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20,09,03。プロレスの話④

すっかりプロレス信者となり毎週の放送を欠かさず見るようになった自分にとって、初めて記憶に残る異種格闘技戦が「猪木vsウイリー・ウイリアムス」戦でした。

今回noteに書く為に記録を調べたところ試合が行われたのが1980年ですから、それ以前の異種格闘技戦も見ているはずなのですが記憶には全く残っていません。おそらくルール的な事もあり「これだったら普通の試合のほうが面白いな」とでも感じたのでしょう。

ウイリー・ウイリアムス戦が記憶に残る事になった原因としては当時少年マガジンで連載されていた梶原一騎原作の「四角いジャングル」で試合までの経過がリアルタイムに描かれていた事が大きかったと思います。

マンガの中で描かれるウイリーの姿は正に熊殺しの魔人そのもので実際の試合が近づくにつれ「こんな怪物と相対する猪木はどうなっちゃうんだろう…」と滅茶苦茶ハラハラさせられた事をよく覚えています。

そんな中迎えた試合はTVのモニター越しでもはっきり分かる程の緊張感と怒気に満ちた明らかに通常の試合とは異なるムードの物でした。

今でこそウイリー戦に関してもほとんどの異種格闘技戦同様結果が決められた試合だった事が明らかになっていますが、当時の自分は「あれぇ?」と思う事はあったにせよプロレスはほぼ真剣勝負なのだと信じているプロレス信者でしたから頭は不安と興奮でパンパンです。

何よりリングサイドとセコンドに陣どった極真空手サイドの大山茂氏をはじめとする空手関係者の皆さんの発する怒気が半端ではなく、否応無しに試合が只事ではない事が実感できました。

そんな殺気を孕んだ試合になるのも無理はありません。

梶原一騎氏の主導で行われたこの試合、空手陣営には一部の関係者を除いて試合がエンタメである事が全く知らされていなかった為、会場に詰め掛けた空手関係者の怒気はマジモノだったのです。

そんな尋常ではないムードの中始まった試合は今見ればプロレスである事はすぐに判るものの、猪木とウイリー両氏のセンスもあって果し合いを思わせる緊張感あふれる名勝負となりました。

両者リングアウトからの梶原一騎登場からの延長裁定からの試合再開からの両者負傷痛み分けと言う流れと試合が中断するごとに本気で揉め始める空手&プロレス陣営。ある意味場内とTVの前のファンを置き去りにしかねない展開ではありましたが後々まで語り継がれる名勝負以外の何者でもありませんでした。

自分もTVの前で試合終了後はしばし茫然となる程の興奮を覚え、プロレス信者としてさらなる信仰の高まりを覚えたものです。

この後も猪木の異種格闘技戦は行われ、猪木以外のレスラーによる異種格闘技戦も数多く行われるのですが、この「猪木vsウイリー」戦程の緊張感と興奮を覚える事は無かったように思います。

思えば若きの自分が新日本プロレスの試合に夢中になったのは、この試合を代表とする「エンタメを逸脱しそうな雰囲気」が堪らなかったからなのかもしれません。そしてその嗜好は後に「週刊プロレス」と言う雑誌によってさらに盛り上がっていく事になるのでした。

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