ついに上場「ワンキャリア」!決算から読み解くONE CAREERの戦略。HRのIR
元リクのなまリクです。HR領域のIRについて書いています。今回はついに上場が発表されたワンキャリア社のIR分析です。
※この回は、ワンキャリア社の上場に伴う有価証券届出書をもとに解説しています。
新卒HR領域の「ワンキャリア」がついに上場!
ワンキャリア社。新卒採用支援メディア「ONE CAREER」を中心に新卒向け説明会配信サービス「ONE CAREER LIVE」を展開しています。最近では中途事業にも参入し中途採用支援 メディア「ONE CAREER PLUS」をロンチして話題になりました。そのワンキャリア社が新規IPOと上場のニュースが飛び込んできました!おめでとうございます!
さて上場予定日は2021年10月7日。これに伴い過去6期分の業績が開示されましたので早速見ていきましょう!
直近の2020年12月期は売上高13億。コロナ禍にも関わらずYoY+40%としっかり伸ばしています。また2021年に関しては第2四半期までの売上が公開されています、進捗を勘案するとおそらくCAGR+40%を維持し18億程度の着地になるのではないでしょうか。一方利益ですが、営業利益は開示されていませんが利益率は高いとは言えない業績推移です。
ワンキャリア社 有価証券届出書より。なまリク作成
事業セグメント分析
さて有価証券報告書にて公開された事業セグメントからワンキャリアを分解してみましょう。
まず。有価証券報告書には以下のような記載があります。
「キャリアデータプラットフォーム」事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載はしておりませんが、主たるサービスの特徴を分類すると、(1)採用DX支援サービス、(2)その他のサービスになります。
ですので、ここからは「主たるサービス別」に読み解いていきます。
(1)採用DX支援サービス
この主たるサービスは「求人メディア」と「採用ソリューション」にわけることができます。
■求人メディア「ONE CAREER」
新卒採用支援メディア「ONE CAREER」と採用説明会を動画で配信するサービス 「ONE CAREER LIVE」にわけることができます。ワンキャリア社の一丁目一番地に事業です。
新卒採用支援メディア「ONE CAREER」は、わかりやすくいうとリクナビ・マイナビと同じく求人メディア。ワンキャリアクラウドシリーズの求人掲載機能という記載がありますので、主従としては「ワンキャリアクラウド」>「ONE CAREER」なのかもしれません。昨今のHRテック市場では、事業者側が「求人メディアはATS機能の一部」という言い方をする傾向がありその流れを汲んでいます。
また、動画で配信サービス 「ONE CAREER LIVE」は、採用説明会を1社単独でライブ配信する「ONE CAREER LIVE」、合同企業説明会をライ ブ配信する「ONE CAREER SUPER LIVE」 にわけることができます。 1社単独でライブ配信というのは、個人的には視聴品質も高くワンキャリアのユニークネスのひとつと感じています。
さて、ここで「ONE CAREER」の求職者DBとしての実力値ですが絶好調といえるでしょう。「新卒採用領域における会員獲得率」 を見ると22卒の対象学生をターゲットにしたシェアを見ると50%を超えています。実に就活をしている学生の1/2が「ONE CAREER」を活用していることになります。2強のリクナビ・マイナビにはまだ及びませんが、第3位の地固めは確実といえるでしょう。
「新卒採用領域における会員獲得率」
ワンキャリア社 有価証券届出書より
一方、法人取引累計社数は782社。単年では約500社です。これは求職者DBのサイズに比べて非常に顧客基盤が小さい印象です。一般的にリクナビ・マイナビは1万社以上、新興のオファーボックスも8,000社の顧客を保有しています。「ONE CAREER」の顧客は大手や外資、ベンチャーに偏っていると思いますが、SMB含め顧客開拓が今後要求されるでしょう。
「法人取引累計社数の推移」
ワンキャリア社 有価証券届出書より
■採用ソリューション
「ワンキャリアクラウド」の採用計画機能です。採用活動計画を立案する際に必要なマーケティングデータの提供を行っています。いわゆるHRテックプロダクトですが、今後は機能の拡張により一部有償化することを予定していることのことですが、現時点は無償。マネタイズができているわけではありません。
(2)その他のサービス
この主たるサービスは「マーケティングアライアンス」と「中途採用事業」にわけることができます。
■マーケティングアライアンス
これは成果報酬で同業への送客をおこなう、いわゆる「アフィリエイト」です。目視で確認する限り、「リクナビ」と「キャリタス」が参画しており、主要取引先として公開されているリクルートへの販売シェアが12%なので、全体の2割弱ほどの事業と想定されます。2020年12月期でおそらく2億ほどと推計。
■中途採用事業
6月にロンチして話題になった、中途採用支援 メディア「ONE CAREER PLUS」です。ただしマネタイズはこれから、事業拡大と目指すとのこと。
ワンキャリアに成長は期待できるのか?
ここまで有価証券報告書を見てきましたが、ワンキャリアの事業の外観がつかめてきましたね。その上でワンキャリアに今後の成長は期待できるのでしょうか?ここでは個人的に見えてきた4つの課題を上げておきます。
■「ONE CAREER」は求人メディアと相互提携。結局ビジネスモデルの新規性はない。
「ONE CAREER」の根幹となる「キャリアデータプラットフォーム」。これがリクナビ・マイナビを中心とした既存求人メディアと異なることを主張しています。ただし採用のミスマッチを防ぎそのマッチングをマネタイズをするというビジネスモデルは特に新規性はなく、現時点では「ONE CAREER」ならではの求職者DBのユニークネスを活かしきれてはいないように見えます。
「事業系統図」ワンキャリア社 有価証券届出書より
■横たわる取引社数・営業力の課題。
先に触れましたが、求職者DBのサイズに比べて顧客数が少ないワンキャリア社。「ONE CAREER」の顧客は大手や外資、ベンチャーに偏っていると思いますが、SMB含め顧客開拓が今後要求されるでしょう。今回のIPOは11億円の調達になりますが、使途のひとつに営業人員を拡大し大規模な営業網を構築するための採用広告に力をいれる予定です。進捗を期待しましょう。
■HR Techプロダクトの戦略が見えない。
「キャリアデータプラットフォーム」をユニークネスとしていますが、ワンキャリアクラウドに代表されるHR Techプロダクトの戦略に言及がありません。ユニークなキャリアデータをどうマネタイズするのか?また、求職者データのマネタイズには、リクナビDMP問題に代表されるプライバシーの問題が横たわるので難易度は高いでしょう。
■中途事業は伸びるか?
中途採用支援 メディア「ONE CAREER PLUS」をロンチして話題になりました。一方で、マネタイズ含めた中途事業の具体性、新卒領域とのシナジーは見えていません。
新卒領域の既存勢力図を変える勢いがあるワンキャリアですが、はたしてIPO後に上記の課題をどのように解決するのでしょうか?市場や投資家の期待に答えられるのでしょうか?今後の決算発表が楽しみです。
今回の記事はお楽しみいただけましたでしょうか。また次回の記事でお会いしましょう。なまリクでした🐶🐶🐶
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