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超思いつき1場面物語*あと数十cmがもどかしいから手をのばすんだと思う*


「どうして、そんな遠いとこから手を伸ばすのよ?」

彼女は不思議そうにそう言った。
赤いミトン型の手袋が大人にしては小さな手にハマって笑っている。

「最初から近いと、あっという間にクライマックスになっちゃう気がしない?」

私は可愛げのない紺色の手袋の中にある自分の手をギュッと握る。
そうするとギュッと握り返してくれる。

あったかい。小さい。
しびれるような感覚が生まれる。

「なにそれ、へんなの〜」

うふふと笑う彼女の柔らかな髪が肩辺りで揺れるのを、私はココロのカメラでシャッターをきって保存していく。
秘密のフォルダは彼女1色。
頭の中を覗く技術が発展していなくて、本当に良かったと思う。

「あ、ねぇねぇ!私行きたいお店あるの!」

「いいよ、どこ?何買うの?」

彼女の小柄で華奢な体が楽しそうに揺れるのを、本日何度目になるだろうフォルダ保存しながら私は微笑んだ。

「あのね、ネクタイピン!買おうと思うの!」

ネクタイピン。ネクタイピン。ネクタイピン
頭の中に一瞬で浮かんだ奴の顔を秒で消す。

「プレゼント?ラブラブだねぇ??」

ニヤニヤと笑って見せれば

「ちがうよっ、ちがわないけどっ!」

と彼女は無邪気な笑顔を見せてくれる。
あーあ。今すぐに、ぶち壊してぇ…。
そう、物騒な言葉を脳内に響かせながら、私は握る手に少し力を込める。

「ん?どうしたの?」

ほんの少しだけ力の入った手に、すぐに気づいてくれる彼女が好きだ。

「寒くってさ…」

適当な理由でいい。
彼女は知らなくていい。
なんなら1ミリだって気づかれたくない。

「かわいそうに!ぎゅってしてあげる!」

そう言うと、彼女はひらりと手を抜けて、正面に立って私をハグした。
別に、ここは部屋じゃない。なんなら、人がそこそこ通る道だ。

「こらこら!有難う。でも、ほら、人の邪魔になるから、ね?」

そんな彼女をふわっと、触れるか触れないかで抱きしめながら、優しく諭す。

「んふふ。温かくなった?」

彼女は楽しそうに私を見つめた。
あー、可愛い。

友達だから。
私は彼女の親友だから。

彼女は無防備に私と距離を詰める。
自分と同じ性別の身体だから
彼女は街なかでもハグをする。

これが奴相手なら…
きっと恥ずかしいって言うんだ。
照れて頬を赤らめて…。

そんなの悔しい。
悔しいじゃない。


だから、せめて、私から手を伸ばすときは、少し離れた位置から。
この、気づかれることない焦がれる気持ちと一緒に。

何も言わない私に、彼女は少し不安そうな顔をした。
気をつけないと真顔になっちゃう。
私は私のできる限りの優しい顔をした。

「かっこいいネクタイピン。あるといいね」

そう言えば、彼女はたちまち花が咲いたような笑顔を見せた。彼女のフォルダは奴1色。

「うんっ!」

そうして、私達の手つなぎショッピングデートは再開された。 


あと、数十cmの距離ってもどかしいよねぇーとか思って降って湧いたのが

百合

だった。
私、漫画でも何でもノマカプが好きなので(別にリアルの同性愛駄目とかじゃない。腐な話も好き。好きな人がいるって性別関係なく素敵)あんまり、こういうの書かないけど、今回は同性かなって。

これ、異性にするともっと距離あけなきゃだから……それも変な話だよね。
愛の大きさとか想いとか、肉体関係ないのにね。

恋愛に限らず、友情もそうで、肉体関係なく仲良くしてたくても、周りはそうはいかないこと多い。

肉体両方あればいいのにね。
女も男も使えればいいのにね。

なーんて。

おい、クリスマスイブやぞ?!
って朝からクリスマス気分なんて吹っ飛んでるkoedananafusiでした。

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