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管理職をなくすと何がおこるか ~日経新聞連動企画 #管理職は必要ですか


#日経COMEMO の日経新聞連動企画「 #管理職は必要ですか 」というお題について、実際体験した「管理職が(ほぼ)いない状態」を書こうと思う。30人くらいの事業部で、本来4-5名の管理職のポストがあったのだが、とある事情があり、ある管理職の枠は空席になり、ほかは全く別組織の仕事を9割近くやったり、という状況が一年くらいあった。もともといた管理職がいなくなったとき、どのようなことが起こったのか。

結論から言うと、業務は止まるわけではない。しかしあきらかに機能不全に陥る。この時の体験を経て、自分が組織の長になってからは、管理職の空きを作らないことを最優先にするようになった。


「それ聞いてないんですけど」という案件の爆増

管理職がいないと、商品開発やITの仕様変更、費用予算の配分など、他の組織で決まったことや、会社全体の方針が現場にタイムリーに通知されなくなる。他の部門の担当者から聞かされるというやつだ。優秀な人は自分から情報を取りにいくが、普通の人は与えられた情報の範囲内で動くので、しばらく微妙にずれたことをやり続けていたりする。後になって情報が降りてきて、突然混乱するというのもよくある光景だ。仕事が遅れるだけならまだしも、余計なコストがかかったりする。そのコストを減らす交渉で更に仕事が増えるというバッドサイクルに陥る。

物事がなかなか決まらない

会議で議論して自然に合意形成が出来ればいいが、管理職がいないとまとまらないことはよくあることだ。議論は拡散は簡単だが、絞り込みは難しい。有能なマネージャーがいれば絞り込みモードで場を仕切って、次のアクションに落とし込むことができるが、いない場合は「この場は誰が仕切るのか」と参加者全員がお互いの様子を伺いながら、意見をテーブルに乗せたままで時間切れになってしまうことが多い。「場を仕切る=責任をもつ」という固定概念がある人もいるし、若手からしてみれば年齢が上の人がいる場で自分が仕切るのは失礼だと思う人もいるだろう。自分の職務でないのに勝手に場を仕切ったら評価が下がると思い込んでる人すらいる。こういう無駄な間合いの読み合いをしていて時間を無駄に消費するだけならまだしも、「〇〇さんが決めてくれないから動けない」などという発言が出てくるようになると、人間関係もギスギスしてくるようになる。

善意で仕事を拾う人に業務が集中してしまう

そんななかでも、組織や周りのために、放置されてる仕事を拾ってくれたり、調整を買って出てくれる人がいる。責任感が強い善意の人だ。そういう人はそもそも仕事もできるので、周りはその人に頼り始めてしまう。結果としてその人に仕事が集中する。それが長期化すると、体力の限界を超えてバーンアウトしたり、さすがの善意の人でも理不尽さにイライラしたりして、ある時ストレスで爆発したりする。

さらにそこまで頑張っても評価者がそれを見ていなければ人事評価に反映されない。年次評価で会社が認めてくれていなかった、と思い知ると退職につながることもある。その結果、調整役ができる優秀な人が減り、なおさら組織のアウトプットが落ちることになる。

管理職がいてもこういう状態になっていたら

これが「管理職がいない時」の観察結果だが、自分の周りでは管理職がいてもこうなってる、と思った人もいるのではないだろうか。

実は管理職の仕事として何が求められているか、という認識は、人によってかなりバラツキがある。管理職の役割を知らずに管理職になる人もいるし、わかってない人を昇格させる会社も多い。そもそも場を仕切るような性格でなかったり、他人を観察する習慣がない人を、ただの年功や、離職防止のために管理職にしたりする。チームとして結果を出すことより、自分が個として有能な事を証明するのが最優先な人を管理職にすると、部下には地獄になるかもしれない。「立場が人を作る」という固定概念のもとに、こういう事がまかり通っている。

リモートワークが増えて、余計に管理職の存在意義が問われる世の中になってきた。そもそも管理職に求める期待役割は何か、それに対して、その人の適性があっているか、ますます厳格に見極める必要があると思う。それを怠ると、離職者が増えたり人間関係のトラブルが発生してリカバリーに多大な時間を要する。まずは、役割に見合う人を着任させること。そうでない人には別の役割に変わってもらうこと。それがスタートだと思う。



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