで読んできた読者諸兄にはおわかりだろう。僕にとってこれは、単純に「コロナ禍で客が戻ってきていない」以上のことを意味する。いわば、物語は”終焉”を迎えた。よく言っても”終焉”を迎えようとしている。少なくとも、このままでは”終焉”を迎えてしまう。

もちろん、キャリアを積んだアーティストの人気が落ち着いてくることは当然のことだ。ずっと人気を保ち続けて、あまつさえ集客を伸ばしつづけることなど不可能だ。そういう意味で、誰にとっても”終わり”は、くる。

それはキレイな言葉でいえば、「セカンドキャリアへの軟着陸」なんて言いかたもできるだろう。

しかし、僕にとっては──。
少なくとも、僕にとっては──。
僕が好きな水樹奈々は──。

無限に成長していく物語の”主体”であった。
この辺りが限界でしょ」と賢しらに笑ってみせる僕に、「まだまだこれからだよ!」と鮮烈な景色を見せてくれる人だった。そしてそこから見える絶景はなにより美しかった。ほかのどんな頂上の空気より清々しかった。

僕は彼女に手を引かれる形で、たくさんの、ほんとうにもうたくさんの「頂きからの景色」を眺めてきた。

そんな水樹奈々がこのままでは。
山を下りることを余儀なくされる

そんなのは嫌だ。絶対に嫌である。
これは純度100%の僕のワガママだ。

ポピュラーミュージックのフィールドで戦いつづける限り、新しい挑戦をするうえで、一定の「スケール」を持つことは必須である。
少なくとも、水樹奈々のような大会場をど派手な演出パフォーマンスでロックするスタイルでは、なおのことだ。

押しつけ」といえばそれまでだが、僕は水樹奈々にブルーノートやディナーショーで上質なステージをお届けする歌手ではなく、万を超える客を熱狂させる「POP MASTER」であってほしいのだ。


コロナ禍はいまだに終わりが見えない。
いますぐに、オタクみんなで声を出すかつての形式でライブすることは難しいだろう。

ならば今後も集客は厳しいのかもしれない。
2年半」という歳月がたくさんのオタクの”卒業”を促したのかもしれない。あるいは僕も、いつまでもネットの端で妄言を書き連ねている暇があったら、いますぐにでも”卒業”すべきなのかもしれない。

けど、僕はまだ水樹奈々を応援しつづけたい。
そして僕は信じている。確信もしている

水樹奈々がこんなところで終わるはずがない、と。
俺たちの水樹奈々がこんなところでへこたれるはずがない、と。

なぜなら水樹奈々は、「もうこんなところでしょ」と思ったときに──こちらが油断した瞬間に、まるで魔法のように新しい景色を見せてくれる人だからだ。

なにより僕は水樹奈々の「信者」だ。
信者とは「信じる人」と書く。

僕は信じる──
お前らはどうする?

(終わり)

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