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六車奈々、会心の一撃!

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タレント・女優の六車奈々によるエッセイ集。子育てをしながら働く、ハプニングと全力投球な日常をエッセイでお伝えします。
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#子供

お花を摘みにきたの

私はこう見えて、花が好きだ。 といっても花の名前に詳しいわけでも、花を上手に生けられるわけでもない。ただ気に入った花を買っては、お気に入りの花瓶に飾る程度だが、それでも独身の頃から部屋に花を欠かしたことは無かった。 今の時代、ブリザードフラワーやハーバリウムなど、手をかけなくても生き生きとした美しい花を飾ることはできるが、私はやっぱり生花が一番好きである。 毎日水をかえないといけないが、手間をかけるからこそ愛情が湧く。 いつかは枯れてしまうが、だからこそ命あるものは美しい

ノーメイクの悲劇

私は普段、どすっぴんである。 メイクをするのは仕事する時、人に会う時くらいで、基本的には すっぴんの方が多い。 その日、私は実家でダラけていた。だるだるの家着に、どすっぴん。 仕事柄、人前ではきちんとしないといけないので、家にいる時くらいは 思いきり緩みたい。おやつを食べて、テレビを見て、幸せのユルユル時間を過ごしていると、突然『ピンポーン』と鳴った。 誰だ?玄関を見てみると、宅配便だった。すっぴんだし、 だるだるの家着だし、どうしよう。 30歳当時の私は、関西で色々な番

ビジネスクラスの蟻地獄

仕事で飛行機に乗ることはよくあるが、 ビジネスクラスに乗せてもらうことはなかなか無い。 ところが私は23歳のとき、海外ロケで人生初のビジネスクラスに 乗せてもらった。理由は『タレントさんだから』という太っ腹なもの。 あぁ、神さまありがとう! 私は特別待遇に感謝をし、機内へと乗り込んだ。    「機内食、楽しみ〜!」 ワクワクしながら窓側の席に腰をおろすと、さすがはビジネスクラス。 シートがゆったりしているではないですか。 贅沢気分を満喫していると、 「お。ワシ、奈々ちゃんの

偕老同穴

タミちゃん。 父の母、つまり私にとって父方の祖母の名前である。 漢字で書くと『多美』。多く美しいとは、なかなか厚かましい名前だ。 しかしタミちゃんに言わせると、若い頃はかなり美人だったそうだ。 だから本人曰く、『多美』に名前負けはしていない。 タミちゃんは、お見合い結婚だった。親どうしが決めた相手と、 お見合いで一度会っただけで結婚が決まった。 2回目に会ったのが、結婚式当日。 会場でどの人がお婿さんなのか、顔がわからなかったそうだ。 恋愛期間を経ずに夫婦になった二人

男の甲斐性

新大阪駅の改札を出てすぐにある蕎麦屋。 ここは、女の行きつけの店である。 どれも美味しいが、イチオシはきつねそば。700円だ。 丼を埋め尽くすほど大きな揚げはジュワッと甘く、 関西風のお汁は出汁がきいて、たまらなく美味しい。 その日は、土曜日だった。 旅行客やビジネスマンで満席となった蕎麦屋の店内。 一番奥の席では、いつものように女がきつねそばを食べていたが、 今日は珍しく男と一緒だ。何やら話し込んでいる。 女:このあいだ初デートに誘われて食事に行ったんですけどね、   

キクラゲの白天と人生と私

『キクラゲの白天』を食べたことは、あるだろうか? 『キクラゲの白天』は、魚のすり身にキクラゲを刻んで混ぜ、 揚げ色を付けずに白く仕上げた平たい天ぷらカマボコのこと。 関西では大抵のスーパーで見られるが、関東では見かけたことがない。 醍醐味は何といっても、その食感。 ほんのり甘いすり身の味わいと、キクラゲのコリコリとした食感が、 とにかく絶妙である。 子供のころ、冷蔵庫を開けると『キクラゲの白天』が入っていることが あり、見つけると私のテンションは上がった。 「お母さん、こ

ミーゴレンの悲劇

バリ島へ旅行した時のこと。 到着した日に初めて『ミーゴレン』なるものを食べ、 あまりの美味しさに感動した! 甘からず、辛からず、かといって美味からず。 や~!ダチョウ倶楽部です。 ・・・まあそれはいいか。 とにかく、おいしいのだ。 ミーゴレンとは、簡単に言えばインドネシアの焼きそば。 これがどう美味しいかというと、甘からず、辛からず、かといって美味からず。 や~!ダチョウ倶楽部です。 もうええな。 とにかくミーゴレンは、甘みとスパイシーさと独特の旨味があり、 私はハ

