母のりんごとお弁当

母は褒め上手だ。
よく私が描いた絵を褒めてくれた。優しい子だと言ってくれた。私が作った料理やお菓子をおいしいと食べてくれた。

そんな母は私が高3のときに家を出て行ってしまった。経済力のある父に私と弟を託して。

離婚後も、たまにお惣菜やりんごを持って母はうちを訪ねた。なぜりんご?と不思議だったけれど、「林檎が赤くなると医者が青くなる」と言われるように、私たちの健康を祈っていたのかもしれない。
以来、りんごが大好きになった。

私が大分を旅立つ朝、母が駆けつけてお弁当を持たせてくれた。道中、箱を開けた私は思わず喉鼓を鳴らす。私が好きなものばかり詰めたお弁当だったのだ。
うれしくて、美味しくて、後日そのお弁当を絵に描いて送ると母はとてもよろこんだ。
母のことだから、きっと今でもその絵を大事にとってあるのだろう。

いつかまた大分に帰ったら、母の手料理を食べたいな。その日まで、元気でいてね。

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