【ショートショート】花嫁は奪われる

結婚式で花嫁を奪った。
俺と彼女は隠れて、一年付き合っていた。
彼女が結婚を嫌がっていることは知っていたので、勢いよく乗り込んで行った。
彼女は驚いた様子だったが、涙を流し着いてきてくれた。

あれから一年、俺達は結婚する。
荘厳な音楽の下、誓いのキスをしようとすると式場のドアが開いた。
見れば、俺が花嫁を奪った相手がそこにいた。
どういうつもりだと詰め寄ると、男は冷静な口調で言った。
「邪魔するつもりはないんだ。ただ、ちょっと確かめたいことがあってね。大人しくそこに座っているから、見届けさせてくれないか」

不可解ながらも許可を出し、式に戻る。
再度、キスをしようとすると、「ちょっと待った!」という声と共にバァンと式場のドアが開いた。
そこには鼻息を荒くした若い男が立っていた。
男は、勢いよく会場に乱入すると、彼女の手を取って去っていった。

残された会場で、俺は楽しそうに笑う男の胸ぐらを掴んだ。
「お前が何か吹き込んだのか」
すると、男は冷静に手を払った。
「僕が仕組んだわけじゃない。僕も2年前、結婚式で彼女を連れ出したんだ。彼女は僕についてきてくれたんだが、その時、言っていたんだ。この瞬間が1番幸せだって」

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