先生の娘、やめることにした (導入)

わたしの実家は教員一家です。祖父母も両親も、両親の兄弟も。

幼い時から30歳を過ぎた今の今まで

「先生の子なんだから」「いいこ」「よき娘」という呪文をかけられていたように思います。

先生の子なんだから、お勉強ができないと恥ずかしい

先生の子なんだから、いい子でいないといけない

先生の子なんだから、大学は出ておかなければいけない

なっちゃんは頑張り屋さんでいい子ね

なっちゃんはちゃんと大きな会社に入って偉いわね


自分でも、いいこだ、とか、偉いね、すごいね、と言われることに悪い気はしなくて、

でもいつしか、そう言われないといけないって自分の首を絞めていました。

何かに失敗する、

例えば、志望校に落ちたり、留年したり、就職できなかったりしたら

○○先生の娘さん、落ちたらしいわよ、留年したみたいよ、就職できなかった見たいよ

と、実家の親が陰口を叩かれます。

先生のうちの子なのにね。。。と

ただ、そんな陰口はおそらくまだ言われていません。

だって、私はまだ大きな失敗、してないから。

「いいこ」であることを全うしていたから。

親が決めた高校に入り、指定校推薦でそこそこの大学に入学。

リーマンショック後の就職氷河期の就活も、

就職浪人なんて親や親戚になんて言われるかという恐怖から

ガムシャラに受験してようやく2社に内定。

ただただ、どこでもいいから、

とりあえず、名の知れた大きな会社なら親も安心するかな

そんな適当な気持ちでした。

結局2社のうちどちらに就職するか、親と親戚が決めました。


これまで自分の進む道を自分で決めていませんでした。

世間的に見て「いいこ」。

親から見て「いいこ」。

学校の先生の娘として「恥ずかしくない」。

それを全うするあまり、自分の気持ちに蓋をして、

見えなくしていました。

そんな進路だったので、就職してからは、ずっとモヤモヤが続来ました。

ちょいちょい体も壊しました。

「仕事、辞めたい」

と親にはじめて言った時。

「あんなにいい会社、雇ってもらえただけでもありがたいと思いなさい。

あなたなんて他のどこで働けるの?どこが雇ってくれるの?」

「頑張りなさい」と、叱咤激励のつもりで言ってくれたのでしょう。

親からは怠けているように見えたのかも知れません。

それに、私も親にそう言われると、

「そうかな」

なんて思ってしまったんです。

私なんて何もできないし、この会社で頑張っていくしかないんだ・・・・・

このやり取りを一年毎に繰り返し、騙し騙し会社に在籍し続けました。




29歳で結婚しました。はじめて自分で決めたことかも知れません。

そしてまた親に言いました。

「仕事やめたい」

でも今回も反対されました。

「なに言ってるの?これから益々お金がかかるんだから。旦那さんに迷惑かけちゃだめ」


ああ、そうなのか、私が仕事辞めるのって旦那にも迷惑なんだ。

今度はそんな思考が生まれました。

そんなに辞めたい辞めたいって、何が不満なの。

とみなさんは思うでしょう。

当時の私は、はっきりとそれが出てこない状態だったんです。

いや、出てくるけれど、羅列するとただの駄々っ子みたいで、言えませんでした。

私はこうしたい

が出てこない。

散々辞めたいって言って、結局やめてないのは、会社のメリットを手放すのが口惜しいから。

それだけでした。

じゃあ、辞めて何がしたいんだろう、どうなりたいんだろう。

そんなことも自分で分からなくなってしまっていました。

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