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賞味期限が更新されていく

オートミールでホットシリアルを作って食べるのが毎朝のルーティーン。
今日も冷蔵庫から牛乳を取り出す。

古いものから先に使わないとな。
賞味期限は……
そう思ってパックの印字を見て手が止まった。

6月12日。
私と夫が結ばれた日だ。




当時私はまだ大学生。
サークルの活動準備のために友人宅に泊まりに来ていた。
そのころはまだ夫とは交際がスタートする前で、お互いの気持ちに気づいてはいるものの、ラインでやり取りしたりたまに二人で出掛けてみたりする関係だった。

友人と打ち合わせをしながら、休憩時間にスマホをチェックし、夫に返信を返す。
内容は本当に他愛もない。

「会議眠いからモンスター飲んでる」
「モンスターってなんだっけ?」
「(画像付きで)これだよ〜、でもまだ眠い」
「身体動かせば目醒めるよ」
とか、そんな感じ。
付き合う前の男女のやり取りって、本当に中身がないよね。笑

スマホを見ながら私がにやついているのがバレたのかもしれない。
「まだ付き合ってないの?」
と友人に聞かれた。

夫の気持ちに気づいてからは3ヶ月、私も夫に好意を持つようになってから2ヶ月が経っていた。
既に夫は私のことを1年以上も想い続けてくれているが、その間私には他の人と恋に落ちたりもしたし、いつまでも夫が私を好きでいてくれる保証はどこにもなかった。

「ちょっと仕掛けちゃおうよ」

友人の一言で、恋の駆け引きがスタートした。
と言っても、だいぶ露骨なんだけど。


「ねぇねぇ、私のことどう思ってる?」
「? どういうこと?」
「どんな気持ちでこうやっていつもラインくれたりしてるのかなって」
「楽しいからかな」
「まだ私のこと好きなの?」
「うん、変わらず好きだよ」


このやりとりの後、夫から電話がかかってきて、友人のいる目の前で告白された。
(電話越しだけど)
次の日から、私は夫の彼女になった。




夫と一緒にいるようになって今年で9年。
遠距離恋愛、別れの危機、海外旅行、婚約、新婚生活、不妊治療、そして子育て。
人生という長い物差しで測ると、この9年間はとても短いものかもしれない。
でも私の人生を語る上で、この9年間はなくてはならない、1番の濃度を持った時間だ。

たまたま目に入った賞味期限。
この牛乳は6月12日で味が落ちてしまう。
でも私たち夫婦の味は、毎年、いや毎日更新されていく。


そんなことを思い至ったからなのか、今日のシリアルはいつもより少し甘く感じた。

久しぶりに夫との昔のラインを振り返る機会をくれた牛乳さん、ありがとう。
期限までに美味しくいただくね。

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