愛のビリーズブートキャンプ

私はどうやら、愛が重い。 自分では全く思わないのだが、自分以外の人が全員口を揃えて言うのだから、 おそらく愛が重いのだろう。 私には好きなタイプなどなく、好きになったらその人がタイプになる。 自分と同じ身長の男性と付き合うと、 『やっぱり男の人は、背が低くなきゃね。 背の高い人なんて威圧感あって絶対にイヤ!』となり、 付き合う相手によって、 『やっぱり男はスポーツ万能じゃなきゃね!』 『やっぱり男は、スポーツより頭脳よね!』 『やっぱり男は、頭脳より発想力よ!』 と、好

接吻馬券

私には、節分の悶えるような思い出がある。 それは2008年の2月3日。 この年は節分が日曜日に当たり、京都競馬場では京都牝馬Sが行われた。 悪天候のおかげで、芝は雨を含んだ重馬場。荒れそうな予感がプンプンする。 穴狙いの私には、俄然楽しみなレースになった。 いつものように穴馬から狙い、命がけの予想。しかし結果は、大ハズレ。 当たっていれば、三連単で68280円の万馬券だった。 でも、こればかりは仕方がない。 私の選んだ馬が来なかったのだから、納得できる・・・ハズだった。

初夢

明け方、トイレに行きたいなぁと思いながらも面倒で寝ているとき、 「夢の中で用を足している」なんて経験は、誰しもあるのではないだろうか? この日、私もまさにそうであった。 冬の寒い朝、暖かい布団から出て、 冷え切ったトイレまで震えながら行くのかと思うと、 なかなか起きられない。 「あぁ、トイレに行きたい。」そう思いながら、ウツラウツラしていた。 夢の中で、私は温泉に入っていた。 「あれ。すごくトイレに行きたい。でもお風呂だし。。。どうしよう。」 私は迷った。 湯船から出て

竹輪物語

レギュラー番組の収録へ行った時のこと。 その日はいつものメイクさんが休みで、ピンチヒッターの人が来ていた。 20代半ばに見える彼女は、顔が隠れるくらい大きなマスクをしている。 夏だぞ。蒸れないのか? 「マスクしてるけど、風邪引いたの?」 思わず聞いてみた。 「実は、こんな仕事をしていながら恥ずかしいのですが、、、。 肌荒れがひどくて、マスクで隠しているのです。」 「え!ちょっと見せてみて。」 マスクを外した彼女のほっぺたは、真っ赤な吹き出物が大量にできていた。 「うわぁ。

ビジネスホテル殺人事件

あれは私が24歳の時のこと。 『原田伸郎のめざせ!パーゴルフ』のロケのため、 ビジネスホテルの一室に前泊していた。 壁の薄い、古いビジネスホテル。部屋も少し薄暗い。 22時をまわっていただろうか? 部屋でゴロゴロしていると、いきなり悲鳴が聞こえた。 『きゃーっ!』 何事だ!? あまりの声に飛び起き上がると、 隣の部屋から女性の泣き声にも似た悲鳴が聞こえてきた。 『イヤーーーっっ!』 大変だ! 私は心臓がバクバクしてきた。 もしかしたら、男に暴力を振るわれているのか

東京さ行くだ

私は京都生まれの京都育ち。仕事もずっと関西でやってきた。 そんな私が2005年、いきなり昼ドラ『病院へ行こう!』の主役に抜擢され、 慌ただしく上京することとなった。 ずっと芝居をしたかったわけだから、昼ドラが決まったことは、心底嬉しい。 しかし、生粋の関西人がいきなり東京で一人暮らしを始めることには、 大きな不安があった。 『東京の人はよ、人の心を持たねぇ。若いねーちゃん騙くらかして、 とんでもねぇ所に売り飛ばすんだとよ。』なんてことは思わないが、 これまでオーディション

時は金なり

不平等なことの方が多い世の中だが、1つだけ平等なことがある。 それは時間だ。 1日は24時間。早送りも巻き戻しもできない。 これだけは、全ての人に平等に与えられている。 しかし、そんな当たり前のこと、 日常生活の中で考えることなどあるだろうか? 例えば、明日が誕生日だとしたら、何を思う? その夜、私は娘とベッドの中で話をしていた。 「明日の朝起きたら、三歳だね。」 「三歳の次は?」 「四歳だよ。」 「その次は?」 「五歳。」 「その次は?」 「六歳、七歳、八歳、、、、」