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バージョンアップボロ屋へのお引っ越し

私が小学校に上がる頃。

隣の家に引っ越した。

隣には3歳の時に引っ越して来て仲良くなった、幼馴染の慎ちゃん家族が住んでいたのだが、同じ敷地内に二階建ての家を新築し、晴れてボロ屋を脱出したのであった。ボロ屋仲間だったのに裏切った上、隣で見せびらかすかのように新築ライフを満喫していた慎ちゃん家族であった。(被害妄想)

同じタイプのボロ屋とはいえ、こちらには8畳ほどのプレハブが付いており、お風呂へも部屋から行ける!

私は幼稚園年長さんから、ピアノが無いのにピアノを習い始めた。

隣のバージョンアップボロ屋に引っ越すにあたり、なんとピアノ(中古・10万円也)を購入してくれた両親。

ピアノはもちろんプレハブ小屋へ設置。学習机も置き、当然ここが私の部屋となった。

小学1年生。初めて持った自分の城は、夏はジャングルの植物が生えてきそうなほど暑く、冬は床から霜柱が立ち上がって来そうなほど寒かった。

そして、前ボロ屋の風呂場を連想させるかのように、鍵が無かった。

母屋から、オシャレに言えばウッドデッキ・昭和風に言えば濡れ縁に出てからプレハブに入るシステムだったので、夜、母屋の雨戸を閉めてしまったら、もし盗賊がプレハブに入り込んでいても気付けない。

幸いそんなことは一度も起きなかったが。


先に述べたようにプレハブは、エアーコントロールが難しい部屋だったので、実際私がそこで過ごすのは夕方、ピアノの練習をする時くらいだった。

と言っても練習しているていで、サボっていることが悟られないように、時々ポロンポロンと鍵盤を弾いてはいるが、実際は親戚のお姉さんにもらったお下がりの大人向け漫画をひっそり読んだり、冬は石油ストーブの上で焼いてはいけないものを焼いて食べることにハマったりと、マニアックな独り時間を堪能していた。


そんなボロ屋に遊びに来ると、「なっちゃんち面白い」と気にいる友達。「なっちゃんち、すごいボロ屋なんだよ」と陰口を言う友達と二手に分かれた。

歳下の従兄弟には「貧乏暮らし」と家にアダ名を付けられた。

二階建てに住む慎ちゃんや、セレブ風な友達をよだれが出るほど羨ましく思っていたが、やっていることは、実はこちとらセレブに負けてはいなかった(!?)

ピアノは弾くは、旅行はするは、時々フレンチのフルコースを食べるは、クラシックコンサートには行くはetc…。

本当に謎である。

貧しいはずなのに、貧しい思いをしたことはほとんど無い。

でもボロ屋に住んでいるんだし、義行の仕事は安定していないようだし、能里は無職なんだしと、レストランに行っても勝手に気を使い、一番安いメニューをチョイスしていた健気な私。

しかもその頃肥満児だった私。

実は隠れ金持ちだったのか!?と思いきや、義行亡くなり通帳開いて愕然の、やっぱり貧乏!!

それでも使えばお金は回って行くと教えてもらった気がして、今私それを、金を出し惜しむ癖のある夫に伝えたい。(笑)


そして今私は、自分が住んでいたタイプの木造借家を見ると、未だ親しみと興奮を覚える。

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本当は生活感のある借家を撮りたいのだが、なかなか勇気がいるし難しい。

中に入ってみたい!六畳四畳半なのだろうか?きっと昭和の香りプンプングッズとかお宝も置いてありそうだよね!

と鼻息荒く思いを巡らせる。

そして撮って良さそうなお家は、スマホのカメラに収めたりして、独り微笑んでいるのだ。

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私が住んでいたタイプのボロ屋リノベーションカフェ。こちらで働いています。しあわせ〜〜。

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