連載ファンタジー小説「オボステルラ」 【第三章】7話「大きな男」(2)
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7話 大きな男(2)
-----そして、夜中。
「…あっ」
ゴナンははっと目を開けた。いつの間にかベッドに寝ている。横では、リカルドの寝息。
(しまった…。あのまま、ずっと眠ってしまうなんて…)
リカルドを起こさないようにゆっくり体を起こし、窓からの月明かりで時計を見た。もう2時を回っている。あの男から聞いた待ち合わせの時間は3時。よかった、間に合う。
(……結局、リカルドに話せなかった…)
リカルドを起こそうかとも思ったが、スヤスヤと眠る寝顔を見ると、それも憚られた。
(もう時間に間に合わなくなるし、ひとまず今日は仕事に行って、帰ってきてからちゃんと話そう。大丈夫、俺が1日くらいいなくても、みんなには何の影響もない…)
そう思ってベッドから出て、月明かりで身支度を調える。
(力仕事…。汗をいっぱいかくかな…。外での仕事かもしれない。リカルドにもらった服を汚してしまうのは、いやだな…)
そう考え、バックパックの底から、古い服と土色のバンダナを取り出す。取っておいて良かった。
(身軽でいいっていってたから、他は何も要らないか)
そうして、音を立てないように寝室を出て、足音を立てないように玄関から出るゴナン。
「……?」
外に出た後、名を呼ばれた気がして一瞬立ち止まり、今出てきたドアの方を振り返った。しかしシーンと物音一つない。
「…気のせいか…」
そうしてそのまま、ゴナンはすうっと夜空を見上げる。南側に、今日も真っ赤な彼方星。その光を見てぐっと唇をかみしめ、前を向いて集合場所の方へと走っていった。
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「お、来たな」
待ち合わせの宿場街の西入口に着くと、食堂にいた男達が待っていた。
「よろしく、お願いします…」
ペコリと頭を下げるゴナン。キョロキョロと周りを見る。
(何人か集めるっていってたけど、他の人は、いないのかな…?)
「おい、こっちの方へ来てくれ」
男の一人がゴナンを、脇の路地の奥へと誘った。言われるとおりに入っていくゴナン。
「武器は何も持ってないな?」
そう言いながら、両手を挙げさせボディチェックする。何の確認だろうか?と疑問に思いつつも、ゴナンはされるがままだ。
「私物は何も持ってねえのか? 財布とか」
「…身軽にして来いと言われた…、ので……」
ゴナンのその返答を聞き、食堂でゴナンと話した男が苦笑いした。
「…ああ、そうだったな。素直で何よりだ」
隣の男は苦々しい顔をしている。食堂の男がまあまあ、となだめながらも、ゴナンの背後に回った。
と…、おもむろにゴナンの両腕を取り、後ろ手に縄で縛る。
「…え…?」
そう戸惑うゴナンの口に、今度はさるぐつわを噛ませて後ろで結んだ。
「……!」
「……痛い目に遭いたくなければ、大人しくしてろよ」
ゴナンの耳元で男がそうささやいたが、ゴナンは抵抗し、暴れて逃げだそうとした。
「おい!」
男が後ろで縛った腕をぐっと引っ張る。
「……!」
(…しまった……! 俺は…)
それでも逃げようと抵抗するゴナン。背後の男は舌打ちをして、他の男にアゴで合図する。
「大人しくしてりゃ痛い目に遭わないってのに…」
そう呟いて、正面から別の男がゴナンの腹にパンチを入れた。
(……!)
前のめりにうずくまるゴナン。そのまま男達はゴナンの体を地面に押しつけ、足を縛る。
「……おい、暴れると面倒だから、もう2、3発入れておけ」
「ああ」
さらに2回、ゴナンの腹が蹴られる。鈍い痛みの末に、ゴナンの意識は遠くなっていく。
「…それにしても、ちょっとひ弱すぎやしないか、この男は。まだ子どもじゃないか? ちゃんと使い物になるのか?」
「18歳だと、よ。それに、どうやら身寄りもないって話だから、都合が良さそうだ。ノルマに一人足りなかったから、焦っていたんだ。ちょうど良かったぜ…」
「まあ、若いから仕事はどうにでもなるだろう。ドズ先生に鍛えてもらえばいいさ」
そんなことをいいながら、気を失ったゴナンを抱えた男達は、近くの建物の陰に駐めている荷馬車へと向かう。荷台の中には、他に4人の男達が、同じように猿ぐつわをはめられ縛られている。
「さ、揃ったな。出発だ」
荷馬車はツマルタの街を静かに出て、西の方へと走っていった。
↓次の話↓
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