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【エッセイ】夢想執着記録

 先日、十勝毎日新聞社公募の短編小説「第五十七回郷土作家アンソロジー」に応募し、入選することが出来た。私が郷土作家アンソロジーに応募したのは今回が二回目。前回は佳作だったので、これが初めての入選であり、今年の四月ごろには、十勝毎日新聞に掲載だという。嬉しい!
 そこで、すっかり調子に乗った私は三作目の応募に向けて、日々思考を深めたり、良い案が浮かんだらその都度メモ帳に書くようにしたりしている。
前回は締め切りの二週間半前くらいに書いたのだが、今回は約二か月前の今から意気込んでいる。
その中で最近気づいたことは、頭で考えているときほど私の場合、全くと言っていいほど、アイディアが浮かんでこないということだ。寧ろ、無意識に近い状態である時にふと浮かんできやすい。例えばお風呂でぼおっとしている時、誰かのつまらない話に適当に相槌を打っている時、寝ている時などである。特に寝ている時が一番多いかもしれない。夢の中で核心をつくような一言を自分が喋っている時がある。これは、自分が決して「天才です」と言っているわけでも、過剰な自意識の「厨二病」に陥っているわけでも無い。
小説とは「書かれた言葉の全体以上の世界を想像することができる」文学だと思っているので、それを書くためには、必然的に自分を無意識化に置き、自然な成り行きで思いを湧かせる時間が私の場合、大事なのだと思う。
 ただ、困っていることがある。夢の中で閃いたアイディアはすぐに忘れやすい。起きたときには大抵「あれ、なんだっけ」と覚えていないことも多く、悔しい思いをする。それが嫌なので二作目を書いていた時は、途中から枕の横にメモ帳と紙を忍ばせ、夢の中で自分が何か良いことを言ったものならすぐに起き、メモを取るように心掛けていた。すると、五十パーセントくらいはアイディアを得ることに成功した。だが、残りの五十パーセントは起きてからメモを開くまでの時間の長さで忘れてしまったり、どうしても睡魔に負けて起きられなかったり、起きても後から読めないほどグチャグチャにメモを残してしまったり、上手くいかなかった。
三作目を書く今回こそは、絶対に悔しい思いをしたくない! 悩みに悩んだ結果、最近は枕元にメモ帳の代わりに、スマートフォンを置いている。もし夢の中でアイディアが閃いたとき、スマートフォンのボイスレコーダーの機能を使い、自分の声を録音することにしたのだ。そうすることで、起きてからアイディアを残すまでの時間差も減るし、メモに書くよりも話す方が体力的にも楽で行動に起こそうという気力が湧いてくるのではないかと思ったからだ。この作戦は成功した。メモを取る作戦の時は約五十パーセントの成功率だったのが、音声録音では、約七十五パーセントくらいまでに上がった。
ただ、やっぱり残りの二十五%は失敗に終わっている。音声録音により、以前より起きることへのハードルが下がったとはいえ睡魔に負けてしまう時もあったし、無理に録音しても、自分が何を喋っているのか聞き取れないくらい寝ぼけている時もあった。辛うじて聞き取れたとしても、何のアイディアだったのか全く謎なものもあった。「すき焼きはタレが命だ。具よりタレだ」「吉田美和の…懐に…入る!」とか言っている音声も残っていた。ちなみに、二つとも、実際には全く思ったことが無い。
一体どうしたら、夢の中のアイディアを限りなく百パーセント、記録に残せるのだろうか。誰か、良い案があれば是非、教えていただきたい。

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