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幸せしろくま夜星さんぽ 【一分マガジン】

ある街の動物園に真っ白なしろくまがいました。

ある日 帽子をかぶった男爵がしろくまの前で足を止め 呟きます。”あの人の声が聞きたいな”
するとしろくまが言いました。”糸電話を空高くに投げるといいよ”
男爵は手をポンと叩き 足早に去っていきました。

次の日 マフラーを巻いた女性がしろくまの前で足を止め 呟きます。”何も書いていない恋文なんて…”
するとしろくまが言いました。”書ききれない想いが詰まっているんだよ”
女性は頬を染め 嬉しそうに微笑みました。

またある日 水色の傘を差し 鶏を抱えた少年がしろくまの前で足を止め 鶏を見て呟きます。”お前も歩ければな”
するとしろくまが言いました。”3歩歩いて君を忘れたくないんだよ” 
少年はじっと鶏を見つめ そっと鶏を抱きしめました。


ある日 しろくまがぽつりと呟きます。
”夜の散歩に行きたいな”

それを聞いた男爵が帽子を、女性がマフラーを、少年が水色の傘をそれぞれしろくまにそっと手渡し ”行っておいで”と扉を開けて言いました。
しろくまは帽子をかぶり マフラーを巻き 傘を風に乗せ 満面の笑みで夜空に飛び立ち 星々を集めました。


これからも 皆に幸せの星を配るために。








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