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【前編】りんごとのこれから〜新規就農して考えた「青森りんご」のアイデンティティのこと

みなさんこんにちは。永井温子と言います。青森県弘前市でりんご畑を運営しています。今日は私が畑にいないので、スタッフの皆さんは、まったりめに仕事をしているんじゃないかと思います。ちなみに私が畑にいるときは、休憩を切り上げようとしているスタッフさんに対し、「え、もう休憩おわりですか?」と言うなど、余計にまったりになるので仕事が進まないような状況だったりします。

ということで、本日は「りんごとのこれから」と題し、私が抱えている悩みをみなさんへお伝えし、みなさんに答えを出していただこうという大変他力本願な企画です。どうぞよろしくお願いします。

まず最初に、「もしかしたら、りんご農家はいなくなるかもしれない」と書かせていただきました。先にお伝えさせていただくと、今回は、「りんご農家の数が減ることで、りんごの産業が縮小して青森県がやばいんじゃないか」というお話しを、いっさいするつもりはございません。
地域おこし協力隊として着任してすぐはそんなふうに勝手に課題として捉えていましたが、調べれば調べるほど実態との乖離を感じました。ここで詳しくお話しする予定はないのですが、数としての農家の減少という事実に対する考え方は、ネガティブではないということだけお伝えしておきます。

では自己紹介をさせていただきます。改めまして永井温子と言います。2019年に弘前市の地域おこし協力隊として着任しました。着任後2年目には40aのりんご畑を借りて運営をはじめ、その次の年は何をおもったか2,1haの畑を購入し、合計2,5haの畑を運営しています。作付けしているのは、全てりんごです。

最初にお話ししたこちらが、りんご農家をやってみて感じたことです。なぜこの考えに至ったのか。私はこの講演会のお話しをいただいた時に、まず改めて「りんご農家」がどんな人間なのかを整理する必要があると思いまして、新規就農者が必ずたどり着く青森県のHPへアクセスしてみました。するとそこには、青森県が掲げる5つのチェック項目がありました。そしてこの5つを見て、私は大変暗い気持ちになったのです。

畑を借りようと思ったのは思いつきだし、農業の技術は持っていない。今でこそスタッフさんたちが畑で頑張ってくれていますが、当時はひとり。県外出身で地元の友人も少ないし、自己資金もない。私はりんご農家に全くむいていないようです。

でも、ここでくじけてはいられません。もう少し調べてみました。そうすると、「新規就農 適正・知識・準備チェックシート」というものを発見しました。そちらをプリントアウトし、赤ペンでチェックを入れてゆきました。すると、また暗い気持ちになってしまいました。

なぜなら、畑の運営を始めている今ですら4分の1ほどしかチェックできなかったからです。
でもやっぱりくじけてはいられません。この2つの資料から読み取れる「りんご農家像」をまとめて、自分自身がイメージしやすい形にしよう。そう考えました。
すると、この8つの特徴があるのではないかという仮説に至ります。

ここで、察しの良い方はお気づきかもしれませんが、また暗い気持ちになってしまいました。なぜなら、私自身を含め、うちの会社にはこのような素晴らしいりんご農家はいないからです。私自身、りんご農家としてかなりポンコツです。高いところには手が届かない、りんご箱は4段までしか詰めない、知識もない、花粉症で剪定時期や今の時期の草刈りなどがしんどいというひどい状況です。なんなら、運転免許証はAT限定です。

しかしながら、暗い気持ちになってばかりではいられません。なぜなら3つの畑を承継し、個人と会社を合わせて2,5haのりんごを育てなければならないからです。
最初にお話ししたような素晴らしいりんご農家は、私を含め、うちにはいません。それでも継続して運営していくために、今回は大事にしていることを3点まとめました。

①防除はちゃんとやる、②摘果は1回でよし、③改植を前提に進める。この低いハードルをまずは自分達に課し、週4日のペースで畑作業をするようにしています。

「りんご農家はいなくなるかもしれない。」と最初にお話ししましたが、少なくともうちの会社には8つの基準を満たした素晴らしいりんご農家はおりません。人口減少が進む中、うちのような会社のほうが増えていくのかなぁと感じた次第です。とはいえ、こんな内容で経営が成り立つのか、と思う方もいらっしゃると思いますし、私も毎日不安な気持ちを抱えながら経営をしています。


これは、2022年6月24日(金)に依頼を受けた、一般社団法人青森県農業経営研究協会、第42回通常総会『記念講演会』の講演内容をリライトして掲載したものです。
中編、後編と続きます。

中編はこちら。

後編はこちら。


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