勝手に1日1推し 30日目 「チ。ー地球の運動についてー」

「チ。ー地球の運動についてー」(1~3)魚登     漫画

いかに現代人が利己的、且つ、資本主義的に生きているのか、少し恥ずかしくなりました。というか、観念が違い過ぎて、この物語の主人公たちには、驚きと共に畏敬の念を抱かずにはいられません。自分の利益ではなく真理を求め、死さえも恐れず、好奇心、探求心、他者への信頼を基に感動を追い求める姿は、眩し過ぎて直視できないほどです(するけど)。

コロナ禍で制限のかかる今、図らずも意識レベルも低下気味で、確実に視野が狭くなっています。広い世界を見られないし、信じられなくなっています。こんな時こそ、読みたい1冊ですね。

地動説を巡る壮大でロマンある物語は第3集(3巻)に突入し、ますます面白くなってきました。本作のテーマとなっている天動説から地動説への変説について、正直、私は、どういう歴史的流れがあったのか知らないですし考えたこともなかったです。ただ事実として受け入れていただけ(学校とかで習ったっけ?)。しかし、真逆にあった通説を覆すのにドラマがあるのは然るべきです。凄いところに目を付けますよね。魚先生、痛み入ります。本作が事実かどうかは問題ではないと思います。

まず、希望を、未来を見続ける瞳が印象的です。全編通してこの瞳の描写には力強さと意志が見て取れて、こちらも読む者としての覚悟か決まります。そして、数々の胸を打つ名セリフ。各集(巻)にそれぞれ名言が散りばめられていますが、本当に心が震えます。例えば、第1集(巻)ですと、

「不正解は無意味を意味しない」

ですとか

「感動は寿命の長さより大切なもの」

ですとか。マジでやばいです。「しゃれくせ~」とかならないですから、この手のセリフを聞いても。納得しかないし。ずっとこの調子ですよ!大真面目に信念やら美学やら真理やら歴史やら、今では会話で口にすることはほぼないであろう言葉が飛び交っています。凄いでしょ?

第1集(巻)~第3集(巻)まで時代や世代が巡り巡ります。それでも途絶えることなく受け継がれる希望は、どんどん具体性が出てきます。様々なタイプの人々が関わり始め、ますます目が離せないです。そしてついに現代ともリンクする問題も出てきます。女性蔑視問題。っかーーーぺっ、何千年前からあるんだよ!!歴史の陰に女性あり。そろそろ陰から出してくださいよ。実話ではないかもしれませんが、こういうことがあったと想定し得ることだなぁと思います。

第3集(巻)には「文字」に関する奇跡の下りもあります。本当に神!!!活字離れしている老若男女各位に是非お読みいただきたい。私が常々思っている文字を介する創作物についての思いを代弁してくれているようで嬉し泣きしてしまいました。いよいよ地動説の夜明けを予感させるラストカットも最高に痺れます!

マンガ大賞ってすごいんですね。コロナ前までとんとご無沙汰だったマンガの世界ですが、毎年開かれているんですね。てか、本作が2位なの?1位じゃなくて?もはや質とレベルの高さがおかしいな。

とにかく読まないと始まらない。絶対に読むべきです。今。今。今。世界が違って見えますよ。

「ずっと前と同じものをみているのに少し前からまるで違く見える」「きっとそれが何かを知るということだ」

です。

ということで、推します。

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