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雷の夜、弱っちぃ私がほんの少し強い母になれたような気がした

今日は雷のすごい夜だった。
私の住んでいる街も、2時間くらいビカビカと稲光が走り、数秒後には空を破るような轟音が後に続いていた。

ちょうどその時間は我が家は寝る前のフルーツタイムで、今日は季節外れのりんごを味わっていた。
最近バナナ続きで、冬の果物が恋しくなったらしく、昨日あたりから息子の中でブームが来ているらしい。
苦手な皮剥きをピーラーで回避し、薄くスライスしたりんごを、夫と息子がしゃりんとかじるのを眺めながら、溢れかえったシンクの片付けに取り組んでいたときだった。

「ゴーーーーーーン!!!!!!!」

全員の動きが一瞬にして止まる。
特に息子、 さっきまではたらくくるまの音楽に合わせてノリノリで踊っていたのに、赤信号を察知して急停止した。
そしてその2秒後、ふわぁ……と糸がほどけたように泣き声をあげ始めた。

「何やこの生き物かわえぇ〜〜〜😭✨✨✨」

正直母の内心はこうなのだが、ニヤける顔を必死で整えつつ息子の元へ向かう。
やっぱかわいすぎて無理……!!

「大丈夫?怖かったねぇ」
「……こわい」

いつもの1/3くらいに縮こまったか細い声に胸キュン。

「大丈夫よ、お父さんとお母さんいるから。ぎゅーしておこうね」
「うん……」

身長91cm、体重13kgの重みとあたたかさを、腕と胸で感じつつ、ちょうど鼻の下をぐるぐる息子のアホ毛によるむずかゆさと格闘。
息子は私の首に短くて細い腕を回してしがみついて静かにしている。
再び胸キュン。

しばらくして。
「ちょっと大丈夫になった?」
「……ドーーーン!!!(雷のマネ)」
「ね!すごかったねぇ!」

すご、気象現象のマネなんてできるのか。
私今まで雷の音を「ドーン」で表現なんかしたことなかったのに、自分なりのオノマトペで表現してる。
すごい、その成長に三たび胸キュン(しすぎ)。


雷の強い夜は、なかなか過ぎてくれない。
夫はにわか雨だと言っていたけど、今日の雨雲は私たちの街が気に入ってしまったようだ。

「今日は抱っこで寝ようか?」
「……ウン(とんでもなく小声、萌え)」

くっついて離れなくなってしまったかわいさの塊をそのまま抱き、布団に腰掛けて子守唄を口ずさむ。
私は母コアラ、この子は子コアラなのだ。


障子を突き破って来る光が、度々視神経を刺激する。
私が障子の方を向いているので、息子には見えていないはず。
チカチカする光の刺激を感じながら、考えごとをしていた。

私なんて、強くないのになぁ。
私だって雷怖いし、虫なんか息子より苦手なのたくさんいるし、すぐメンタルやわやわになってヘコむのに、この子は私を拠り所にしているんだろうか。

隙を見て身体を倒すと、息子がまっすぐ私の上に乗っかってきた。
縦に寝る私に対して、体の部位一つはみ出すことなく縦に乗っかる息子。
なかなかにシュール、でも萌える。
体勢を落ち着かせて、また考えごとの続きにふける。

私が小さいころ、母はものすごくたくましく見えた。
ちょっとのことでは動じないし、芯の通った強い女性だった。

私が悪意なく近所の車の塵を手で擦って傷つけてしまい、トラブルになったときも。
全速力で自転車を漕いでいたら走行車に突っ込んでしまい、ぐちゃぐちゃの自転車を押してなんとか家に戻ってきたときも。
反抗期に携帯を買ってもらえないことへの腹いせで、ドアを力強くバンバン閉めたり、少し派手な友達と仲良くするようになったときも。
(もし私が私の母なら、絶対早々に音をあげてる……)

だから母には敵わないし、結局悲しいときやつらいとき、怖いとき、不安なときは母のところに行った。
母に抱き寄せてもらったら、勝手に何でもうまくいくような気がしたし、ゲームの回復アイテムみたいに心がチャージされていくような感じがしてた。


「……あれ?」

普段寝かしつけに1時間くらいかかる息子が、今日は15分くらいで寝息を立てている。
外はまだ雷様の支配下なのに。

母のたぬきっ腹の上で、息子も勝手に回復アイテムを見つけていたらしい。
こんな弱っちぃ私も、息子にはたくましい人だと思ってもらえていたらいいな。

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