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#エッセイ

すきだった、なんて言ってあげないよという呪いの話

すきだった、なんて言ってあげないよという呪いの話

それはたとえば、幼い頃に読んだ絵本であったり、高校生のときに友達と貸し借りした文庫本のことを記憶の中から取り出そうとするとき。いまよりも前のことを思い出しながら、私の口はしばしば、きちんと時間の経過を汲み取って動く。こんなふうに。

「あの頃、好きだったんだよね」って。

ただ「むかし」のことを話しているときは、べつだんなんとも思わない。でも中には、自分の声を耳にした一瞬のちに、はっと胸を押される

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私と、降り積もる彼女たちのこと

私と、降り積もる彼女たちのこと

いままでに読んできた本をふたたび手にするとき、私はきまって、あなたの姿を見つける。

その一冊を読んだ季節のにおい、日の陰り、部屋の明かりの白さ。本を読みながら迎えた朝の、窓の外で始発の電車が走る音。通学路や教室の片隅、あるいは暖房のきいたバスの籠もった空気が肌に触れる感触。
一冊の物語をふたたび訪うと、そうした思い出の欠片が、ほんのすこし香って、文字の間に溶けていく。そのとき一瞬垣間見えるあなた

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