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越えがたい夜を越えた魔物たち−2

これまでのお話しはこちらから

※引き続きこの物語はフィクションであり、実在の登場人物や団体などとは関係ありません。

私は魔物になる前のL知っていた!


それから私の投稿に関する質問がLからDMで来るようになった。
それは無視しても繰り返され、神経質な私はスルーするのも負担だった。

それでも彼のフォローを外したり、ブロックはしなかった。
それをやると、彼が壊れるような気がしたからだ。

まだその時は、彼が魔物ではなく迷惑な人間に見えていた。
おそらく、彼が表面上大学で虐められた被害者であることと、気の毒な環境にあることが私の目を曇らせたのであろう。
彼も彼で普段は動物を可愛がり、お年寄りを労り、年少者を可愛がる”良い人”に擬態していた。

この時点でフォローを外したりブロックするのはわりと普通だと思う。
でも、それは彼には越えがたい夜があることを知らない者のみが許される特権である。

では、彼に越えがたい夜があることを知る自分、”知る者”がそれをやるタイミングはいつか。
答えは誰にもわからない。
知った時点で被害Aと被害Bの選択肢しかそこにはないのだ。
そこにはターゲットにされた者だけが感じるオカルト的な恐怖がある。
そしてそれは常にホラー映画を観ているような感覚に近い。
実際の人間関係まで壊そうとしない映画の中の化け物の方が、まだ良心的であるとさえ思えるくらいだ。

リムったらいいのに、ブロックしたらいいのに、と真っ先に口にするような人物にはわからない感覚であり、それによって”知る者”たちが警戒する内容はわりと高確率で現実になる。

ある日のLのメールの最後が”今日は早く寝ます”だった。
真に受けた私はこれ以上DMを送らないでほしいことをストレートに伝えた。

結果はもちろんNoだった。
”許してください”その日何度も見たその文言により、私はさらなる恐怖を感じた。

結局その日も長いDMをすることになる。

そして瀕死の雑魚なりに魔物らしく魔物のテンプレートのような文言を言って来た。”あなたとしか話せないし、話したくない。あなたと話さないと精神が安定しない、あなたと話せば勉強に専念できる。”という、自分の生きづらさを相手に背合わせるテンプレートである。

ここで完全に不利な立場であるはずのLだが、どこか上から目線なのも実に魔物らしい。

これと似たケースで、とある善良な人が話しを聞き続け、最終的に魔物による苦痛から逃れるために離れたところ”あなたのせいで自分は狂った”と責め立てられ、重度の鬱になった例を私は知っていた。

しかし、そのようなことを知っている私ですら、自ら彼の犠牲になろうと思う部分を見つけてしまった。

私は遠い昔、彼が人間だった頃を知ってた。
そしてその事実により、私は何日も涙を流した。
いや、流したというよりは勝手にじわじわと染み出して来て止まらなかったのだ。

そして彼の悲惨さを悲しみ、大学でのことに腹を立て、アカハラについても調べ始めた。

何より、彼が普通の社会生活を送れるようになることを心から願ったし、そのためにとても多くの時間を犠牲にした。

Lとの決別

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楽しくもなければ何の得にもならないLとのDMのやりとりは、約半年も続いた。
自分でもよく頑張ったと思う。

ただ、DMをしない日が続いた期間の後は、彼のメールは明らかに支離滅裂さが増していた。とても凡人がわざと演出できるような事ではない。

そんな時は精神科の受診を勧めたが、それも”親が悲しむから”という謎の理由で断られた。普段、電車で東京まで出かける人が近くに精神科がないという理由で行かないというのもおかしい。

そして、その話しの最後は決まって私とのDMだけが自分の支えであるという転嫁だった。


毎回ツイッターでDMはやりにくいので、ある時からラインをするようになった。
それに伴いいくつかの個人情報を彼に握らせることになるが、それより多く彼の個人情報を握っている私にはなんら問題がないかのように思えた。


それにしても、ここまで報われないどころかマイナスな努力もなかなかない。

Lはだんだん厚かましくなって来た。


私のツイッターでの動向までチェックするようになり、コメントや”いいね”にまで口を出すようになった。

写真を投稿すれば誰と行ったのか確認のラインが来た。

このような干渉も魔物にありがちなことである。

またツイッターでの誤爆も何度かあり、それにより数日かけて練った企画が台無しになったり、個人情報を含むツイートをされるなどの失敗もあった。でも、その時は深く反省しているようなので苛立ちながらも強く責めたりはしなかった。

ーしかし

私が天然石で作ったアクセサリーを投稿した時にそれは起こった。
”自分もその石のブレスレットが欲しい”とLに言われた。

確かにその石のアクセサリーを付けていると気分が良いし、石も余っていた。
そして、これで精神が安定したらDMも少しは減るのでは、という淡い期待を抱いた。

それに、小さなアクセサリーなら普通の封筒に入れて簡単に送れる。

私は彼にアクセサリーを送ることにした。
但し、封筒には送り主である自分の住所は警戒して書かなかった。


それは後に、大きな助けとなる。
ある日突然、何の脈略もなくLが「私 の 家 に 住 む こ と 前 提 の 話 し 」をし始めたのだ。

過去に”そのコーヒー、○〇市にお伺いした時にプレゼントしますね。”と言った時の発想そのままだった。
誤解を装い、自分の要求を押し通そうとするのも魔物の特徴ではあるが、あまりに突飛なのは彼が瀕死のスライムだからであろう。

・・・

数日経ち、”ブレスレットが着いたよ〜!”というメールが彼から来た。


その次のメールを見た時、私は目を疑った。


「 ツ イ ー ト し て 来 た ! 」


すぐに抗議したが、そのツイートは消されることはなかった。
自分の正当性を何かの本から引用し、訴えて来た。

”共通のフォロワーさんが居るところで、私が贈ったものに関するツイートをする前に、断ることやお礼を言う事が先なのでは?”という普通のことは一切通じなかった。

そして私が心配した通り、以前私がツイートした天然石と同じ石で作られたブレスレットから、送り主が私であると気づいたフォロワーさんも複数居た。

彼は私の心配を”そんなん誰も気付かん!ストーカーじゃあるまいし”と言いながら、ツイートから5時間後くらいに”仕方ないな”という言葉とともに消した。


とうとう私は彼のメールを無視した。

それでも彼からのメールはずっと連投された。

これ以上メールをしたくないと伝えると、驚くことを言われた。

何の関係もない自分のアカハラの話しを持ち出したのだ。
安定の支離滅裂ぶりではあるが、ここでそれを出すことにとても驚いた。
いくらなんでも、この場合はただの支離滅裂ではないだろう。

それが通用しないとわかると、今度は”僕はあなたの話しを聞いてあげたのに”と言って来た。

即、ラインを遮断した。

想像より遙かに心が軽くなり、気持ちがスッキリした。


越え難い夜を越えた魔物たち〜最終章〜


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