【精神#8】健全な思考を手に入れるための 思考のタブー三原則
大脳新皮質の働きによる思考によって私たちは生き残り、進化を遂げてきました。この発達した思考は発展のエネルギーになる一方で、私たちを縛る足かせになることもあります。
精神コントロールの第一歩である思考は感情や潜在意識に比べてコントロールしやすいのが特徴なので、まずは誰もが陥りやすい思考のタブー三原則を知ってください。
1 短期的思考
これらの考え方に共通しているのは何だかわかりますか?
それは起点が「今」ということです。
疲れているときにもうひと頑張りするのは大変です。
みんなが楽しそうなら自分もお酒を飲みたくなるでしょう。
辛い受験勉強をしなくてもすむのなら今をもっと楽しむこともできるでしょう。
こういう考え方をする人は今自分がしたいこと、求めているものを考えます。
確かに今はそれが楽だったり楽しかったりするだろうし、結果的にあれで良かったんだと思えるかもしれません。
しかし、今を起点に考える人は未来にやってくるかもしれない「まさか」のトラブルに遭いやすくなりますし、いざトラブルに遭遇したときに先手を打つこともできません。
今「あれで良かったんだ」と思えても、後になって「あれは失敗だったなあ」と後悔することもあります。
一方達人は常に今ではなく先を考えています。
など、今だけではなく、長期的なことを考えるのが達人です。
あなたは三年先、五年先、十年先の自分をイメージできていますか?
そんな未来の自分に対して胸を張って正しいと言える考え方ができているでしょうか?
2 枝葉末節的思考
樹木の幹は生い茂った葉に覆われています。
一見生命力旺盛な元気な木に見えても、実は肝心な幹の部分が腐ってスカスカになっているかもしれません。
枝葉末節的な思考の人は生い茂った葉の部分しか見ておらず、大切な幹まで見ようとしないので、往々にして本質を見誤ることになります。
建物でもいくら内装外装がきれいに整えられていても基礎の部分がだめになっていたら倒壊してしまうように、冬に葉を落として初めて木の真実の姿が見えるようでは手遅れになるかもしれません。
では人間における枝葉末節とは何でしょうか?
私たちは多くの「葉」をまとって社会生活を送っています。
学歴であったり、資産であったり、容姿、服装、職業、肩書き……。
これらは社会生活を営む上で他人に表面的に見せるものに過ぎず、あなたの本質ではありません。
しかし、枝葉末節的な思考をする人はその表面だけを見て「あの人はお金持ちだし高学歴だから、このプロジェクトにきっと役に立ってくれる、助けてくれるだろう」と思い込んでしまいます。
でも実際は自分が思ったような人ではなかったとしたら?
勝手に思い込んで勝手に「裏切られた」と恨んでも意味のないことですよね。
また、自分の得意分野を通してしかものを見ることができない人もいます。
たとえばオーディオは奥が深く、スピーカーやアンプなどハイエンドを求めようとすればキリがないのですが、オーディオマニアの中には「低音の鳴りが」とか「高音の響きが」と機械が出す音にばかり一生懸命集中している人もいて、「音聞いて音楽聴かず」と揶揄されたりしています。
さらに、これは経験がある方も少なくないと思うのですが、評判の名医という噂を聞いて診察を受けに行ったのに、パソコン画面に映し出される検査の結果ばかりを見て「あなたはこの病気のこの症状でこういう段階ですから、治療方針は◯◯でいいでしょう」と言う先生がいます。
せっかく対面で受診しているのに全然目が合わないというのはよく聞く話です。患者も一人ひとり違う人間であり、それぞれの人生やポリシー、生き方があるはずです。
確かに専門医は知識も経験も豊富で最大公約数的なベストな解決法を知っているかもしれませんが、目の前にいる一人の患者さんの生命を見ることを忘れているとしたら、それは本当に名医でしょうか?
