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今年の読書をふりかえってみて

最近、ウェルベックの本を何冊か読んでいて、思うことがありました。

男尊女卑な男性キャラクターって小説に頻繁に、ごく当然のごとく登場するけれど、女尊男卑な女性キャラクターってあんまり見かけないなあ、と。

男性に張り合おうとか、負け惜しみとか、弱い立場だからこその強がり、単純に男性嫌いみたいな意味での男性に対抗する女性キャラクターはある。でもごく自然に、あたかも当然のごとく、女性の方が男性より優れた存在である、と確信し行動している女性キャラクターってあまり見かけません。逆に、ごく自然に、あたかも当然のごとく、男性の方が女性より優れた存在であると振る舞っている男性キャラクターは五万といるのに。現実でも同じだからだろうか。

と考えていて、気がつきました。

そういえば私、男性作家の小説を読みがちで、女性作家の書いた小説をあまり読んでいないんじゃないか?だから偏っているのかも。


試みに今年読んだ小説を振り返ってみると、読んだ冊数は少ないものの、圧倒的に、女性作家より男性作家の小説を多く読んでいました。


これはたまたまなのか、自分の好みなのか、私が無知で女性の書いた作品に疎いからということも考えられます。作家の性別を意識して本を選んだことはないと思っていたけれど、そうではないかも知れない。

知らず知らずのうちに、本を選ぶときにも社会の影響を受けていたのか?
もしかしたら、男性作家の小説の方が女性作家の小説よりも頻繁に話題に上がるのかも知れない。だからついつい男性作家の作品の方が目に止まるのかも。男性作家より女性作家の方が人数が多いということも考えられます。そういえば主要な文学賞の歴代の受賞者は誰だっけ?

映画の話になりますが、第74回カンヌ映画祭でジュリア・デュクルノーさんが『Titane』で最高賞のパルムドールを受賞した時、女性監督が同賞を受賞するのは歴代2人目だと知り、驚きました。74回開催されて、たった2人。映画界ってそれほどまでに男性社会だったんだなと初めて気がつかされたのです。ちなみに第94回アカデミー賞監督はジェーン・カンピオンさん。こちらも女性監督としては史上3人目の受賞だったそうです。



男性作家と女性作家。
特別に区別して考えたことはないと思っていたけれど、自分の気づかないうちに、女性作家の小説を読むとき、「やっぱ女々しいな」とか「いかにも女性の書く作品だな」とか男性作家の作品を読むときには存在していない色眼鏡で見て、フラットでない読み方や価値観を持ってジャッジしていないか。

と、いうことを考えています。



小説だけでなく、映画でも、漫画やアニメも然り、創作物の中で繰り返し描かれる、かくあるべき女性像・男性像に、私たちは案外影響を受けて生きているのではないでしょうか。

そして男性の描く女性と女性の描く女性、男性の描く男性と女性の描く男性には違いがあります。特に漫画ではより顕著にこの差異を感じます。

創作物が現実を反映しているのか、現実が創作物を反映しているのか。少なくとも創作物で繰り返し描かれるパターンは徐々に人々の思考に染み入って、世の中のムードをつくるのではないか。

私はそう思うので、女性のつくるもの、男性のつくるもの、もう少しどちらも数的に公平に読んでいきたいです。たくさん読むことで、また新たに見えてくるものがあるのでしょう。

来年はもっと女性が書いた作品も読んでいこうと思います。


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