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遮光(読書感想文)

 図書館に行きそびれたので、今度は息子の本棚から拝借。以前より #中村文則 氏を勧められ続けていたけれど、怖そうで手が出なかった。

 やっぱり怖かった。それに私の嫌いな描写がたくさんあった。とても不快だった。
 それなのに読むのを止めなかったし、途中で本を閉じて用事をしていても、現実に響く程後味が悪くない。開いている間はとても嫌なものに包まれている様な気持ちなのに、本を閉じるとそれがシュッと本の中に消えていく。不思議な本。私にとっては。

 どうしようもない、受け入れていくしかない現実。その過程で何度も訪れる絶望。それから這い出す様に動く人もいれば、その中に留まる人もいる。いろいろな角度から物事を見た物語が好きだけれど、これは私が普段避け続けているサイド。自分の中にもある側面だし、そこにどっぷり浸かることだって出来る。いろいろな人の中にある、見えない部分に光を当てたお話なのかも知れない。

 だから気持ち悪いって思いながらも、共感出来てしまう。自分が触れたくないところに触れる怖さと向き合うことになったんだと思う。だからソワソワするんだと思う。

 ↓作者の「文庫解説にかえて」がとても好きだった。
これが最高!これしかない!全米が泣いた!とかじゃなくて「こういうのもあるって知っといて」ってそういう感じ、すごく好き。

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心に残った言葉

●受け付けなかった人には、小説というものが平均化されていく現代において、こういう小説もまああるのだと認識してくださればと、作者としては願うしかない。
(作者による"文庫解説にかえて"より)

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