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「劇団演奏舞台」の視点|舞台チラシリサーチ

舞台公演のチラシ。データでの情報発信が主流となる現在でも、出会った人にその場でご案内ができる紙の「チラシ」は、データと並行して大切な存在として残りつづけていくと思っています。宣伝にとどまらず、記録としても貴重な存在であるチラシを、演劇団体の皆さんはどのようにつくり、配布し、アーカイブしているのだろうーー

私は、舞台芸術業界の創客を目的として、舞台公演のチラシについて、製作/配布/アーカイブ化に関するリサーチを実施しています。

このnoteでは【舞台芸術団体】の方にご回答いただいたリサーチの結果を、記事にしてまとめ、届けていきます。
今回は「劇団演奏舞台」の池田純美さんにご回答いただいた内容を、シェアいたします。


《舞台チラシリサーチ》
「劇団演奏舞台」の視点

劇団演奏舞台
東京九段下を拠点に活動する劇団演奏舞台です。
おかげさまで創立から51年目を迎えました。
創立より舞台に生演奏のバンドを導入し、劇中の音楽・効果音などを生の楽器で奏でています。
役者の息遣いが隅々まで行き渡る小劇場での公演にこだわり、演者・音・光・空間・観客が一体となる舞台を目指して活動を続けています。
上演ジャンルは様々ですが、観終わったあと、少しだけ世界を見る目が変わるような作品づくりを目指しています。

《チラシの製作》

ーー公演宣伝の際に「チラシ」は作成していますか
池田:
作成しています。

ーーなぜチラシをつくっていますか
池田:
舞台でのチラシは、お菓子で例えると商品パッケージのようなものだと考えています。パッケージがいいからといって口に合うとは限らないけれど、パッケージが気にならないと、よほどの前情報がない限り「食べてみよう」とは思いませんし、「もう一度あれ食べたいな」というときに頭に思い浮かぶのはやはりパッケージです。音楽でいうジャケット画像や、映画のポスターも同様ですね。
主役ではないけれど、お客様とのつながりの始まりとその後を担う大切なもの。
そのような思いで、チラシを作り続けています。

ーーチラシのデザインはどのように考え、どなたにお願いしていますか
池田:
近年は、代表・浅井星太郎が、作品が決まった後に、その世界観やモチーフを取り入れて作成しています。
再演作品であっても、その時に感じたことを反映し、改めて一から作り直すことが多いです。

公演79『太鼓』
鬱蒼と生茂る灼熱のジャングル…。舞台となる戦場の緊張感、また役者のソリッド感を強調するために、あえてモノトーンを選択。お客様がその一部始終を覗き込めるようなデザインを追及しました。

公演80『白夜』
寺山修司氏の初期作品。物語とは別に、ある意味、人間の観念を超越した(幻想的)なイメージが最初に浮かび、月夜に飛び立つ「ウミネコ」をメインに構図を考えました。お客様からも非常に好評をいただいたデザインです。

演じるための試演92 朗読会『光と影』-SAIKAI-
コロナ禍を必死に戦い抜き、ようやく舞台活動再開!の「再開」と、お客様との「再会」をテーマとしたステージ。親友である画家の上田靖之さんよりいただいた版画作品を中央に配置し、脇にテーマ曲の歌詞を暗号化した数字を配置。シンプルではありますが、遊び心を詰め込んだ、思い出の作品です。

★デザイン全体に対して、浅井さんよりコメント
「いつも対峙する作品のイメージを損なわぬよう、また、観に来ていただくお客様の想像をかきたてられるよう、創意工夫を重ねてきましたが…やはりデザインは難しい。いつも試行錯誤の連続です。」

《チラシの配布》

ーーチラシの印刷はどちらに、何部ほど頼んでいますか
池田:
公演規模により異なりますが、ネット印刷を使用して1000部ほど印刷しています。

ーーチラシはどこへ配布していますか
池田:団員への配布やDM希望のお客様への郵送を中心に、劇場への折込・置きチラシや、アトリエ近隣への配布も行っています。

ーー配布後の効果については、どう感じていますか
池田:正直なところ、紙媒体での配布そのものにより大きな効果は感じにくいですが、チラシを見て来場したというお客様や、観劇後にチラシを持っていないので持ち帰りたいとおっしゃるお客様もいらっしゃいますので、少数ではございますが紙媒体での印刷配布を続けております。

《チラシのアーカイブ》

ーー配布後、余ったチラシはどのように管理していますか
池田:
記録用として数部事務所に保管するほかは、キャスト・スタッフと分け合っています。それでも余ったものは破棄しています。

ーー舞台チラシの製作/配布/アーカイブに関して、未来に望むことをお聞かせください
池田:デジタル社会の現在、時代遅れと揶揄されることも多い舞台業界ですが、たとえお客様がひとりだったとしても、その舞台に命をかけて作り上げた人がいます。
願わくは、それらの小さな命の集まりを、「チラシ」という形に残して、未来まで伝えていきたいと思っています。
 
当劇団では少しずつではありますが、チラシと公演情報のアーカイブを進めています。結構骨が折れる作業ですが、チラシを見て、「どんな舞台だったのかな」と想像する時間はとても楽しいです。そして、それらに携わってきた先輩方の姿を思い浮かべ、「負けないぞ!やったるぞ!」という気持ちにもさせてくれます。(ご興味がある方はぜひHPをご覧ください笑)
もしも日本の舞台業界全体でアーカイブ活動が盛んになっていけば、日本の舞台文化はもっともっと面白くなる!このアンケートに回答しながら、そんな妄想が現実になる日は、遠くないかもしれないな、と感じています。貴重な機会をいただきありがとうございました。


★劇団演奏舞台の次回公演★

公演82『純白観想文』
作/江深シヅカ
演出/池田純美

2024年3月16日(土)
13:00/17:00
演奏舞台アトリエ/九段下GEKIBA



特別公演/名前のない演劇祭〈紫〉参加
『純白観想文』
作/江深シヅカ
演出/池田純美

2024年
3月20日(水/祝)20:00
3月23日(土)17:30
​中板橋新生館スタジオ

[あらすじ]
東京郊外。季節は春だというのに、孫の読書感想文を一生懸命手伝っている元高校教師・源三。彼を尋ねてきたのは かつての教え子だった、斉藤順二。

大量の原稿用紙。『羅生門』。散乱する肌着。
些細な会話から次第に紐解かれていく事実。

どこにでもあるような、どこにもないような、 小さく淡い、一個の家族の物語。

詳細:https://www.g-ensoubutai.com/performance

アトリエ本公演と、演劇祭特別公演の2本立て。同じ作品であるため、共有のイラストをベースにしつつも、各作品を水色と紫色で区別しています。
画用紙に滲む水性インクのような、淡く柔らかい色調が、美しいです。「感想文」ではなく「”観”想文」であるところの想いが、とても気になります。(うすだ)



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舞台芸術業界の創客を目的として、舞台チラシの 製作/配布/アーカイブ化に関するリサーチを実施しています。
《対象:全国の舞台業界/印刷・デザイン業界/舞台ファンの方々》
まずは、こちらのnoteをご覧いただけると嬉しいです。

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