見出し画像

国語の数学【2】 言葉を引き算する

これは、国語を数学的に解き明かしてみる、という思考の実験です。

第1回「対立概念を因数分解する」はこちら

前回同様、数学の用語はざっくりした感じで話で進めます。(用語で間違っているところがあったら、すいません。)

今回は、「言葉の引き算」です。

言葉の引き算という言い回しは、普段からよく使われていますよね。たとえば、企画書が文字だらけになると、「もっと引き算したほうがいい」とか。

普段使われている「言葉の引き算」は、数学的に見ても「引き算」なのか、というのが今日のテーマです。

たとえば、こんな企画書を想定してみます。

なんだか少しごちゃごちゃしていますね。

こんな企画書を書いて上司に出したところ、「言葉をもっと引き算して」と言われた、と仮定して話を進めていきます。

数学的な引き算は、a - b ですから、まず考えられるのが、情報を減らす、ということです。

たとえば、この企画書だと、急に重要文化財の話が出ているので、ここをバッサリ引き算する、というのが考えられるでしょう。

言い回しを減らす、というのも考えられます。「観光での来訪で終わらずに定住をうながしたい」を「観光での来訪から定住へ」と書けば短くなります。

ただし、どうも、日本語として普段使っている「引き算」は、単純な「情報の引き算」「言い回しの引き算」だけではない。

たとえば、下記の二行。なんだか近いことを言っているような気がしますよね。

アクティブな若年層の人口減少
第一次産業の将来の担い手の不足

将来の担い手を若年層、不足を減少、と読み替えれば、

第一次産業をになうアクティブな若年層の減少

と書けば、この2文はまとめられる気がします。

これは引き算ではなく、「最大公約数で束ねて足し算する」と言ったほうが近い気がします。

最大公約数というのは、たとえば、6と21なら、3になります。
6=3×2
21=3×7

最大公約数で束ねて足し算するというのは、
3×2+3×7
=3×(2+7)
という式の変形になります。

先ほどの2文のまとめは、数学的にいえば、

第一次産業の将来の担い手の不足+アクティブな若年層の人口減少

を、最大公約数的な部分である「若年層の減少」で束ねて足し算し、

(第一次産業をになう+アクティブな)×(若年層の減少)

にした、ということです。

もうひとつの方法として、「公倍数で表す」という方法もあります。
※公倍数とは、2つ以上の整数に共通する倍数のこと

「高齢者の増加」も「アクティブな若年層の人口減少」も「第一次産業の将来の担い手の不足」も「観光での来訪で終わらずに定住をうながしたい」も、結局、課題としては、「第一次産業の危機」と見て、これが、この4つで伝えたい「公倍数」的なことなんだと考える方法です。

「引き算しすぎだよ!」という上司の声が聞こえてきそうです。「引き算じゃないんです、公倍数で表したんです」と言い返したくなりますが。

ここまでの思考実験をまとめると、一般的に言われている「言葉の引き算」には、

  1. 情報/言い回しを引き算する

  2. 最大公約数でまとめて束ねて足し算する

  3. 公倍数で表す

の3種類があることがわかります。

「言葉をもっと引き算して」と言われたときに、どうすればいいかわからない「?」な気分になるとしたら、この3種類のうちどれをやるべきかがわからない、ということなのかもしれません。

そんなときは、この3種類のどれをやるのか、そこから考えるのはどうでしょうか?

言葉の謎が、すこしでも減らせますように。

国語の数学、気が向いたら、また書きます。

練習問題:
「言葉足らずだから、言葉を足して」と言われたときの数学的な方法を考えなさい。

第1回「対立概念を因数分解する」はこちら