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今世では、皇太子妃になんてなりません!! 1話

「結月ってば、まーた告られてたねぇ?」
「・・・もー、やめてよ未亜」

にやにやとして言う未亜に、私・・・結月は、顔をしかめた。

「だーって、あの黒井田くんだよ?」
「あの、ってどの?」
「え」

結月の言葉に、未亜は信じられないとばかりに目を見開いた。
そして、「え、マジで言ってる?」と結月の顔を覗き込んだ。

「・・・なに?」
「結月が恋愛に興味ないのは知ってたけどさぁ・・・でもまさかここまでとは思わなかったよ」
「だからなに」
「いーい?黒井田くんといえば、うちの学年の・・・」

その言葉は、最後まで聞くことはできなかった。

「うわあ?!?!」
「車!?」

ものすごい音と、人々の悲鳴。
なに?と顔をその音のほうにむけると。

「え」
「な、なに?!」

その向こうには軽自動車が右に左にと、蛇行しながら・・・こちらに向かってきていた。

「そこの二人、逃げろ!!!」

誰かが叫んでた。
けれど、足が縫い付けられたように動かない。

そして、私の体は宙を舞った。



『シャルティアナ・ラ・ノヴァーリス!そなたは黒魔術に使用される道具を所持していた。しかもそれらを使い、ディリティリオ・イャート・コンフリー令嬢に黒魔術を行使しようとしていたな!』
『殿下、違います!私は黒魔術を使用したことなどございませんし、それらの道具も私のものではありません!!』
『黙れ!では道具がお前の部屋から見つかったことはどう説明するのだ!!』
『それは・・・!』
『シャルティアナ様・・・私はシャルティアナ様と仲良くしたかったのに・・・私がなにかしてしまったのでしょうか・・・』
『ティリーは優しいな。自分に黒魔術を使おうとした者のことまで気に掛けるとは。けれど、そんな必要はないのだよ?』

目に涙を浮かべる少女を、「殿下」と呼ばれた青年は優しい顔でみつめ、彼女の涙をその手で拭った。

『黒魔術の使用は、我が帝国では禁止されている。そして見つかれば、極刑は免れない』

青と灰が混ざった、冷たい冬を思わせる、温度を感じない絶対零度のアイスグレーの瞳。
そして、これ以上はないと思わせる憎しみと怒りを感じさせる表情で、殿下は「こちら」を見た。

『シャルティアナ・ラ・ノヴァーリスから、現時点をもって貴族籍、そして皇太子妃の座を剥奪する。そして黒魔術を使用した咎で、極刑とする!この者を地下監獄「無間」に収監せよ!!』



(そうだ)

「紫雲結月」として、この地球の日本で生を受ける前。
私はこことは違う世界のユリスティア大陸、そこにあるロゼレムという帝国の侯爵令嬢だった。
そして、公爵家に娘がいなかったことで、私が10才の時に皇太子妃選びが行われた。
年頃の貴族令嬢で、地位も高く、ここ数代において妃を排出していない家門ということで、私、シャルティアナ・ラ・ノヴァーリスが皇太子妃、次期皇后として選ばれた。

まさか自分が選ばれるとは思ってはいなかった。
両親は、私が嫌なら断ってもいい、私が好きな人と結婚すればいい、と言ってくれたけれど、皇室から選ばれた以上、断るには相当の理由がいる。
下手な理由で断れば、ノヴァーリス家の今後に関わる。
最悪の場合、ノヴァーリス家の断絶にもつながりかねない。

だから私は、「大丈夫です。とても光栄なことですし、お受けします」と答えた。そしてその翌日には、次期皇后としての教育が王宮で始まった。

(貴族令嬢として生まれた以上、政略結婚になる可能性が高いとあきらめていたもの)

だけど、それでも。
政略結婚だったけれども、今ではお互いに愛し合っている両親のように。
私も、そんな人と夫婦になりたいと思っていた。
お互いを思いやれる人と・・・と。

(だけどそうはならなかった)

ディリティリオ・イャート・コンフリー。
彼女が現れてから、全てが変わった。

コンフリー伯爵の嫡外子、伯爵家で働いていたメイドとの間に出来た子供。
そのメイドは伯爵夫人に妊娠がばれて追い出された。
伯爵はメイドの妊娠を知らず、追い出されたメイドは女手一つでディリティリオを育てたらしい。
が、その母親が、亡くなる前にディリティリオに父親のことを話したらしい。
そして、その話を頼りにコンフリー伯爵邸にきて、夫人には有無を言わさずに伯爵家に引き取られた・・・と、いうことらしい。

(けど、私は黒魔術なんて使ってないのに)

殿下は、私が黒魔術を使用したと決めつけていた。
確かに私の部屋から出てきたのなら、そう思うのは仕方のないことなのも知れない。
けれど、調査もせず、殿下はそのまま私を監獄に収監した。
そしてその三日後、私・・・「シャルティアナ・ラ・ノヴァーリス」は処刑された。


(前世は謂れのない罪で処刑、今世は交通事故死。なんで寿命を全うできないのかな私)

空が見える。
身体は痛いなんてものじゃない。

「人がはねられたぞ!」
「救急車!!!」

人の声が聞こえる。

「紫雲?!」
「だめだ君!」

聞き覚えのある声。
そうだ、昼休みに告白された・・・

(黒井田、くん)
「紫雲!おい、紫雲!!」
「いま救急車呼んだ!警察は?!」
「電話した!!」

(あぁ、今度はちゃんと人生を生きたかったな)


思いながら、重たくなる瞼を閉じた。







ーーーぱちり、と目を開けた。

「ん・・・?」

のそり、と起き上がる。
重たい頭をふり、きょろりとあたりを見回す。

「あ、れ・・・」

この部屋、見覚えがある。
どういうこと?と、首を傾げた。

「車にはねられて死んだんじゃ・・・夢、だったの?」
(にしてはリアルな夢だったけど・・・)

それにこの部屋、と顔をあげてもう一度部屋を見る。

(この見慣れた部屋と家具は)

思いを馳せていると、コンコン、とノック音がした。

「シャルティアナお嬢様、失礼いたします」
(シャルティアナ?シャルティアナっていった?!)

ベッドから降り、ドレッサーの鏡を覗き込んだ。

「・・・!」

はっと息をのんだ。

鏡に映ったのは、「結月」ではなかった。
けれど、よく知っている顔だった。

アメジストのような紫色の瞳。
日の光をうけると、まるで神話の豊穣の女神アフロディーテのように輝く長い銀髪。

(これ、シャルティアナ!?)

そう、鏡に映った風貌は、一度目の人生だったシャルティアナ・ラ・ノヴァーリスだった。

(どういうこと!?)

私・・・前世シャルティアナ、今世は結月。
どうやら3度目の人生は、またもやシャルティアナ・ラ・ノヴァーリスとしての生を与えられたようだ。


..To be Cotinued



★ご挨拶★

なろう小説やら漫画アプリでいろんな話をよみあさっていたら、ふっとこんな話が浮かび突発的にかいてみました。
プロットなんかできてない見切り発車のお話。
どれだけ続くかもわかりませんが、読んでやってくださるとうれしいです。
コメントも下さると嬉しいです⸜(*ˊᗜˋ*)⸝


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