![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/84799762/rectangle_large_type_2_3072c7b37545b82d58a2ebcc54b333bd.png?width=800)
言葉と音楽と、可惜夜
君は全てを体に入れてトイレで吐いた。吐いた。
食べ残すこと許せなかった。
物足りない、今日はまだ終わりじゃないと
夜は進んだ。
信じられないようなニュースが立て続けに起こる日々。
SNSの中でも、外でも。対立が起きて、分断が起きて。
私は沈黙することしかできなかった。
さまざまな意見に耳を傾けなければいけない。
目を逸らしてはいけない。知らなきゃいけない。
すべてを受け入れようとして、受け止められなくて、結局吐いてしまった。
正しい 正しくないと
決めたくないな
そう考える夜
自分の心を守ること
見ないふりをすること
しっかり目を逸らさずに向き合うこと
私ひとりの中でも、対立が起こる。分断が起こる。
すべてあいまいなまま、許されていたかった。
あと少しだけ 僕は眠らずに
部屋を暗い海だとして 泳いだ 泳いだ
あと少しだけ 僕は眠らずに
潜り込んだ布団の砂でほら 明日を見ないようにしていた
痛いのは まだまだ慣れていないからかな
僕は砂 深く 深く 埋もれてしまったんだ
与えられた分でやりくりする
“身の丈に合った生活”も板についたよ。
“嫉妬”は怖いからね。もう、あのときみたいになりたくないんだ。
“健康で文化的な最低限度の生活”とは。
自分で選んできたのに
選ばされたと思いたい
愚痴や弱音をこぼせば叩かれる
そんな風潮が怖くて萎縮する。
「選んだのは自分だ」
きっとそれは正しい。
その正しさにときどき、首をしめられて
それでも声をあげることはできなかった。
私が飲み込んだ言葉の数々を
表現する人たちに、声を上げる人たちに、憧れた。
私は、私の中の青い炎をどう守る。どう生かす。
「誰のせい」とか「どこで間違った」とか
決意が廃るぜ 選んだのは僕だ
次こそ選ぶんだ 僕が許せる僕を 今日を
もう一度 もう一度
押しつぶされる度つぶやいて
ようやくたどり着いたこの場所に
正しさなんていらないよ
マシュマロみたいなメンタルで、潰されても何度もむくりと起き上がり、「悩みとかなさそうだね」そんな顔で笑う。
日々、身近なところから削られていく。
そろそろ何かが溢れそう。
世界の90パーセントはスポンジケーキでできていてほしい
ミサイルも戦車もあいつが言い放った暴言もスポンジケーキ
ふわ ふわ ふわ ふわ
何も怖い事はないさ
ふわ ふわ ふわ ふわ
そんな世界がよかったな
現実は、ふわふわどころか不和不和で
せめて、ふわふわな毛糸を集めて一針一針、編みながら再生を祈った。天気予報を聞きながら。
折り重なる糸をみて、よみがえる記憶。
良くないことを考えそうになる夜、眠れない夜、眠らない夜、凍てつく夜、無心で手を動かしつづけた。
いつのまにか誰かを包めるくらい、大きな布になっていた。
でも見てよ 今の僕を
クズになった僕を
人を傷つけて また泣かせても
何も感じ取れなくてさ
何人もの、誰かが言っていた。
一緒にいるときの自分を好きでいられる人を大切にするべきだと。
一緒にいて自分が無価値に思えるような人とは縁を切るべきだと。
そんな人のために心身や時間を削らなくていいのだと。
そうだね。本当そうだよね。きっとそう。そうできたら、苦しむことはないのかもしれない。
君といると自分をどんどん嫌いになる。
自尊心がゴリゴリ削られて、自分の至らない部分を浮き彫りにされるから。
大切にできなくて、傷付けてばかり
期待になんて応えられなくて
尊敬されるような要素なんてなくて
どうしたらいいか分からない。
君といると自分に失望してしまう。
自分はなんてダメなんだろうと、消えたくなってしまう。
言葉選んで 挙げ句間違えた
僕が君を大切にできないのは、僕だけのせいでしょうか。この場合の「僕」は「私」で。
そうやって他人のせいにしたがるところも本当にいやだよ。
昔はそんなじゃなかったでしょう?
「あなたはそんな人じゃない」って、誰か言ってよ。
やっぱ言わないで。
なんでこうなってしまったのかな。
それでも、今の形になったのには何かしら意味があるんでしょう?それを知りたい。
つづける理由なんて、それで充分だった。
人を信じること 諦めちゃいけないよ
それが最後の絆 この世界との きっと
ときどき考える。どうして自分はこんなに子どもっぽいんだろう。
経験が少ないから?何の経験?
