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保健師でキャリアデザインについて考えてみた話【保健師伴走活動】

こんにちは。ななと申します。
育休中の保健師で、現在グラフィックレコーディング(グラレコ)で保健師に伴走する活動をしています。

今回は、3月初旬に保健師オンラインコミュニティONE DOORにて行ったキャリアデザイン研究会の振り返りをし、今後の活動について考えてみました。

結論:保健師のキャリアデザインには言語化が必要そうだから、それに伴走したい。よし、グラレコ×コーチング始めるぞぉ〜!

です。それでは、ご覧ください。

目指すは、キャリメイゴ脱却(キャリア迷子脱却)!

Twitter保健師界隈では、キャリア迷子のことをキャリメイゴと呼ぶらしいのです。(ONEDOOR主宰者川岡さんが名付けたらしい)

キャリメイゴの明確な定義がなさそうだったので、Twitterでキャリメイゴに触れている呟きを遡りながら、「キャリメイゴとは」を言語化してみました。

・現状に対して、「このままで良いのかな」と漠然とした不安があり、行動したいけど何をすれば良いかわからない
・スキルや学びたいことはあり、仕事への意識は高いけど、それを将来のキャリア形成にどう生かせば良いかわからない。

キャリメイゴの定義

そんな保健師や、保健師を志す学生のライフ・キャリアの現在地や大切にしたいことを確認して、将来のキャリア形成への不安を軽減したい。

キャリメイゴ脱却のお助けになりたい。

そんな目的で「キャリアデザイン研究会」を企画しようと思いました。

そして、看護師からヘルスビッグデータを扱う民間企業に就職して、実際に素敵なキャリアデザインをされているBenzeneさんにもお話いただこうということになりました。

川岡さんが作ってくれた、かっちょいい告知画像

どうやってキャリメイゴ脱却する?

(1)そもそも、なんで保健師はキャリメイゴに陥るんだろう?

今回企画するにあたっては、「なんで保健師はキャリメイゴになるんだろう」の深掘りから始めました。

何人かの保健師さんにヒアリングして、私なりに整理してみた結果がこちらです。

なぜ保健師はキャリメイゴになるのか

1.仕事をしている中で感じるもやもや
1)自分の仕事の成果がわかりづらい

保健師は、基本的に予防的に関わるため、自分のやったことの効果が実感しにくいと思います。
また、行政保健師の場合は人事異動があるため、介入の効果がわかる前に異動してしまうこともあり、自分の仕事の成果を感じづらいと考えられます。

2)役割がわかりづらい、他者に説明しづらい
自分の仕事の成果が感じられないので、保健師の役割について問われた時に胸を張って答えられません。
また、非常に多岐にわたることをやっているので、簡潔に答えにくいです。
そのため、他の人に「保健師って何やってるの?」と聞かれると、言葉に詰まってしまうし、頑張って答えてもなんだか微妙な反応をされる機会が少なくありません。

3)保健師だけじゃどうにもならない
長年仕事をしていると、保健師だけで解決できる問題やケースがほとんどないことに気づきます。
今は、地域に出ている専門職は保健師以外にもたくさんあるし、他職種のお力をお借りする機会はめちゃめちゃ多いです。
その際、他職種のスキルが輝いて見え、それと比較して「保健師ってなんなんだろう」ともやもやすることもあります。


2.根本には人材育成の課題が隠れている
1)スキル伝承の曖昧性

看護師のように「採血」「清拭」など、わかりやすい技術が保健師には少ない気がします。
また、個々の先輩方が思っている「保健師とはこうあるべき」が少しずつ違っていたりして、なかなかうまくスキル伝承がされていない状況があると思います。

2)人事異動
行政保健師の場合、人事異動があります。
個別にヒアリングはあるものの、個々の希望やスキルに応じた異動になっているかというと疑問。
新たな場での仕事はさらなるスキルの開拓にもつながる一方で、本人に腹落ちしないままだとモチベーションの低下にも繋がると思います。

3)自己分析の機会のなさ
業務が多忙がゆえ、なかなか自分の活動を振り返ったり、自分の強みを分析する機会がありません。
「自分はどんな保健師になりたいのか」、ビジョンがしっかり立てられていないがために、行き詰まり感を感じてしまうのかもしれません。


3.新たなキャリアを構築しようにも2つの壁があらわれる
1)専門性の壁
良い意味でも悪い意味でも、看護職という専門性の存在感は大きいです。
何か新しいキャリアを模索しようにも、学生時代から看護に染まりきっている私たちは、民間企業の業種などよくわからず、転職を考えようにも、看護職の枠から出ることのハードルは高いと考えられます。

2)安定の壁

行政保健師の場合、公務員という安定した立場を捨ててまで、次のキャリアに踏み出すのは相当勇気が求められます。
なんだかんだ言っても安定感は居心地良く、「それを捨ててまでしてしたいこと」がなかなか見つけられないです。


このようなもやもやを繰り返し、「保健師、面白いこともあるんだけど、なんだかなぁ…」とキャリメイゴになっていくのでは?と考えました。

(2)壁を取っ払って考え、アイディアを具体化してみよう!

