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家業を積極的に手伝う理由。

 私の祖父母は漁師だ。夏場は昆布を拾う。昆布は一家総出の大イベントだ。腰を屈めて1つ1つ干すのは何とも地味な作業で、毎年夏が近づく度憂鬱だった。作業は好きだけど、潮の匂いで具合が悪くなりやすい。

 小学生の時は楽しかった。夏休み=昆布と言えるほどだった。毎朝祖母のトラックにのり、海岸沿いに打ち上げられた昆布を拾い干す。昼ごはんを食べ休憩したら、乾いた昆布を均等の長さに切るのを手伝う。その繰り返しだった。

 中学、高校、社会人と時間が経つにつれて昆布から離れていった。友達と遊ぶのが楽しくてしょうがなかった。成人して酒の味を覚えたら毎週のように飲み屋に通った。

 一見充実した私生活。だけど現実は酷い。仕事はメチャクチャだった。明らかにうつ状態だったのに無理して仕事をし、ミスをし叱られる。そんな現実を忘れるために酒に飲まれる。まともに食事も取らず、酒と煙草が主食の生活だった。

 そしてうつ状態が悪化し、退職。体重は40kg辛うじてあるくらいに痩せてしまい、顔は皺だらけになった。

 転職して2年近くたち、気力体力もほぼ戻った今年。人手がいないということで嫌々昆布を手伝った。日の光を浴び、汗をかいた。

 気力体力が戻るどころか漲る。ああ、体を動かすことが人を蘇らせるんだなと思った。食欲も戻り、三食きっちり食べられるようになった。自分の性格上、じっとしているより体を動かすほうが良いっていうのもある。自分の適性が昆布を通してはっきり見えてきた。

 昨日も昆布を干した。また今度も手伝おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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