経験の前にそもそも感情が抜け落ちているみたいなんだけれど。
生まれつき?それとも?
最近は、「恋愛音痴です」なんておどけてよく言ってる。
普段は隠してる。「変なこと言い出したぞ」って、きっと思われてしまうから。
恋愛で人は成長するってたくさんの誰かが言っていた。
恋をしない人間は未熟で、半人前。
恋をすれば創作や表現にも深みが出るよって。
とするなら、それを知らない、それが分からない人間の生み出す表現はつまらないものなのでしょうか。
そんなこと、ないと思いたい。抗いたい。証明したいな。
でも、恋をしている人たちはなんだかいつも一生懸命で、キラキラしていて素敵だと思う。
それぞれの生き方で生きられたら、それがいちばんいいな。
あらゆる色に花束を
あいまいさを撫でる光
ほどけるリボンを手にとる
結びなおす?
こんな自分にも、「大切な人」はたくさんいる。
あなたがうれしいと、私も自分のことのようにうれしい。
あなたが苦しくて悲しいと、私も胸がしめつけられる。
あいつの痛みはあいつのもの
分けて貰う手段が解らない
だけど 力になりたがる
こいつの痛みも こいつのもの
あの子が泣いた。
こんなに胸が痛いのに、自分にはどうすることもできない。
ただ、もし手を伸ばしてくれたとしたら、全力で応えたい。
自分が「選ばれる」確率は、少ないかもしれないけれど。追い詰められているあなたには、見えてすらいないかもしれないけれど。
あなたを気にかけている人間はここにいる。私以外にも。ひとりじゃないよ。忘れないで。
私はあなたが想っている様な人ではないかもしれない
僕はあんまり出来た人間ではないから
君が嫌になってしまうのも しょうがないと思っているよ
人と深くつきあうこと
私もそんなに得意じゃなかった
でも あなたを見ていると
私と似ていて もどかしい
人との距離感はむずかしくて。
近付きすぎて傷つけたり、臆病になりすぎてすれ違ったり。
声をかけるべきなのか、そっと見守るべきなのか。その正解はいつも決まっていないから。
それでも、あなたが私を思ってその行動をとってくれたのなら、どんな選択であれ全部正解になってしまう。そういう人がいる。
自分も、誰かにとっての「そういう人」であれたらいいな。
好きなこと好きって言うの こんなに難しかったっけ
それならば僕は息を止めて潜るよ
君の胸の内の深さには 遠く遠く及ばないとしても
◯◯っていうバンドが好きでねっていう話をすると
「また新しいバンド」「ついていけない……」
毎回こんな感じなもんで、だんだん、話さなくなってしまった。
素晴らしい音楽がたくさん溢れているんだもの。出会えて、私は幸せだよ。これからも出会いたい。
ここでは好きを好きって言えるからうれしい。
夕焼け空 きれいだと思う心を どうか殺さないで
そんな心 馬鹿正直に 話すことを馬鹿にしないで
君も、君の好きなことに自信を持って。
誰の存在だって 世界では取るに足らないけど
誰かの世界は それがあって造られる
突然姿を消したあの人をときどき思い出す。
あの人や、あの人も思い出しているのかな。心のどこかで「おかえり」って言える日を待っているのかな。
自分だけ、失ったことにとらわれたまま。心にぽっかり穴があいたまま。
まわりは何事もなかったかのように進んでいくように見えるかもしれないけれど。
見えないだけ言わないだけで、寂しかったり虚しかったり悲しかったり誰かもしてるよねきっと。
またどこかで会えたとしても、もう会えないとしても。少しでもかかわり合えたことが嬉しかった。
本当のありがとうはありがとうじゃ足りないんだけれど。
生きる力を借りたから 生きてる内に返さなきゃ
先生、お元気ですか。
「誠意でしかない」
私がステージでBUMPの『花の名』を弾き語ったとき、先生はそう言って号泣していたそうですね。
「あの日の酒は美味かった」
当時まだお酒を飲めない年齢だった(今もあまり飲めないけれど)私にも、それがとんでもない褒め言葉であることは解りました。
あれから何年経っても、ふと思い出すのです。
過去の栄光にすがるのはみっともないと言うけれど。
あれは自分を着飾るための光じゃなく、「今」につながるもっとあたたかい光。すがるのではなく、守る光。与えてもらったように、いつか誰かに与えられるように。
与えてくれたその人に、直接は返せないかもしれないけれど、
僕がもらった愛を
あなたにあげるからさ
あなたも誰かを想って
与えて 与えて
そんなふうにどこかで循環していければいいと思う。
誰もがみんな幸せなら
歌なんて生まれないさ
だから世界よ もっと鮮やかな