上記キャリメイゴ要因を、スタンフォード式人生デザイン講座の演習と突き合わせてワークを設計しました。

スタンフォード式人生デザイン講座は、私がこのキャリアデザイン研究会をやりたいと思ったきっかけの本。
仕事・転職・生活などの人生の「行き詰まり」をデザイン思考で解決しちゃおう!という趣旨の名著です。

この本の中から、二つの演習をやってみることにしました。

1.自分の仕事観、人生観の深掘り
事前課題として、参加者には下記のワークをお願いしました。

キャリアデザイン研究会の事前課題


本では、「人間性」「考え方」「行動」が一貫した人生を送るためには、「人生のコンパスづくり」が必要だと書かれています。

人生のコンパスづくりに必要なのは、「仕事観」「人生観」の棚卸し。

まずは、保健師という枠さえも取っ払って、「仕事」をどのように捉えているのか、「人生」をどのように捉えているのか、それをじっくり振り返って言語化するワークをやってみることにしました。


 2.今後5年間の人生プランを3通り考えてみよう

今後5年間を考えた人生プランで
①現状の希望
②プラン①が突然ダメになった場合のプラン
③お金や世間体を無視するとした場合の仕事や人生
の3通りのプランを作ってもらうことにしました。

このワークは、いろいろな可能性に心を開き続け、より斬新なアイデアを受け入れたり、考えたりできることをねらいとしています。

「看護職の壁」「安定の壁」を越えて考えることで、「自分のやりたいことの可能性」を実感できると良いなと思い、このワークを設定しました。

あれ?もしかしたら、キャリメイゴも良いかもしれない…!

会全体の内容や参加者の反応から、浮かび上がったキーワードは「言語化」「点と点を増やす、大きくする、つなぐ」「積極的にキャリメイゴ」の3つです。

(1)言語化は納得感につながる

終了後の参加者の皆さんから、「感じていたもやもやが言語化できてスッキリした」、「自分の夢を語ることは、自分の職場では出来なかったので、言語化できる良い機会になった」と感想をいただきました。

このことから、一度言語化してみることで考えが整理され、「納得感」が生まれるのではと思いました。

「あぁ、私はこの部分にもやもやしていたのか」という、もやもやの解像度が上がって得られる納得感。
「キャリアは停滞していたけど、ライフを優先したい時期だった」という、ライフ・キャリアバランスを俯瞰して感じる納得感。
結果的に現状のキャリアを続行するとなったとしても、「自分にはいろんな可能性がある中で、今はこれを選んでやっている」という自己決定していることに気づく納得感。

これらは言語化によって促され、あるのとないのとでは、その後のモチベーションに大きく関わってくる気がします。

納得感を感じられるキャリア形成には、思いの言語化が必要なのだと改めて実感しました。

(2)点と点を増やす、大きくする、つなぐ

これは、Benzeneさんが紹介したスティーヴ・ジョブズの言葉から出てきた名言。
私も「本当にそうだよな」と首がもげるほどうなづきながら聞いていました。

「繰り返しですが、
将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。
できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。
だから、我々はいまやっていることが
いずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない。
運命、カルマ…、何にせよ我々は何かを信じないとやっていけないのです。
私はこのやり方で後悔したことはありません。
むしろ、今になって大きな差をもたらしてくれたと思います。」

スタンフォード大学でのスティーヴ・ジョブズの祝辞

有名な「connecting the dots」のお話をもとに、Benzeneさんは加えて「点を増やすこと」「点を大きくすること」の重要性もお話してくれました。

点を増やしているからこそ、後からのConnectingが実現する。
取捨選択したうえで、点を成長させていくことで可能性は大きくなる。

参加者のアンケートを見ても、この話のインパクトはものすごく大きかったです。
私も、自身の経験を振り返るととても共通することが多かったので、めちゃくちゃ響きました。

(3)積極的にキャリメイゴしよう!

これも、Benzeneさんのお言葉。

偶然から生まれるものや過激なコラボレーションを楽しみましょう!!
そうすることで将来のキャリアの道筋は、おのずと後からついてくる気がします。
積極的に意図的にキャリメイゴしましょう。

Benzeneさんのお話

自分が心から楽しめるキャリアを模索し続けるのって、良いじゃない!
今までネガティブなイメージとして使われていた「キャリメイゴ」でしたが、むしろ積極的にキャリメイゴを楽しむことで、いろんな人生の可能性が広がるのかもしれません。

そして、Benzeneさんが話すからこその説得力!

さらに、ワークで自分の考えた人生プランを話す皆さんの明るい顔を見て、この言葉に非常に実感を覚えました。

積極的キャリメイゴの伴走にグラレコは役立てないだろうか?

当初、「キャリメイゴ脱却」をテーマに企画していた本研究会。

しかし、実際に蓋を開けてみたら、ポジティブにキャリアを模索することって、むしろ良いんじゃないかと気付けました。

この気づきをもとに、ポジティブキャリメイゴが、点を増やしたり、大きくしたり、点を繋いでいく過程で、自分の思いや活動の振り返りを引き出してくれる、そんな伴走者っていいんじゃない?私、やってみたい!という考えに至りました。

グラレコを始めた当初から、グラレコ×コーチングの勉強をしたいと思っていた私。

グラレコ×コーチングは、傾聴しながら可視化することで、よりイメージが膨らみ、未来を可視化したり、本人も気がつかなかった想いや強みに気がつくことができます。

本園大介:グラレコ×コーチング-未来を可視化して“ありたい姿”を導き出す-

言語化されたものを可視化することによって、自分の過去や今の活動がキャリア像にどう繋がっていて、今後の理想にどう繋げていくのか、考えが整理されていくので、このポジティブキャリメイゴの伴走と親和性が高いのでは?と改めて思いました。

ということで、4月から「保健師のキャリアのためのグラレコ×コーチング」の試行を始めております。
ありがたいことに何名かモニターやってもいいよという方が集まってくださって、4〜5月はグラレコ×コーチング強化月間にする予定です。

またその結果も、noteで書き綴っていきたいなと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。