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秘密

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【ショートショート】 モノクロ

あの窓から見える出来かけの高速道路の工事が始まったのは、2年前くらいからだろうか。 あれが少しずつ左右から真ん中に向かって伸び、ついにつながって一本の道路になった時、自分は生涯で最も好きだった人をようやく手放そうとした。 彼女 彼女は不思議な人だ。 たった一人で自分にとっての母、姉、妹、友達、恋人…全てのようである。 たまたま出掛けたりしても、示し合わせたかのようなタイミングで出会うことだってしょっちゅうだ。 そしてどんな話しをしても、最後には二人で笑っていられる。

    • 一見すべてに恵まれたあの人

      小学校のとき、とてもキレイで若い先生がいた。 いつも明るく笑顔で生徒から人気があり、運動もできる活発な人だった。 おそらく幼い頃から、あらゆる方面でクラス1・2を争って来た人だろう。 それでも傲慢な感じが一切なく、妬みからの悪口を言われているところだって見たことはなかった。 夏休みには同僚の先生とヨーロッパ旅行、冬にはスキーに行くなど職場での人間関係も良好なようだった。 そんな先生が私の2年と3年のときの担任だ。 私は先生のことが大好きだったし、それなりに懐いていた

      • 朝から湖の畔を散歩するに至った理由

        朝の自然は特別だ。 思えばプチフランスというテーマパークの、大して設備の良くない宿泊所によく泊まる理由は、誰もいない朝のフランス庭園を楽しむためだった。 プチフランスに行かなくても、近くの湖だって朝の自然の独特のヒーリング効果は感じられるものの、20分に一本しかないバスに乗って朝から出かけるのはかなり億劫だ。 でも、今日は違った。 極めて特別な理由により。 2月25日のお知らせ 私は韓国に住んでいて、子供はこっちの公立小学校に通っていてる。 クラスの半分は2キロ以上

        • 【ツイッターの都市伝説】Sの幽霊アカウント

          ある日携帯の画面に幾度も幾度もツイッターのDMのマークがつくところから、それは始まる。 Sからのものだ。 既読スルーしてもそれは何度も連投される。 思えばツイッターのリプもググればわかるような質問が多かった。 それにいちいち答えていた私は無意識に彼がしていた「テスト」に合格してしまっていたようだ。 ※この物語はフィクションです。 Sの自己紹介Sは大学生。父は外科医。母は駅ビルでバイトをしている。兄弟はSを含め三人。Sは長男で、妹は看護士、父の遺伝子をより多く受け継いだ弟

        【ショートショート】 モノクロ

          カフェ・ド・クリエ

          私は34で今の夫と結婚した。 遠距離恋愛の末の結婚である。 そのため、結婚生活を始めるとなると仕事をやめなければならなかった。 そんな事も、後に子供を産むか産まないかを考えると、最後のチャンスのような気がして踏み切った。 夫仕事をやめ、籍を入れた辺りから夫の態度は変わった。 生活のちょっとしたことにも、干渉したり小言を言うのだ。 そこまでなら、まだありがちだと思うかもしれないが、異常なのは回数である。 同じことを200回くらいは平気で言う。 私はそれで新婚早々家を出たが夫に

          カフェ・ド・クリエ

          越えがたい夜を越えた魔物たち〜最終章〜

          今までのお話しはこちら↓ 越えがたい夜を越えた魔物たち-1 越えがたい夜を越えた魔物たち-2 ※この物語はフィクションであり、実在の登場人物や団体などとは関係ありません。 魔物現る私からラインをブロックされたLは、予想を遙かに越えたしつこい嫌がらせを始めた。 ところどころ見え隠れしていた、彼の本性が炙り出された瞬間である。 それは端から見ると、ツイッター上でありがちな"一方が突然手のひらを返し、仲良く見えていたアカウントを攻撃する"パターンだ。 魔物はまず、ラインを遮

          越えがたい夜を越えた魔物たち〜最終章〜

          越えがたい夜を越えた魔物たち−2

          これまでのお話しはこちらから ※引き続きこの物語はフィクションであり、実在の登場人物や団体などとは関係ありません。 私は魔物になる前のL知っていた! それから私の投稿に関する質問がLからDMで来るようになった。 それは無視しても繰り返され、神経質な私はスルーするのも負担だった。 それでも彼のフォローを外したり、ブロックはしなかった。 それをやると、彼が壊れるような気がしたからだ。 まだその時は、彼が魔物ではなく迷惑な人間に見えていた。 おそらく、彼が表面上大学で虐めら

          越えがたい夜を越えた魔物たち−2

          越えがたい夜を越えた魔物たち -1

          ※この物語はフィクションであり、実在の登場人物や団体などとは関係ありません。また、魔物の画像がイエティであるというツッコミはご遠慮願います。 深く傷ついた人に越えがたい夜があるように 人を食い物にしながら息を潜め人間社会に紛れている魔物たちにも、越えがたい夜がある。 そして、それは魔物自身が魔物であることから逃避する以上、容赦なく幾度も幾度もやって来る。 だが魔物の多くは自分が魔物であることをやめない。 人間として生きることは、彼らを食い物にするという安易な道を外れる

          越えがたい夜を越えた魔物たち -1