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「会話の時間がもったいない」

 あなたが英語を学んでいるのは、なぜですか。
英検を自分の資格として取りたい。自分の記録として1級にチャレンジしたい、そんな風にコツコツと試験などを取るのも素敵。それも外国語の楽しみ方の一つ。学びにはいろいろな目的や楽しみ方がある。
 いろいろな学びがある中で、私が自分の教室で特化しているのは「会話」です。レッスンの中でも会話を重視するし、それを公言しているので教室に来る人は「会話」目的の人。にも関わらず私が会話を始めると『先生、時間がもったいないです。早く授業しましょう』という生徒がいる。私は断言出来る。

『私が今している会話自体が「授業」です』と。

 「時間がもったいない」「早く授業を」その言葉の意味や発する子の気持ちは、私世代の人(4-50代)ならすぐにわかるだろう。かく言う私にだってわかる。勉強っていうのは、単語の読み方や使い方、公式や文法などの知識を先生に教えてもらってそれをノートに書いたりすることだ、って信じてきたから。そしてそれはある意味正解だから。もし受ける側が「単語の読み方や使い方、公式や文法だけを知識として知りたい。」と思ってその場にいるのであれば、それは大正解。学びの場所選びは、その目的に依る。
でもその子はただ誰かに「おしゃべりは時間の無駄」と言われた通りをなぞってい言っているのかも知れないけれど。

 学校では通常毎時間「めあて」を掲げて授業に取り組むのが主流の様だ。私はその「めあて」が学びの自由を奪う気がするから、こっそり自分の中に留めておくことにしているが。
 その心の中のゴールを目指して、雑談やちょっとした会話もそのゴール達成の一つの手段として授業に入れることが多い。

 大勢の子に同じ時間内で同じだけの知識を入れるという目的の学校と、得た知識で会話の練習をしようという私の小さな英語教室ではもちろん取り組みも方法もまるで違って当然。私はここで会話の中から学ぶ世界を作っている。会話の練習は会話の中でしか出来ない。学校や自宅で入れてきた知識を、ここでは使おうよ。そうだとしたら、会話をしていることは「もったいない時間」なのか。否、これこそが授業の中心であり、あなたたちが得て帰るもの、そのものだ。

 子どもたちにはもっともっと広い視野を持って欲しい。ただの会話から広がる世界を感じて欲しい。英語教室がよく掲げている「視野を広げよう」は、「今すぐ世界に羽ばたこう」という意味ではない。まだ行動範囲も狭く、会う人も話す人も影響を受ける人も限られている日々の中で、同じ教室に集まる子どもや学校の先生ともおうちの方ともまたちょっぴり違う大人の先生との会話を通して、子どもたちが自分の中に新しい風を送り込むことから始まる。「そんな風に考えるんだな」「自分とは違うな」「面白そうだな」そんな気持ちが「感じる学び」。

 「人と話す時間がもったいない」と机にかじりついていると、もちろん視野は広がらないとは私の持論だ。私は英語という言葉を通して、他愛もない会話を楽しみ、この小さな会話の中から広がる世界を学習者の皆さんに見せたいと思っている。正に「感じる」英語。私自身想定していなかったが、それは2020年度の大学入学共通テストの英語の試験に通じるものがあった。

 受験のために机とテキストに向き合うこともその人の時間の使い方だが、受験のもっと先を見据えた時「感じる」学びを得た人は、周りの人たちの知恵や自分の経験を活かしながら自分らしく人生を切り拓いていくことだろう。

 子どもたちのすぐ手に届くところに多くの学びがあることを伝えていきたい。学びの範囲を決められずに、自由に学べることを。

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