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恥をかかなきゃ身につかない(後編)

 私自身は英語講師として「人の背中を押す」ことをモットーとしている。その人が自分で動き出せる様に、私は軽く背中をポンっと。にっこり微笑んで「うん、大丈夫」って。私が幼い頃に通った英語教室の様に、まずは「間違ってもいいんだ」っていう本気の安心感をベースに敷く。子どもであろうが大人であろうが同じ。特に大人の方々は今まで英語に対して苦手意識を持ってきている方が多いので、余計に丁寧に。過去の傷を塗り替える程の安心感のベースを敷く。

 安心して英語と向き合えたら、その次のステップが「恥をかく」ことだと思う。大学卒業後に、この超繊細な私を「とにかく恥をかいてこよう!」と押し出した力は、幼児から安心して英語を楽しめる環境があったからこそ備わったものだと思う。そして盛大に恥をかいた結果、夢にまで見た「英語でコミュニケーション出来る自分」を手に入れたのだ。

 さて、そんな私が更なる「恥」を求めてアラフィフになって通い始めた英会話教室。ここではとにかくブートキャンプ的な指導が欲しかった。もちろん英語漬けの50分。新しい表現が出たらすぐに「(和訳)はい、この表現を使って文章作って。じゃ、あなたから」と当てられる。考える暇もビクビクしている暇もない。とはいえ、同じ目に遭うメンバーはいつも決まっているし、みんなで時には笑いながら苦労しながら言葉を捻り出す。微妙に言葉の使い方が違う時、先生は「(和訳)うーん。。。だとしたらこっちの表現の方がいいよね」と丁寧に訂正してくれる。週に一度の50分、頭がクタクタになる。けれど、それがだんだん心地良い疲れになってきたし、クラスメイトも職種も年齢も全然違うけれど、散々恥をかく姿を見せてきたせいか、リラックスして安心して話せる様になった。恥をかくって、思ったよりも恥ずかしくないし、自分の弱さを見せるって人との垣根を無くすことに繋がるんだな...なんて改めて発見。

 更に調子に乗った私は、オンラインレッスンの体験をしてみた。同レベルの人たちとのグループレッスン。先生はネイティブで容赦なくどんどん質問してくる。あれ、みんな知ってるのに自分だけ知らない単語がある…でもそれを知ったかぶりして話を進めると、きっともっと恥をかく。そこは思い切り「(和訳)その言葉、どういう意味ですか」英語で説明されても、複雑な言葉は本当に自分が使える程理解したかどうかわからないから「(和訳)例文をください」と伝える。例文を聞いてやっと「なるほど」と理解して自分も使ってみる。その繰り返し。
最初こそ「恥ずかしかったな…このレベルにいてもいいのかな…」と思ったけれど、そこで発見したことはテキストで何度見ても覚えない単語も、こうして恥をかきながら聞き直したり食い下がって教えてもらったものは、忘れたくても忘れられないくらいよく覚えている。
 そこからは、知らないと言って恥をかいた言葉は、そのレッスン内かまた次のレッスンで絶対に使うことにした。そして自分のものにする。海外生活でしてきたことを、今英語教室でしているのだ。会話の中、人の言葉から覚えた言葉は忘れない。

 幼い頃の安心感は、今の私に繋がっている。この度英語に加えてスペイン語もこの年で0から学び始めたけど、そこでも盛大に間違っては新しい言葉や表現をどんどん吸収している。

 恥をかくのは嫌だけど、なかなか語学習得出来ないという人に足りないのはその「恥」の前の「安心感」かも知れないな。学びには良い出会いが必要。安心感の中で学べる環境がみんなにありますように、そう願いながら教育に携わる日々だ。


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