悲しみに染まれ
声を聴かせて ヘッドフォンの中になんて救いはないよ
僕らは皆解ってた
自分のために歌われた唄など無い
リッケンバッカーが歌う
リッケンバッカーが響く
リッケンバッカーも泣く
おんがくも人をころす。
何を、誰を信じたらいいのかわからない
すべてが綺麗事に思えて、毒づいてみる。そんな日もある。
地球は綺麗事 君も僕も誰でも何でも
君の嫌いな ただのとても 綺麗な事
それでも、どうか君に世界を憎んでほしくない。
どうか君に、世界を諦めてほしくない。
身勝手な願いだとしても。君が大切な人だから。
何回だって言うよ 世界は美しいよ
君がそれを諦めないからだよ
言葉と音楽があふれて止まらない、明けるのが惜しい夜のこと。書き留める。
リッケンバッカーが歌う
リッケンバッカーが響く
リッケンバッカーも泣く
おんがくよ、人を生かせ
生かせ 生かせ
好きなことを好きって言って
欲しいものを欲しいと言って
行きたい場所へ行けて
したいことをして
誰の目を気にすることもなく。何にも怯えることなく。
少しずつ 諦めることばっかり上手になってた
我慢することが 人のためになると思ってた
記憶の隅に積み重ねた 無謀な夢と悔し涙
押し殺したホントの気持ちが むなぐらに掴みかかる
諦めることにも慣れてしまって、あまり感情が動かなくなったこともある。
それはそれで平穏なのだけれど。それで本当にいいのかな。
消えたりしなくて 灰になるなら いっそ書きとめて
深く沈める 冷たくなる
胸の奥の方 胸の奥の方
そしてやっぱり気付いてしまった。
本当は、私にもなりたい姿、やりたいこと、行きたい場所、ほしいもの、たくさんあったのだと。
今でもあるんだよ。胸の奥の方。
深く沈めた。でもまだあたたかい。
それをそっと抱き上げた。
今からでも遅くはないから
秘めてたもの曝け出してくれ
眩しいくらい光解き放て
普段なら素通りしてしまいそうな歌が胸に響いて、涙したりする夜がある。
あなたにはできぬと 言われていたことを
やって見せてくれよ 遠慮はいらない
他人に対しては、自分のために好きなもの買ったり行きたい場所に行ったりしていいんだよって思えるけど、自分に対しては「贅沢言ってごめんなさい」ってなってしまうの、この心理的なハードルを外せる日はくるのかなぁ。
何を恐れているの?
誰に遠慮しているの?
変わりたいのに、変わることが怖いのはなぜ。何にとらわれているの。
「変わっていくことは後ろめたいことじゃないよ」
あの日もらった言葉を反芻して、胸に火を灯す。
終わることなんか知らなかった
もう取り戻せないあの無邪気さ
ただ知らない君より 知った君が 持ち得る光原 新しい夜へ
生きていると、「知りたくなかった」と思う出来事に遭うことがある。
知ってしまったら、知らなかった頃にはもう戻れなくて。
それでも、知った自分だからこそ持ち得る光があることをあなたはもう知っている。だから大丈夫。
「そんなことして何になるの?」って君は言うけれど。
何にもならないかもしれないし、何かになるかもしれないし、どっちの可能性もあるから、だからつづけているよ。その方が楽しいから。その方が楽しみだから。
朝刊を配る新聞配達のエンジン音
始発の電車の出発音
いつもと変わらないけれど、少しだけ新しい光が差し込むカーテンの隙間。その向こうに広がる景色。
明けるのが惜しい夜が明ける。
【あとがき】
いくつもの、可惜夜(あたらよ)の詰め合わせみたいな文章。
いつもよりちょっとディープでダーク?な感じだけれど、たまにはこんな感じも。
文章を書くときはだいたい何かの曲が頭の中を流れているけれど、今回はさすがに多すぎるので最初と最後の2曲だけ。
他も、歌詞から気になった曲があればぜひYouTubeのMVやサブスク、CDなどで聴いてみてくださいね。
【追記】
このnoteをベースに生まれた物語『沈黙と花言葉』をmonogatary.comさん主催のモノコン2022、リーガルリリー賞に応募しました。
自分の「弱み」に挑んでみた作品です。
こちらで読めます(約5000字)よければ是非。
そしてこちらは、その制作裏話みたいなnote。
喪失も、怒りも、悲しみも、やるせなさも、ありがとうも、ごめんなさいも、信じてるも、どうか無事で も、言えなかった言葉も、「君」がくれた温もりも……
ぜんぶ抱えながら生きていくための物語。の、舞台裏。
よければ。併せて読んでいただけると嬉しいです。
【追記2】
その(2)ができました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?