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本との出会いも一期一会


まったく買うつもりがなかったのに、知りもしなかった本を買って店を出た。そんな経験はないだろうか。


先週の金曜日の夕方。帰りに本屋さんに立ち寄った時のことだ。

私は特にお目当てのものがなくてもよく本屋さんに立ち寄って、なにか面白そうなタイトルの本はないかを見て回る。

面白そうだと興味を持った作品の題名は、iPhoneのメモ帳に控えて候補に加える。しかし不思議なもので、そういう本ほど結局買わずに終わってしまうものだ。


「まあ、今日はこんなところかな」と思って、店を後にしようと反転したその時。少し離れた文芸コーナーにある、一冊の本が目に留まった。


「少年と犬 . . . ?」


特別視力が良いわけではないし、乱視も少し入っているけど、近眼ではないのでなんとか題名は読めた。

吸い寄せられるように文芸コーナーへと足を進めて、本を手に取った。題名は遠くから見た通りだった。


「少年と犬 . . . 馳星周 . . . えっ、馳星周?」


その著者の名前には見覚えがあった。

私がかつて、寝食を忘れるほどのめり込んだプレイステーション2(PS2)ゲーム、『龍が如く』の脚本を監修した小説家だ。2005年発売当時にそのゲームをプレイして以来、名前だけはずっと知っていた。


ところが、不思議か皮肉か、馳星周氏の肝心の小説を読む機会がないまま15年もの月日が経ってしまっていた。15年の時を経て、ふらっと立ち寄った本屋さんで手に取った本が、小説家『馳星周』氏の作品だったとは、なんの因果かと思わずにはいられなかった。


さらに、私が手に取っていた小説の題名には私の大好きな『犬』が入っている。それがますますこの本を離しづらいものにしていた。


人という愚かな種のために、神が遣わした贈り物


帯に書かれていたこの言葉が、ますますこの本への興味を深めた。

帯の反対側に目をやると、『家族のために犯罪に手を染めた男。拾った犬は男の守り神になった ー 男と犬』に始まり、『震災のショックで心を閉ざした少年は、その犬を見て微笑んだ - 少年と犬』に終わる、それぞれのキャッチコピーが書かれていた。


苦しい時に寄り添ってくれる犬に救われる気持ちを知っている私は、その心境を想像して悲しくなった目を少し細めた。


「. . . これもなにかの縁かな」


本を手に持ったまま、前を見ているようでどこも見ていない目で自分自身に言い聞かせた。私は著者を直感で信じて、『少年と犬』を買うことにした。


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まったく買うつもりがない本だった。そればかりか、その本を本屋さんで見かけるまで知らなかった。それでも、心に引っかかるなにかを感じて、直感で買ってしまうものなのだ。

本との出会いも一期一会。出会いがもたらされた時に買わなければ、人生の荒波を漕ぎ進む忙しさにとらわれて、読む機会を逃してしまうかもしれない。下手をすると、そのまま名前を忘れ去って二度と再会できない可能性すらある。

「また会ったら」「また〇〇だったら」なんて、次が当たり前のように来る前提で考えてしまう人は、本当に大事なチャンスほど逃してしまうものだ。


まったく意識していなかった時にふと飛び込んできた作品が、自分の人生の一部を創る作品になることもある。

こういう出会いがあるから本屋さん通いはやめられない。



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