私の英検利用法
これは教室のおうちの方々から「英検とは」とお尋ねがあったので、シェアするために書いてみました。もし「英検とは」と思う方がおられましたら、「こういう考え方もある」という感じでご覧ください。
私は英検準1級を持っています。1級は?と聞かれますが、私にとって1級はマニアの世界なので、そこはもっと英語マニアになりたい願望が出てきたら取り組んでみたいと思っています。
ではなぜ準1級かというと。日本では「私、英語話せます」と言っても証明する機会も方法も余程特別なケースでない限り、ありません。今までいろいろな仕事やアルバイトの面接を受けてきて一番有効だったのが「英検」や「TOEIC」で。その次が「海外で1年暮らしていた」という事実。でも書類上は前者が圧倒的に有効です。だから、一応私の英語力を表す方法として持っておこうということです。実際、準1級を持っていることが条件で出来る仕事ってあるんです。
以上、私が英検を持っている理由です。英語関連の他の資格も取ってはみましたが、その時の必要に応じて取ったり更新を止めたりしています。資格は入口で、それ以降は経験だということも併せてお伝えしておきましょう。試験を受けて満足、ではなくてむしろその試験結果を証明するべく継続的に力を磨くことが大切なのです。
子どもと英検
ではご質問の多い「子どもと英検」に関して。英語の先生として私が伝えている内容をこちらに記してみます。
私が小学生クラスで英検の話をし始めるのは、大体低学年クラスから上がってきたクラスが全員4-5年生(英語学習歴2-3年)になった頃。もしくは、クラス全体の雰囲気が英語と仲良くなったと判断した時です。このタイミングが私に取ってはかなり大切。早過ぎてただただ「英検万歳!」みたいな伝え方は、一番私がしたくないことです。
英検って何か知ってる?と聞くと、「英語のテスト!」とか「クラスの人が3級持ってる!」とか聞こえてきます。そこで補足説明。その時点でクラスの生徒は英語をある程度話しますので、この試験はその英語力を人にわかりやすく表すものだということを伝えます。でも必ず要るものではなくて、トライするかどうかを自分のタイミングで決めることが一番大切なのだ、と同時に伝えます。それから、早ければ早い程良い訳でもないことも。そもそもこれは人と比べるためのものではなくて、ロールプレイングゲームで言うならば、ちょっと盾のレベルが上がるくらいの装備だということも。子どもたちがそれを今必要と思うか、将来的に持とうと意識するか、それだけでもこの話をする意味はあるかと思います。存在を知らなければ、また間違った情報で知ってしまったら、受けるか受けないかも考えられませんので。
そしてその子たちが現時点で受けられる英検のスケジュールを中学3年生までホワイトボードに書きます。みんながもし今「受けたい」と思ったら次はこの日。で、一番近いところで皆さんの英語力を表すのに役立ちそうなのは、ここ、と中学3年生の10月実施回辺りを指します。だからね、焦ることはないの、と。
週に数回小学校で指導をしていますが、よく生徒が英検時期に「先生、僕今度英検4級受けます!」とか報告してくれる。私の目の前を英検3級のテキストをチラつかせながらウロウロする子もいる。でも私はあまり反応しない。大人が英検に過剰反応すると、子どもたちは「英語の実力」ではなく「なんとかして受かって人にすごいって言われたい」となる。
それでも全然いいんです。良いモチベーションになれば。でも、成果ばかりを見ることで、受かればOK、落ちれば残念、その過程を見なくなる。何度も受け続ける子で本質的な学びに繋がらない子は多いのです。準備をせずにただ受け続ければ受かる、それではせっかくの英検がもったいない。英検の本質は目標達成のための準備期間です。闇雲に「受ければいいんでしょ?」と受動的に受け続けること、また人から「しなさい」と言われて向き合う学びは、あまり質の良い学びとは言えません。わざわざ英検を使って高いお金を払ってそれを定着させる必要はないかと思うのです。
成果だけを求め過ぎると、どんなに英語で上手に表現出来ていても、テストの結果だけでいとも簡単に「自分はダメ」って思い込む。これは偏差値偏重の今の中高の生徒を見ていればわかります。
英語講師としてずっと子どもたちを見てきて、過程より成果を大事にする子の脆さを知ってるから、あまり成果に注目したくない、というのが私の見解です。
英検タイミング
では、タイミングはいつでしょう。私はそのお子さんがそれ相応の実力を身につけた時だと思っています。時々テレビなどで報じられる「5歳で英検2級を取る」子は、「5歳でショパンを奏でる」子と同じ。その分野に特に強いことが多いです。英語の本をずっと読んでいたら英語がペラペラになりました、という小学生やこの塾に行ったら東大に入れました、という人はそれぞれその方法がその子に合っていたということです。英検も同じです。全員が同じ能力を持ち、同じ方法で同じ様にうまくいくものではありません。
英検を闇雲に追う方や子どもたちを見ますが、英検の正しい使い方は「まず英語」。実力がついたら英検の練習をしてみて、そのお子さんの英語力を証明する形で英検がある。それだと思います。
これからの英語
耳が痛い方も多いかと思いますが、最初に述べた「英語力を測るもの」として、正直私は英検はほとんど使えないものだと思っています。大人になって「英検2級持っています、でも全然話せません」と言う方に多く出会います。英検が実際「その人が英語の即戦力になり得る」という証明にはなっていないのです。今後の国際社会では、そういうものはすぐにバレていきます。ですので、やはり本物の英語力。自分の意見や感想を英語に乗せて伝えられる英語マインドは、ただ試験のために英語を覚えたからといって得られるものではありません。(実際大人の方のご指導で一番苦労する部分です)
本物の英語力を持っていてこそ、英検という証明が役立つのです。
とはいえ、私は教室の高学年の背中を押す時に「あなたたちの力なら十分合格圏内。でもね、落ちたら事故だよ。一発勝負に事故はつきもの。でもそれが自分の実力だと思い込まないで。」と言って送り出します。試験や人の評価だけを自分の価値にしてしまわない様に。
受けるタイミングを決めるのは、先生でも親でもなく子どもたち。でもその子のキャラクターやペースを見ながら、適切に背中を押すのもまた自分に出来ることかな、と思っています。
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