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#物語

深夜宅配、後

深夜宅配、後



 荒木は腕組みしながら封筒を睨み付ける。
一体何を送ってきたのだろうか。蛍光灯に透かしてみるが、見えるはずもない。

中を確認しよう。いや、しかし…。
手をかけては辞め、を繰り返した。

 わざわざこの時間を指定し直接手に取らせたのは、別れる決定的な物を送ってきたからではないだろうか。そう思うと中々開ける覚悟が決まらない。
 一緒に暮らしている頃は何かと仕事を優先しては、よく怒られたものだっ

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深夜宅配、前

深夜宅配、前

 インターホンが鳴った。
 既に日付を越えてから二時間は過ぎている。こんな時間に誰が来たのかと怪訝な顔で画面を覗きこんだ。

 そこにはにっこりと笑みを浮かべる見知らぬ男が立っていた。
 …部屋を間違えたのか。踵を返しソファーにどかりと腰をおろす。

 もう一度チャイムが鳴った。画面の中の男は、相変わらず笑みを絶やさずに立っている。
 間違いに気づいていないのだろうか。どちらにせよ、このままチャイ

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余命宣告を受けた

余命宣告を受けた

【12.06 12:30】
余命宣告を受けた。それも医者からではない。
帽子を目深にかぶり、ロングコートを羽織った黒尽くめの男は「死神」だと名乗った。

僕は路地裏で煙草をふかしていた。禁煙の看板を掲げた世の中では肩身の狭い思いをする。檻みたいな場所で他人の息づかいを一緒に吸うのはこりごりで、こうして路地裏に避難するのが日課だ。

ぼんやり空を見上げていると、突然肩を叩かれた。振り返ると男が

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