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【エッセイ】今日も本を読んだ

 色々と考えすぎてしまう性格のせいか、物心ついた頃から、憂鬱な気分で日常を送ることが多い。身近な問題は勿論、遠い国で起こった悲劇にも、心が酷く痛み、思考が止まらなくなる。何もかもが嫌になり、自分の感覚器官を遮断しようとして、引きこもりがちになることもある。

 そんな時、私を救ってくれるのは「本」である。
本という別世界に逃避することで心の平穏を保つことが出来るし、その本が心打たれるものであれば、現実世界にも「希望」を見出せるからだ。

「希望」。漠然としている言葉だが、私にとってそれはつまり、「世界の一部を、信じることや肯定することが出来る状態」にあると私は思っている。
そして、そういった意味は、類義語でもある「期待」や「夢」には無いと思う。何故なら、それらは現在ではなく、未来に思いを馳せる状態にあるから。結果で左右されるため、裏切られ、憂鬱や絶望といった感情に変わりやすいから。
だけど、希望は「達成したい」という欲求を含んでいない。希望は「現在」にある。
「世界は最悪だと思っていたけれど、こんなに素晴らしい作品に出会えた」
 と、世界を少しでも肯定できたとき。それが心を癒し、憂鬱な今日を、明日を生きる糧になっていた。希望は、遠い未来にはなく、いつも側で寄り添ってくれていた。
 今日も苦しかった。引き出しの奥に詰め込んだはずの辛い記憶が次々と迫ってくるような感覚があった。縋るように、中村文則の「何もかも憂鬱な夜に」を読んでいたら、こんな文章が目に留まった。
「自分の判断で物語をくくるのではなく、自分の了見を、物語を使って広げる努力をした方がいい。そうでないと、お前の枠が広がらない」
なんだか、凝り固まった心を解きほぐされたような気持ちになった。

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