これが人生の達人になると、他人の身なりや学歴、職業など枝葉末節な部分に惑わされず、まっすぐにその人の本質、幹の部分を見通す力を持っています。
つまりそれだけどんな場面でも正しい判断をしやすくなるということです。
その力は一朝一夕に手に入るものではありませんが、常に物事の本質を見ようと努力をし続けることで本質をつかまえやすくなります。
3 一面的思考
世の中のどんなものにも今自分が見ている面以外の面があります。
あなたが「これは円だ」と思ったものは、横からは三角に見える円錐かもしれません。「そんなことはわかっているよ」と思うかもしれませんが、多くのビジネスがこの一面的思考で失敗しています。
最近個人でも簡単にネットショップの運営が始められるプラットフォームが整ってきたため、ネットビジネスを始める人が増えています。
そんな人たちは、残念ながらほとんどが失敗しています。
しかもすぐに諦めてやめてしまうならともかく、仕入れた商品を保管する倉庫代やサイト構築の費用など、虎の子の貯金を失うだけでなく家の中が引き取り手のないダンボールでいっぱいで寝る場所もないということにもなりかねません。
ある人は自分に子どもが生まれた時に知人からプレゼントされたヨーロッパ製のおもちゃがいたく気に入りました。
おしゃれなだけでなく厳しい安全基準をクリアしていて、今まで見てきたおもちゃとはグレードも段違いです。
もっとこの会社のおもちゃを買ってあげたいと調べたところ、そのおもちゃはまだ日本に代理店もなく、国内で入手するのは困難でした。
あなたならここでどう思いますか?
彼は「まだ誰も知らないなんてすごいビジネスチャンスだ。こんないいものを知ったら、ネット通販をすれば親は必ず子どもに買ってあげたいと思うはず」と自分の情熱のままにその会社に連絡をとり、代理店契約までしてしまいました。
結果はあなたが予想した通りです。
彼の家はダンボールで埋め尽くされ、赤ちゃんはその隙間をハイハイしている状態になりました。
彼の失敗は「世間の人はこの値段でこの商品を欲しがるだろうか」という視点が抜け落ちていて、「こんなにいいものなのだからみんなに売りたい」という自分の視点だけで動いてしまったことです。
昔からあるワンマン社長が「これはいい商品だから売れるぞ」と意気込んだものほど失敗しやすいという教訓は多くの人が知っているにもかかわらず、私たちはともすれば自分の主観一本槍、一面的な思考に陥りがちなのです。
その一方で人生の達人は自分の思いだけではなく、様々な顧客の目線も持ち合わせています。
さらにそれだけではなく、自分がそれをすることによって社会にどんな影響を及ぼすことができるのか、より良い社会を作るために自分はどうしたらいいのかを常に考えて商売をします。
多くの企業が社是にしている『三方良し』=売り手良し・買い手良し・世間良しは、もともとは現代の滋賀県、近江から全国に出向いて商売していた近江商人の心意気であり、プライドを表す言葉です。
日本各地に進出していった近江商人たちは、その土地の人々や社会の役に立つことこそ商売を根付かせて永く続けるために必要なのだと先祖代々叩きこまれていたのでしょう。
今、CSR(企業の社会的責任)やSDGs(持続可能な開発目標)、利他主義の必要性が世界中で叫ばれていますが、まさにこの思想を達人たちはずっと昔から実践していたのです。
現状、多くの人はいまだに二流の思考をしています。
自分も思考コントロールによって一流、達人へとレベルアップできたらいいなと思いませんか?
もしあなたがそう思うのであれば、やり方は簡単です。
思考は人間のみが高度に行うことができる脳の機能であり、高度であるからこそ、自分の意思でコントロールしやすいのです。
しかし、二流には二流の、一流には一流の、達人には達人の思考のクセがあります。
つまり、あなたが達人の思考を身に付けたいと思えば、達人の思考のクセを知り、それを真似していれば、自動運転のように自分で意識してハンドルを切らなくても達人の思考ができるようになります。
と思うかもしれませんが、なれます。
なぜなら人間は繰り返すことで必ずそれが身に付くからです。
「お前は馬鹿だ」「不良だ」「人間のクズだ」と教師から怒られていた不良の生徒が転任してきた熱血教師に励まされ、力づけられて変わるというのは学園ドラマの王道です。
否定し続けられるとその否定が刷り込まれ「自分はだめだ、クズだ」と自己肯定感が低くなります。
これが「思考のレコード化」です。
逆に「優しいね」「算数が得意だね」「思いやりがあるね」と言われ続けると、今度は逆の正の方向の思考のレコード化が起きてきます。
正しく認識し、正の思考のレコード化を行うことは自分自身でできるのです。
それでは、次回からは今すぐに始めることができる達人の思考を身に付けるためのステップを始めていきましょう。
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