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七色メガネと日本語の秘密

需要と言葉

需要は不足から生まれる。不足は認識から生まれる。そして認識は、言葉によって喚起される。
キリストは、汝に原罪ありと言われた。その時より、人々の中には救済への祈りが生まれ、救いへの需要が発生した。

個人の価値観で

個人の価値観で、相手を否定してはならない。けれども、道徳に基づいて相手を否定することは許される。
道徳もまた一つの価値観であるが、多くの人々はそれに気付いておらず、道徳を法のように崇めている。

みんなで考えた

いかに相手の考えが優れていようと、それに劣る自らの意見を、「みんなで考えた」という言葉で補強すれば、貴方は相手に勝つことができる。
人は一人では完璧足り得ない、という道徳を盾にした数の暴力は、思考においても有効である。

幸福を願う

相手が全体の幸福を謳って行動している時、あなたは相手に対して、あなた個人の幸福のためだけの要求を述べることができる。
全体の幸福とは個人の幸福を束ねて成立するものでは無いが、さりとて個人の幸福を無視することは出来ない。

可能性

可能性と言う言葉は、使用に当たってその実現確率を何ら加味せず、無制限に口にして良いものである。
なぜなら可能性という言葉は、達成の芽が少なからずあることを保証する言葉であると同時に、達成の芽が無いものに達成の芽を萌芽させるための言葉でもあるから。

個性と差別

差別の無いところに個性は生まれず、個性の無いところに差別は生まれない。
厨房に並ぶシェフの中の一人に対して、料理が上手いですねとは誰も言わない。個性とは、その環境における他者との差異に名付けられる特性である。それならば、個性が肯定された瞬間、差別の発生もまた必然である。

人生は一度きりという詭弁

人生は一度きり。その言葉は、行動を躊躇う多くの人の背中を押す魔法の言葉である。
しかしそれが詭弁であると、その言葉を口にする貴方は承知していなければならない。それは、相手の枷を外す言葉だ。枷とは、安全の希求、未来への志向、そしてあらゆる欲望に対する蓋である。その言葉は、消費行動を肯定するとともに、隣人に対する強姦をもまた肯定する。

納得する

納得したと人が口にする時、あたかもそれは論理的な判断の元に下された結論のように聞こえる。
けれども納得は、決して論理になど根差さない。納得をもたらすのはその人の理性である。その人の理性を形作るのは、その人の価値観である。だから納得は、論理ではなく価値観から生まれるものである。

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