本棚の前に花を挿す
「あなたのイメージだったから」とか「何となく目にとまったから」と添えられて、思い出したように花を一輪いただくことがときどきある。
その都度、家にあるありあわせの瓶に挿すのがしのびなくて、ずっと花瓶を探していた。
私の部屋に合うデザインで、いろんなお花に似合いそうで。あまり場所をとらなくて、でもいつも目に入るところに置けるようなもの。そして、机に積んでいる本がなだれてしまっても恐ろしい思いをしなくてもいい花瓶……。
そんな、わがままだらけの理想を掲げながら探してずいぶん日が経ったけれど、ついにこれだというものをみつけた。
それが、WEST VILLAGE TOKYOの「BRANCH TUBE VASE」。
はじめて見たとき、製本で使っているクランプに似てる! と親近感がわいて、そのたたずまいの端正さにうっとりした。
この花瓶は真鍮の端金(調べたら、クランプの一種らしい)を、縦横好きな向きで固定して、輪っかのところにガラスのチューブをさして使う。端金同士を連結させたり、専用のスタンドと組み合わせてと、アレンジできるのも嬉しい。一輪挿し1つ、3つセット、専用スタンドが販売されていて、今回はまず一輪挿しをひとつだけ買うことにした。
シンプルなパッケージがまたいい。
説明書を見ながら、BRANCH TUBE VASEを取り付けた。どの向きにしようかなあとあれこれ試してみたけれど、いまのところこの位置がいちばんしっくりくる。
机の上についた本棚、その真ん中の列に端金をぎゅっとはさんだ。
ここだと、ちょうどパソコンの画面の上に来て、ふと見上げると花が目に入って、気持ちがはなやぐ。
本を取り出すときは外せばいいし、花を生けていないときも、目に入ってもじゃまにならないデザインだから気持ちがいい。
いそいそと花を買って帰る道すがらや、ぼんやりと見つめた先につやつやと水を含んだ花びらがほころんでいるとき、何でもない一瞬がうるおうような心地がする。
部屋にお気に入りの花瓶がひとつあると、ちょっと心地がいい。気持ちがささくれたときも、一輪の花がそっとやわらげてくれる。花を愛でるのは素敵なことだな、と思う。
一年くらいかけて探した花瓶は、いつもしんと本棚に寄り添っている。
ああ私、いままで気づいていなかったけれど、お花がすきなんだな。なんて思いながら、今日も一輪、花を挿した。
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