短編小説📕 母親の愛を感じた時、この先も生きようと思った

私はどちらかと言えば注意されたら、きちんと言い返す方だった。

ただ、20代を生きてる途中で面倒になってしまった。言い返して良かった事は過去に無い。
理不尽だと思う事も何も言い返さずにいた。
口論になる時間を他の事に費やしたかった。

母親とは女友達みたいに過ごしている。
“素直で可愛いお母さん”とても良い関係だと思っているし、喧嘩もして仲直りもする事が出来る。そんな母親の役に立ちたくて、私は1人で台所に立ち、何でもいいから何か一品でもメインと言えるモノを作れる様になりたかった。

アプリを見ながら、簡単で短時間で作れる物にチャレンジしようとしたんだ。

でも包丁を持った時、感じた事の無い恐怖心に襲われた。
直ぐに洗って見えない場所に片付けた。
次の日も、その次の日も台所に立ち同じ事を繰り返した。

病気になりたての頃、自分を殺めようとし母を泣かせてしまった事がフラッシュバックした。
「代わってあげたい」とも言っていた。

もう大丈夫だと思っていた。
あの頃より薬も徐々に減って暮らして居るのだから…と。

なのに、どうして？…忘れかけていた出来事を鮮明に思い出してしまった。
私は久しぶりにボロボロ泣いた…。

その時の気持ちや行動を、主治医で私の病気の1番の理解者。先生に苦しい事を伝えた。
「どうやら※PTSDがあるみたいだね」と言われた。

私は説明されて腑に落ちた。本当に怖い気持ちが大きかった。傷付けられる道具を目の前にすると、緊張で手が震えて動悸が止まらなくなっていた。
上手く行動できない自分に腹が立って。
そこから〈こんな事も出来ない〉そう思ったら、もう全てが嫌になって。
このまま死んでしまおうかと思うくらいだった。

「今日はご飯と洗い物は私がするよ」と。
そう言いたくて。
なのに新しく薬が増えてしまった。
悔しくて…情けなくて。

私なりに母の負担を軽くしたいと思った行動だったのに。
もう、自分がおかしくなりそうで。

それからも
「乗り越える！」と頑張ってみたけど…
無理だった。

視界がおかしくなる。立ちくらみもする。
そんな症状が表れると怪我をしそうで。
心底情けなかった。

母が病気を知った時に
「急がないで良いんだよ。とにかく居てくれれば、それでいいの。本当に居ててくれればそれで良いんだからね。」

と言った。

私は沢山泣いてしまった。何も出来ない自分を、そのまま受け入れてくれた。

私のお母さんが、今抱きしめてくれているお母さんが、、、お母さんで本当に良かった。

ありがとうね。
いつか、必ず恩返しがしたい。

その後、一緒にクッキーを作った。

お母さんは私にとって世界で1番大好きな人だからね。


※PTSD…心的外傷後ストレス障害。死の危険に直面した後、その体験の記憶が自分の意志とは関係なくフラッシュバックのように思い出されたり、不安や緊張が高まったり、辛さのあまり現実感がなくなったりする状態の事を言う。

素敵な体調の崩し方