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『竹取物語』イントロ04(古典ノベライズ前編)

(先週 ↓ からの続き)
https://note.com/namikitakaaki/n/nd4b41db72d8d?magazine_key=m777fef00ba5a

 うちの育てのおじいちゃんは、それからずーっと竹を取るたび節の間から黄金を見つけ続けた。
 そうしてもう「竹取の翁」なのか「黄金取りの翁」なのかわからないほど儲けてた。
 さらにおカネの集まるトコロには、権力もしっかりくっついてくるみたい。
 うちの育てのおじいちゃんは、この3ヶ月くらいの労働で、いわゆる分限者に成り上がったの。
 で、ある日のお昼。

「髪上げも裳着も終えたし、なにより立派に大きく育った。成人の証に、きちんとした名前をつけようね」

 おじいちゃんはそう言って、地域の年寄りコミュニティの中から秋田さんっていう、ちょとアヤシイ霊媒師的な友達を家に招き入れた。
 秋田さんの髪はボサボサで、平安時代にはまだないけど丑の刻参りとか趣味でやってそうな、病的なグリングリンの目玉をしていた。
 アヤシイ秋田さんは家に入って、正座して、ただの一言もしゃべらない。
 囲炉裏端に正座するわたしの顔(もちろんお客さんが来るってんでバッチリ光り輝くメイク済み!)を病的な目でじーっと見つめる、っていうかほとんど睨(ね)め上げる。
 案外高音の、絞り出すような声でこんな風につぶやいた。

「……なよ竹の、かぐや姫」

 そりゃそうだろうさ。
 高校に通っていた時より遥かにマメに最近では予習している古典の教科書に、わたしは心中で感謝していた。
 まちがいなく、わたしはこの転生先の異世界で「かぐや姫」のポジションなんだ。
 そう思ったら、なんだか楽しくなってきて、にやりと笑みがこぼれていた。
 おじいちゃんも笑っていた。
 新しい名前に満足したおじいちゃんは浮かれてこんなことを叫んだ。

「いまから、宴会じゃあ!」

(明日へ続く)

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