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グラフィックデザイナー・大石知足さんが考える、舞台のチラシ|舞台チラシリサーチ

舞台公演のチラシ。データでの情報発信が主流となる現在でも、出会った人にその場でご案内ができる紙の「チラシ」は、データと並行して大切な存在として残りつづけていくと思っています。宣伝にとどまらず、記録としても貴重な存在であるチラシを、演劇団体の皆さんはどのようにつくり、配布し、アーカイブしているのだろうーー

私は、舞台芸術業界の創客を目的として、舞台公演のチラシについて、製作/配布/アーカイブ化に関するリサーチを実施しています。

このnoteでは、チラシの製作に欠かせない「デザイン」の視点から実施した、舞台チラシリサーチの回答を記事にしてまとめ、届けていきます。
今回は、グラフィックデザイナー・大石知足さんにご回答いただいた内容を、シェア!


グラフィックデザイナー・大石知足さんが考える、舞台のチラシ


大石知足
多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業後、大手百貨店のハウスエージェンシーを経て独立。
主な受賞に、準朝日広告賞、日経広告賞優秀賞、Japan Six Sheet Award銀賞、ピンクリボンデザイン賞優秀賞、東京TDC賞・日本タイポグラフィ年鑑・世界ポスタートリエンナーレトヤマ 入選など。
自ら描くイラストレーション表現やフォトディレクションを絡めたグラフィックデザインを中心に活動を行っている。

ーー現在は、どのようなデザインの依頼を受けていますか
大石:個人飲食店舗や中小企業、商店街キャンペーンなどの広報媒体を中心にデザイン制作を手掛けています。

ーーこれまで手掛けられたデザインを、ぜひ、教えてください!

「大森山王ジャーマン通り ワクワクミーツラリー」

大田区大森にある、2つの商店会で共催したシールラリーイベントの宣伝媒体および共通ビジュアル。
緩やかな坂となっている大きな通りを、ワクワクしながら行き交う人をイメージしたシンボルマークを制作しました。通りが目指すエレガントな姿を大切にしながら、造形や配色に落とし込んでおります。リーフレットの参加店舗情報のイラストも、すべて手描きで描き起こしました。
クライアント:ジャーマン通り商店会・馬込銀座会

「カネ保水産 歳末大売り尽くし2023」

三崎まぐろを柵買いできるユニークなイタリアンレストランの、歳末恒例イベントの宣伝媒体。学生時代にこちらでアルバイトとしてお世話になり、卒業後も毎年のように告知媒体を作っています。
2023年はずっと温めていたまぐろの柵を赤富士に見立てる表現にし、年に一度のビッグイベントを表現するのにふさわしいモチーフだと思いました。地元の最寄駅にも問い合わせてB0サイズの駅貼りも行いました。
クライアント:株式会社カネ保水産

「akasand」

いちご大福専門店が作るジャムサンドクッキーのパッケージです。中のクッキーがお花の形でかつメインなので、あくまで主役を立たせることに徹した、いちごの葉で構成されたデザインです。人気バラエティ番組などメディアにも多数登場したため、今となっては入手が困難な商品ですが、お土産などにも大変喜ばれます。
クライアント:いちご大福と茶菓のお店 あか(株式会社sisty)

ーー広報媒体をデザインされる際に、大切にされていることは、ありますか
大石:クライアントの持つ課題解決に向き合いながらも、「自分ならでは」をいかに表現するかは意識しています。
今やとても多くのデザイナーやサービス、アプリケーションが存在している中で、デザイナー一人一人の存在意義が強く問われていると日々感じているため、この人にお願いしてよかったと思われるように努めております。

ーー舞台公演チラシの製作に関心はありますか
大石:是非取り組みたいです。飲食店や企業の広報媒体をデザインする際、通常多くの案件では、そのイベントの魅力を正しく認知させることが求められ、アート性の追究をしづらい場合が多いからです。
これらのデザインも探求する甲斐がありますが、私のように美術を出発点としてグラフィックデザイナーになった人の多くは、舞台公演チラシなどの、創造性を存分に表現できる分野でデザインを手掛けることにも、強い憧れを抱いているのでは……!と、思っています。


(2024/09/03 追記)
★チラシリサーチが、舞台芸術の出逢いの場になりました!
こちらの記事をご覧になった演劇プロジェクト「イエデイヌ企画」の皆さんが、大石さんにチラシデザインの依頼をされたとのこと!うれしいお知らせをいただきました。

イエデイヌ企画
再演『エリカによろしく』
2024/10/18(金)-20(日)

■イエデイヌ企画代表・演出の福井歩さんより

初演時の戯曲や上演映像から、大石さん自身が感じ取ったことを、宣伝美術として表現してくださいました。
波と砂が組み合わさって落ちていくグラフィック、奥行きのあるタイトル、波打った公演情報など、異なる力の方向やレイヤーがありつつもまとまっているのが、宣伝美術『エリカによろしく』の表現として、とてもしっくりきています。そのためかシンプルにみえながらも、インパクトを感じました。
また大胆な余白や日付をつなぐ飛行機などの細かな遊びも気に入っています。

■大石さんより

今回、臼田さんが手掛けるチラシリサーチの活動を通じて、
演劇プロジェクトの「イエデイヌ企画」代表・演出家の福井歩さんより
直接フライヤー制作のご依頼をいただきました。

昨年好評を博したものの再演ということで、
初演の記録映像と戯曲を何度も見ながらビジュアルを探りました。
再演などでないとこうして映像があるケースは少ないと思うのですが、
そのおかげでビジュアルの導きにはとても助かりました。

水面や砂浜の点描、タイトル文字などの多くが手描き表現で、
鉛筆の風合いが原画さながらに感じられるよう、HS画王という紙で印刷しています。

また、劇中歌ではないのですがモチーフとして登場する楽曲があり、
その世界観にも大きく影響を受けた表現となっています。
このフライヤーを通じて、多くの演劇ファンの方に鑑賞に来ていただければ嬉しいです。


★大石さんに、チラシデザインを依頼される際はこちらへ!
メール:tmtr8823@gmail.com
Instagram:https://www.instagram.com/tmtrzm (@tmtrzm ) 
※ご連絡の際は、①ご予算②公演内容をお知らせください。些細なことから、お気軽にご相談ください。


◉舞台チラシのリサーチにご協力ください◉

舞台芸術業界の創客を目的として、舞台チラシの 製作/配布/アーカイブ化に関するリサーチを実施しています。
《対象:全国の舞台業界/印刷・デザイン業界/舞台ファンの方々》
まずは、こちらのnoteをご覧いただけると嬉しいです。


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