見出し画像

【中編①】開拓して、出会い、ともに耕される

さて、教頭先生の言葉のおかげで弘前大学へ入学することができた私ですが、当時、全く誇らしい気持ちになることができませんでした。私の中にある、進学校出身のプライドみたいなものが急に顔を出すことがありました。そんなモヤモヤを抱えて3ヶ月ほど立った後、私は「スティールパン」と出会います。友人の付き添いでたまたま部活見学に行った私は、演奏をひと目見て、入部をすぐに決めてしまいました。小中高はバスケ部で、その間ハンドボールや駅伝部などにも兼部するくらいスポーツ大好きな私は、なぜか音楽に手を出してしまいます。空きコマの時間はほとんどスティールパンの練習をして過ごしていました。

なぜその時やろうと思ったのか、今でも分かりませんが、本当にいい選択だったと思っています。自分のことを知っている人がほとんどいない環境で、「自分らしいこと」をし続ける必要はないと、無意識で思っていたのかもしれません。五線譜を数えながら、一音一音確認しながら練習することから始めました。尊敬する先輩のようになりたくて、“正しく弾く”よりも“楽しそうに弾く”を意識しました。正しく弾くことは、吹奏楽などの経験者には敵いません。ひたすらに“楽しそうに弾く”練習を積み上げました。
その積み重ねは、のちに「新しいことを始めるのって楽しいものなんだな。」という発見に繋がりました。そして、何かを始める時のハードルを飛び越える術を、体に刻み込む経験になったような気がしています。
ここでは大きくはしょりますが、大学で東日本大震災を経験したり、フランスへ留学したり、地域活動を色々とやっていくことで、私には「いつか自分の会社を東北で作ってみたいなぁ。ジャンルはわからないけど。」という、ちょっとした、ぼんやりとした目標みたいなものが思い浮かぶようになりました。
そんな私は、就活の軸を「東北以外のある程度地方」「情報発信に関係すること」の2つに決めました。2社にだけエントリーシートを出し、1社内定をもらったタイミングでなんだか面倒くさくなり、就活を終了しました。

「大学生のうちにやっておいた方がいいことはなんですか。」という質問について、答えの1つをお伝えしたいと思います。私は、みなさんの先輩である弘前大学の大学院に通う友人2名に同じ質問をしてみました。
一人は、「気になったことに色々と手を出せばいいんじゃない?」と言いました。もう一人は「自分の好きなものを好きって言えるようになっておく。」と言いました。
とても面白い意見だと思いました。私は大学のうちに、スティールパンをはじめ、やってみたいなと思ったものへそこそこ手を出していたように思えます。そして、特にスティールパンに関しては、誰がなんと言おうと「大好きだ」と言えるものになり、しんどい時などに自分の心を支えてくれる存在になりました。

そしてもう1つ思い浮かんだものとして、「別に好きでも嫌いでもないけど、特段努力をしなくても、人よりもなぜかうまく出来てしまうもの。」が見つかればなお良い、というよりラッキーなのではないかと思いました。私はそんなもののひとつに気づいたのは社会人になってからでした。そういったものは、なかなか自分で気づいて言語化することが難しいような気がします。もしそれがなんなのかを知りたいと思ったら、近しい人たちへ聞いてみるのもいいかもしれません。

自分にとって大好きなもののひとつを見つけることができた弘前での生活を後にし、首都圏でフリーペーパーを作っている会社へ新卒で入社します。今では信じられませんが、入社してすぐに合宿があり、駅前で大きな声で歌ったり、身元を明かさずに1000円稼いだりするという無茶なミッションをこなしました。振り返ると、よく我慢したなと思います。
その会社は、自分の軸としていた「情報発信」を行う会社でしたが、基本的にはその会社の武器がフリーペーパーの紙媒体のみでした。メディアには、テレビもあれば、新聞もあり、雑誌やWebメディアもたくさんあります。もっといろんなメディアを扱いたいと考え、入社2年目の終わりごろから転職活動を実施します。

転職活動では、これまた面倒臭くなった私は、「広告業界」の中でランキングが一番高いところから受けるというテキトーぶりを発揮します。ちょうど人の入れ替わりがあるタイミングだったこともあり、総合代理店の営業職で採用されました。それから、地域おこし協力隊として弘前へ戻ってくる2019年まで、2年ほど働きました。当時大変お世話になっていた上司に、「お前、パワポで資料作るのうまいな。」と言われます。これが、私の特段努力をしなくても、人よりも少しうまく出来てしまうものでした。これは、今でも大変役に立っています。

さて、サラリーマン時代のことを振り返ってみました。自分としては、大学の頃のことを振り返るよりもはるかにつまらなく感じていることに気が付いてしまいました。個人的には、大学の頃や地域おこし協力隊として弘前に戻ってきた後のことのほうが面白いと思っているのですが、そこの差はどこにあるのでしょうか。弘前に戻ってきた時のことを振り返りながら、お話したいと思います。


この記事は、2022年11月10日(木)に依頼を受けた、弘前大学人文社会科学部、キャリア形成の基礎、働く人を知る②講演内容をリライトして掲載したものです。
中編②へ続きます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?