お祭りの正体は…… !?|【稽古場レポート】演劇ユニットWillow's 「夏の夜の夢」
ここから、寝息が聞こえてきませんかーー
外側には、ジグザグとした”ひびき”が2つ。
まるで、呼吸音のよう。
これは、演劇のチラシです。
演劇ユニットWillow's 5th Performance 「 夏の夜の夢 」
『夏の夜の夢』は、ウィリアム・シェイクスピアの有名な喜劇。松岡和子さんの訳をもとに、Willow's主宰である木川流さんが、脚色・演出をして上演します。
チラシの中心にデザインされた赤い丸。様々な解釈があると思いますが、私には、お腹のなかにいる小さな赤ちゃんのように見えました。静かに寝息を立てながら、夢を見ている。その夢のなかではきっと、賑やかなお祭りにでも参加しているのかなぁと、感じるのです。
『夏の夜の夢』は、森が舞台となり、アテネの貴族たちが愉快な恋争いを繰り広げます。森に住む妖精たちの魔法によって、恋争いがあっちこっちに振り回されちゃうところが、おもしろポイント。
演劇チラシでは、「森」や「妖精」というキーワードから、紺色や紫色など、ファンタジー色の強いデザインで表現されることが多いのですが、このチラシには赤と白と黒が使用されていて、汗をかくような暑くて熱い、お祭りを彷彿とさせます。
赤ちゃんはいったい、「どんな”お祭り”」を見ているのか……??Willow'sの皆さんに逢いたくなり、稽古場へ参加してまいりました!!
"笑顔な"お祭り!!
練習をしていたのは、クライマックスである5幕1場。アテネの貴族たちの恋争いが落ち着きを迎え、とある劇中劇が上演されるシーンです。
劇中劇でお芝居をしているのは、アテネの職人たち。彼らを囲むように、貴族たちが椅子に座っています。演目は"悲劇"なのですが、なぜかみんな、大笑い……。
シーンにカットがかかり、演出の木川さんも合流。お芝居をしていないときも、皆さんはとっても笑顔。そう、この稽古場、終始笑いが絶えないんですーー
とまらない、とまらない、"喋り尽くす"お祭り!!
演出の木川さんは、俳優に対してーー
「どんどん良くなるね!心から動いているね!」
と、明るい声をかけたり……
「ここは~~な風に上演したいんだよ。参考にしている〜〜というセリフがあってね、これはシェイクスピアも意図的に書いている気がするんだよね」
と、演出のもととなっている文献をその場で広げ、俳優たちに丁寧に語りかけたり……
演出卓より、稽古場の中心にいて俳優たちと話している時間のほうが圧倒的に多い、アクティブな演出家。
とにかく、しゃべる、しゃべる、しゃべり尽くす。めちゃくちゃ楽しそうなんです!!
Willow'sのブログでは、演出に対する想いを綴られています。
木川さんの想いに呼応するように、俳優たちも前のめりで体現に挑みます。
"想いが溢れる"お祭り!!
木川さんが稽古中にこぼしたあるひと言が、特に印象的でした。
「稽古ができるって、当たり前じゃないんだ」
夕方に始まったその日の稽古は、休憩を挟みながらも空気の流れがとどまることは一度もなく、ずっとずっと、テンポよく進んでいきます。終わる頃には、まるで演劇1本を観劇したときのような充実感に満たされていました。
20代の若いシェイクスピアチーム。出演している俳優やスタッフは、仕事終わりや学校終わりに、稽古に合流しているメンバーも多いです。(ちなみにこれを書いている私も彼らと同世代。他のお仕事もしながら、演劇に関わっています。)
大好きな演劇を、豊かにつないで、ひろげていくために。若い私たちは、いつも、いつも、全力です。
限られた稽古の時間を大切に、想いを込めて、笑顔で全力で、シェイクスピアを喋り尽くす!!
シェイクスピアの登場人物たちは、いつ誰に殺されるか分からない時代を、言葉通り命懸けに生きています。そんな命懸けと同じくらい、熱い想いに溢れていた、Willow'sの稽古場でした。
5月11日(木)、王子小劇場で開幕します。
この祝祭を、一緒に目撃したいです!!
演劇ユニットWillow's 5th Performance 「 夏の夜の夢 」
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