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「いつか」が「いつか」じゃなくなった運動会。

この10月、私は人生で初めての感覚を味わった。

それは、我が家の6歳の双子姉妹の運動会でのことだった。
ただただ真っすぐに前を見て目の前を走り抜ける子どもたちの姿を、私は数年前の自分に見せてあげたいと思った。

我が家の双子は繊細な気質だと思う。慣れない環境に不安を覚えるようで(私もよく分かる)幼稚園の年少さんの時は、他のお友達が段々母から離れて教室にすっと向かう中、ついぞ年少さんの1年間、我が子たちは毎朝母から離れられず泣き通した。

双子に引っ付かれてギャン泣きされ続ける、困った私。冷静に考えれば「私も母から離れられない子だったしなあ」とか「慣れない環境は大人でも不安だろうよ」と思えた気もするけど、毎朝繰り広がられるギャン泣き騒ぎに「どうしてうちばっかりこうなんだろう…」と、私はひどく落ち込んだ。
いつも精一杯で余裕がない自分の関わり方が悪かったのだと悩み、度々子育て相談に電話をかけた。

そんな我が子たちが、幼稚園最後の運動会でリレーの選手になった。
足は特段早い方ではないと思うのだけど、ひょっとしたら、消極的な我が子たちに先生が自信をつけるために用意してくれた舞台だったかもしれない。

双子はそれぞれ、赤チームと白チーム。バトンをもらう順番は同じ。
つまり、2人はライバルになった。
「どっちも勝ってほしい」という勝手な思いを抱きながら、私は何かを祈るようにリレーを見守った。

いよいよ双子たちに赤と白のバトンが渡った。
同じくらいのタイムでバトンを受けとって、それぞれが颯爽と走り出した。
私は想いが溢れて、もはやちょっと泣きながら「がんばれー!」とどちらにも声援を送った。

私の目の前を、双子がぴゅんっと駆けていった。
全く私の存在に気付いていないようだった。
あんなに私から離れられなかった子どもたちが、ただただ前だけを見て、ただただバトンをつなぐために走っていた。

私はその光景を見て、ちょっと寂しくもあり、でもやっぱりものすごく嬉しかった。いや、「嬉しかった」ともちょっと違う気がしている。
何というかこれまでの育児の大変さとか、自分への不甲斐なさとか、そのようなものが一気に昇華されたような感覚が1番大きかった。

人の成長ってすごい。そう思うと同時に、悟ったことがあった。

自分の睡眠時間がなさ過ぎてしんどくて、「早く大きくなってほしい」「いつか大きくなる」と毎日のように思っていた頃は、その目には見えない「いつか」が、果てしなく遠くにあるような気がしていた。

でも、私は気づいてしまった。薄々気づいてはいたことが、リアルに胸に迫ってくるような感じに。
その「いつか」は、想像していたよりもきっとあっという間に来てしまうであろうことを。

「だから、今が大事なんだ」

すとんと腑に落ちたその想いが、私の中でじんわり広がっていった。
ふと見上げると、心地よい秋空が広がっていた。切ないほど澄み切っていた今日のこの空を、私は忘れたくないと思った。



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