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連載小説 魂の織りなす旅路#24/差異⑸

光たちからのメッセージ小説。魂とは?時間とは?自分とは?人生におけるタイミングや波、脳と魂の差異。月曜日と金曜日に更新。

【差異⑸】

 「難しいっていうのはね、私には何が現実的で、何が現実的じゃないのかがよくわからないからなの。私にとっての未来って、どんな未来も現実的ではないんだよね。」

 「どんな未来も?」

 「うん。現実的ってなんか漠然とした言葉だよね。だって、これから先何が起こるかなんて、誰にもわからないんだもの。お金の価値、社会の常識、自然環境、科学技術、自分を取り巻いているあらゆるものは、その時々に応じて変わっていくものだよね。
 うまく言えないけれど、その時々に応じて変化していく将来を、今このときの現実に即して考えるというのは、私にはね、まだわからない未来を、無理やり現在にはめ込もうとしているようにしか見えないんだよね。果たして、そういう思考の今現在を現実と言えるのかなって。」

 「それって、まだわからないまだ来ていない未来で、今を生きようとしているってことかな。」

 「そうそう! そういうこと。」

 「陶芸をやりたいと思ったのは今を生きる私。躊躇したのは、未来を現在にはめ込もうとした私ってことだね。だけど、経済的なことを考えるとなぁ。いつまでも親に頼っているわけにはいかないし、安定した職業を選ぶ方がいいだろうって思っちゃうんだよねー。」

 「でも、その職業が将来もずっと安定しているとは限らないんじゃない? 人員削減とかね。会社を辞めざるを得ないことなんて、いくらでもある気がするなぁ。今の世の中、未来の視点で人生を選択して、悶々とした気持ちで生きている人が多い気がするよ。なんか違う、本当の自分がわからないって。
 それに、変化のない人生なんてあり得ないと思わない? 年だって取るし、自分を取り巻く人間関係だって変化するし、変化に応じて安定が揺らぐことなんて普通にたくさんあるよね。
 それなら、変化を否定して生きるより、変化という波に乗りながら生きる方が、私は気持ちが楽になる気がするんだけどなぁ。」

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