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2021年は「お金、夢、時間」を意識する。(書評)

 皆さんにとって2020年はどんな年だったでしょうか?疫病の蔓延という未曾有の事態に仕事も生活も狂わされ、波乱に満ちた一年だったことは言うまでもありません。マスクの常時装備、混雑を避けて時差出勤、会社や店舗に入る前に検温、画面越しで開く飲み会、初めはどこか対岸の事のように思えていた対応が、いつの間にかニューノーマルな生活として日々のルーティーンに溶け込んでしまっていますね。「こんな生活いつまで続くの?」と嘆く間にも日々状況は変わり、気がつけば2021年。年明け早々、都市部を中心に緊急事態宣言が再び出されましたが、季節だけは通常運転で、自粛を知らない寒波が日々容赦なく身体に堪えます。

昨年末に読んだ書籍に感化された

 さて、表題は私が2021年に掲げたテーマです。昨年末何気なく買った古本から感化されこの考えに行きつきました。私の生活の価値観をひっくり返すような書籍でした。それが「松浦弥太郎の新しいお金術」です。 

あらすじ

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 著者は題のとおり、カウブックス代表者であり言わずと知れた文筆家の松浦弥太郎です。情報社会で流行り廃りが目まぐるしいこの世の中において、あえて立ち止まって目の前のモノコトの価値を見出そうとする「ていねいなくらし」の提唱者です。著書では、そんな彼が長年付き合ってきた「お金持ち」と呼ばれるような高所得者の友人たちを通して、お金はどんな人に集まり、どんな使われ方をしているのかを独自の観点から考察しています。そこから得たお金術を無理なく日常生活で実践し、健康的なお金の運用を目指そうという内容です。投資信託やiDeCoなど具体性のある資産運用法は出てきません。30代を目前に資産運用についてそろそろ考えたい、でも難しい金融用語や財テクは御免だ!私のような地頭が固めの方にお薦めです。

ヤタロウ流お金術_まずはお金さんとの友情から

 本著には独自のお金術がたくさん出てきます。預金口座を気の流れが良い地域に代える、現金管理する、お金は血液同様留めず流す、お金が喜ぶ使い方をする、お金を私物化しない____ヤタロウ流お金術はどれもキャッシュレス時代とは逆行していますが、「ていねい」という普遍的な哲学がありながらもどこか斬新な感覚を与えてくれます。渡米経験があり、理想の生き方を追求する実業家、松浦さんに対してそんなイメージを持っていたし、SNSを見る度「育ちがよさそう」だとか「事業が成功して高い服やモノに投資できる羽振りの良いひと」という一方的な偏見を持っていました。今なら言えます、本当にすみません!(ちなみに2012年発売)

 生粋の財テク本ならあらすじの時点で10年後20年後のあなたの資産は今のままじゃこんなに少ないんですよ?老後は?このままでいいんですか?といった文章に不安を煽られるのがお決まりです。それに対し本著で冒頭に掲げられているのはお金との友情が築けているか?です。

 著者曰く、「お金は人と同様、魅力的な人のところに集まってくる」のだそう。例えば職場でいうと、知識が豊富で好奇心があり、その人のもとに行けば何か楽しい事や学べることがあると期待できるような人。そんな人の周りには胸躍るようなワクワクする提案や計画が持ち上がり、やがて自然と仕事=お金に繋がるとのことです。

 「お金さんと友達になる。」意外にも腑抜けしそうなくらい簡単じゃないですか?しかしご自身に問うてみてください!そもそも「自分はお金に好かれているのか」と。指標が無いのでわかりにくいですが、自分が魅力的な人間(=お金が集まる場所)かどうか問われるとどうでしょう?私の場合、ハッキリそうではないといえます。普段から一匹狼、大勢で行動するより一人でカフェ巡りをしたり旅行したりするほうが好き。会社でも一人で仕事をコツコツするのが好きだし、会社と家の往来以外で繋がっているコミュニティが無い。ここ三年間で会社の付き合い以外で団体行動した記憶が一切ない。財布を開けば不要なレシートが出るわ出るわ___問い質されれば恥じ入ってしまうような事実ばかり…。

