「社長が求めるものと顧客の声」ショートショート

「顧客が求めるものを提供するのがビジネスの基本だ!」

そう社長が号令を出し、会社は体温計やら消毒液やらを売り出した。
いままでも雑貨を扱ってはいたが、こういったものは仕入れからなにから初めてで苦労した。

感染症対策のため、一時的な特需に沸いた。
「よし、よくやった!」

しかし、流通が落ち着いていくと売上も低迷した。
どこもかしこも同じようなものを売り出したから、差別化も難しい。

「顧客が求めているものを提供するんだ! 付加価値をつけるんだ!」

そうはいってもウチには技術力がない。

そういっても社長は納得しない。
「技術力じゃない! こういうのは創意工夫なんだよ。特別なことをやるんじゃなく、顧客が価値を感じるものを提供するんだ!」

そういわれて社員は頭をこねくり廻して、顧客の声を聞いてみた。

「体温計はね。けっこう温度がかわってしまうんだよ」
「既定の体温を超えていた時の対応が面倒なんだ」

「消毒液は毎回つけると手があれてしまう」
「補充がめんどくさいんだよなぁ」

「なるほど・・・」
そういった声を今ある商品に反映させてったところ、再びバカ売れし始めた。

「やったじゃないか! 顧客が求めるものを提供することが商売の原点なんだよ!」

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お客様の声から生まれた 人気商品!!!!!!!!!

【平熱しか表示されない体温計!!!』
商品説明
「平熱とされる36.0-36.5度の数字がランダムで表示されます。
 ※デフォルト値ですので、お客様ご自身で設定温度変えることも可能です」

【手のあれない消毒液風スプレー】
商品説明
「消毒液風のスプレーです。中身はH2O(水)となっており、アルコールは含まれておりません。
 そのため、手が荒れにくくなっております」

【使っても減らない消毒液】
「ポンプ式風になっておりますが、ポンプを押しても中身が出ることはありません。
 そのため、内容量が減らず、いつまでも設置しておいていただけます」

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遠くからサイレンの音が聞こえてきて----会社の前で止まった。




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