 ページを読み進めていくと、振り返れば自分の人生は独りよがりな喜びだけに包まれていたのかと痛感してしまうのです。決して嫌だったわけでは無いのでしょう。でなければこんなアラサーになるまでおひとり様暮らしを謳歌しているはずがありません。そしてそもそもお金持ちになりたいという願望もありません。

自分だけの幸せは身勝手

 ヤタロウ流お金術には「お金を私物化しない」という理論があります。それは、お金の私物化は社会経済や向上心を停滞させ、結果的に自分たちへの利益の流れを滞おらせる、というものです。私物化を防ぐ方法として、身近なものでは納税が挙げられますが、著者が知る高所得者たちは勉学や経験への投資も怠りません。語学学校に通ったり新しい事業を立ち上げたりと好奇心に勤しんでいます。結果としてそれが仕事に繋がり自分の財産に還元されるのです。彼らにとって、金銭の私物化は新たな挑戦への妨げなのです。

 この概念は目から鱗でした。「お金は貯めるもの」というのが世の定説だし、単身一人暮らしの私にはなかなか落とし込みにくいアイデアではあります。しかし、私の様な財布の口がきつい人間に向けて、著者はあえて夢をできるだけたくさん描くことを提案しています。そしてこの言葉が胸に突き刺さりました。

「だから貧乏なんだよ」

 これは、著者が夢を抱けない人、夢を抱く心の余裕がない人に向けた言葉です。自分が何をすれば楽しいかわからない人に人を喜ばせることなどできない。金銭以前に心の乏しさの問題を指摘した辛辣な言葉です。私も、やりたいことを羅列してみようと読破後に白紙の紙を用意しましたが、一つも書けませんでした。喉元までやりたいことが出てきているのに「いつでもそんなことできる」「それはお金がかかる、勿体ない」と躊躇ってばかり。やっと書けた資格の取得という目標には「三年前から同じこと言ってるけど今年も無理でしょ」の心の声。 

 ああ、つまりこのことかと思いました。つまり、このままでは私のような夢の無い独身社会人は心貧乏さん(私の勝手な造語)のままなのです!自分の為だけの「時間とお金」というサイクルの生活。悪くはありません。親は結婚しなくてもいいって言ってくれているし、独身で金銭に余裕があるし。自動的に口座の残高は上がります。ずっと一人なので自分も誰も傷つきません。ピースフルです。しかし、この生活に何が生まれるでしょうか?新しい趣味も出会いも刺激もありません。

 勿論独身という事が問題ではありません。問題なのは独りよがりということ。自分以外の他者や社会で起きていることに干渉せずある程度以上の貯金を社会に流さず自分だけの幸せを追求する人生は危険なのです。

独りよがりな人生からの脱却

 この書籍をよんで私が学んだことは「夢」「お金」「時間」のバランスの大切さです。やりたいことがあってもお金と時間が無ければ実行できないし、お金に余裕があっても心と時間のゆとりが無ければ「お金さん」もただの紙きれになってしまいます。

 もちろん家庭を持てば養わなければならない家族が増えます。自分の時間とお金を家族に使う分、このバランスも人それぞれ変わります。大事なのはどんな規模であれ「夢」「お金」「時間」のキレイな三角形を描けているかということではないでしょうか?独り身でも既婚者でもこの3つを犠牲にしないこと、言い訳しない、胸を張って自分の生きたい人生をおくられる様に。

 最終的な結論!コロナ禍で生活様式が変わってしまった今、「松浦弥太郎の新しいお金術」を読んで、お金の価値観を見つめ直してみる価値がありそうです。お金持ちになりたい人も、そうでない人も私のように何かに気づけるかもしれません。もし良い感触を得られたら、自分の「夢」「お金」「時間」のバランスを見つめ直してみてはいかがでしょうか?


写真は草を食む牛さん。一人旅行にて←